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第5章:ファレス武闘祭
カーニヴァル
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その少年は突如舞台の中央に現れた。漆黒の衣に赤い髪。浅黒い肌は禍々しさすら感じられる。何よりも目を引いたのは彼の琥珀色の瞳だ。爛々と光るその獰猛な獣の瞳は見るもの全てを魅了し、同時に恐怖を覚えさせる。
ジンにとって、いや人類にとっての災厄の存在。龍の魔人にしてその頂点に君臨する存在。龍魔王。
レヴィは周囲を見渡し、全てを嘲るように笑った。
~~~~~~~~~~~~
「なんだあいつ、一体どこから現れたんだ?」
観客の一人が呟く。その声につられてか、徐々に彼らの疑問の声は大きくなっていく。
「お、おいどうしたんだよジ…」
ルースが隣を見ると、そこには今までに見たことのない顔を浮かべたジンが立っていた。声をかけることすら躊躇われるほど、鬼気迫るその瞳は全て謎の闖入者に向けられている。瞬間、ジンが観客席を蹴って宙に飛んだ。
「レェエエエエエヴィイイイイイイイイ!!!!」
一体どう叫べばこれほどの声が出せるのだろうかと思うほどの吠え声が、会場内に轟き渡る。ジンは空中で短剣を鞘から引き抜くと、そのまま舞台に立つ少年に斬りかかった。
ジンのその行動に誰も反応できなかった。それは舞台に立っていたシオンも同様だ。ただただ速すぎて誰も視認できなかったのだ。瞬く間にレヴィと呼ばれた少年に接近したジンには、シオンの姿は一切見えていないようだった。
「あはは、久しぶりだねジンくん」
嗤いながらレヴィは迫り来る短剣の刃先をつまんだ。それを見越していたかのように、ジンは即座に空中で体を回転させて相手の首を目掛けて蹴りを放った。ドゴッという音から推察されるその蹴りの威力は先ほどの試合で見せていたものとはまるで違う。完全に相手を殺すための蹴りだ。
だがそれもまるで効いた様子がない。そんなことは知っているとばかりにジンは必死になって攻撃を叩き込み続けた。しかし相手はその場から一歩も動くことすらない。残像すら残る攻撃はその一撃一撃が必殺であることは誰の目から見ても明らかであった。
「あはは、少しは落ち着こうよジンくん」
その言葉がシオンの耳に入った瞬間、ジンは舞台から弾き飛ばされ、100メートル以上先の壁に叩きつけられていた。
「がはっ!」
肺にたまっていた空気を一気に吐き出したジンはそのまま動かなくなった。そんな彼を一瞥もせずに、レヴィは観客たちに顔をむけて手を広げた。
「皆さん、楽しい時間をお邪魔して申し訳ありません!」
まるで舞台役者か何かのようだとシオンは思いながら少年の動向に注視する。
「僕の名前はレヴィ。姓はありませんので、ぜひレヴィとお呼びください。皆さんは突然現れた僕が一体何者なのか気になっていることでしょう!そんな疑問にお答えさせていただきましょう。僕は皆さんから魔人と呼ばれる存在です。そして四魔の一角、龍魔の名を預からせていただいています!今日は友人に会いに来たついでに、皆さんに僕の糧となってもらいたくて参上しました!」
その紹介に、その場にいた全ての人間が凍りつく。ただただ信じられない。龍魔王とは伝説上の存在であり、この日この時まで、彼らには何にも関係のない化物だったのだから。
「は、ははは何馬鹿なこと言ってんたよ、気でも狂ってるんじゃねえかあいつ?」
観客の一人が思わず口に出した言葉は静まり返った空間の中で想像以上に響いた。レヴィが琥珀色の瞳を男へと向けると柔らかな笑みを浮かべた。
「あはは、そうでしょうそうでしょう!突然のことで信じられないのは分かります。あなたが悪いわけじゃありません。でもだからと言って僕を侮辱したという事実は見逃せませんよね?だから……死んでください」
優しく語りかけるような声で、レヴィは右の掌を男の方へと突き出し。そっと拳を握った。
「な、なんだ?え、あ。ぐっ、ぎゃああああ!!!やめてくれやめ……!ごめんなさいごめんなさ……」
ブチュンという生々しい音とともに、男はまるで握りつぶした虫のように肉塊へと変わり果てた。夥しい血が男の周囲にいた観客達に吹き掛かった。
「き、きゃあああああああ!」
観客の誰かが叫び声をあげる。それは波紋のように広がり一斉に火がついたかのように逃げようと入口まで駆け始めた。何人もの人間が押し合い、転び、そんな人々を踏みつけていく。逃げるだけで何人も人間が死んでいく。
「あははは、僕は今日ここに食事に来たんですよ?逃すわけないじゃないですか!」
レヴィの言葉通りに、いつの間にか会場を包むように巨大な結界が張られていた。入口までたどり着いた不幸な観客達は結界に触れてそのまま炎に包まれた。周囲一帯に苦痛と恐怖に泣き叫ぶ声が響く。
「さてと……」
そこでようやくレヴィの目が恐怖から尻餅をついているアンブラと立ち尽くし、体を震わせているシオンに移った。
「ふむ……」
一瞬思考したのも束の間に、レヴィはアンブラの方に目を向ける。
「君の方が不味そうだから先にしようかな」
「ヒッ!」
その言葉に彼の顔を絶望が覆う。
「ああ、その表情、たまらないね。月並みな雑魚どもと同じことを言うのも癪だけど、やぱり恐怖で絶望している人間が一番美味しいからね」
そう言って、なんとか這って逃げようとするアンブラの右足の太腿を軽く踏んづける。その細身の体の一体どこにそれほどの重さがあるのかと思えるほど、徐々にアンブラの太腿が踏み潰されていく。痛みに叫びながらも必死になって逃げようとするアンブラの思いは届かず、ポキリと骨の折れる虚しい音が鳴り響き、やがてレヴィの足は地面へとたどり着いた。踏み潰された箇所からは大量に血が流れ、辺りに飛び散った。シオンの頬にアンブラの温かい血が付着する。
「あっ、ぎゃあああああああああ!」
ちぎれた足を片手で、ひょいと持ち上げると邪魔な服を面倒臭そうに剥ぎ取ったレヴィはその肉を顔の前まで持ち上げた。
「それじゃあいただきます」
レヴィはアンブラの足にしゃぶりつく。目の前で人肉をガツガツと勢いよく食べ始めたその姿を見て、シオンは体から力が抜けていくのが分かった。ストンと尻餅をついて、ただただその光景を眺めていた。今までにないほどの恐怖に彼女の体は激しく震える。
目の前にいるのは悪を凝縮した存在だ。ここから今すぐ離れなければ、いや離れても恐らくは殺されるだろう。何せアンブラはシオンと比較されて先に選ばれただけなのだから。すがるような思いで、ジンが飛ばされていった方を見やる。そしてわずかにその目に希望の光が宿った。
~~~~~~~~~~
ジンは短剣を握りしめ、痛みをこらえて立ち上がった。たった一発だ。たった一発で体はボロボロだ。内臓を痛めたのか痛みとともに血を吐き出した。だが怒りに狂っていた頭も少し冷えてきた。
『どうする?』
どうやってこの状況を打開するか。どうやってシオンをあの化け物から引き離すか。それが今のジンの問題だ。だが彼にはそんなに時間は残っていない。すでにアンブラの半身は喰い尽くされている。
レヴィが何かしたのかアンブラにはいまだに意識があった。普通なら死んでいてもおかしくない。徐々に食われていく自分を見て泣き叫ぶ悲痛な声がジンの耳に届いた。
『正味あと数分も持たねえな』
もはやじっくりと考える時間は無い。決断する時は今だ。
そうして覚悟を決めたジンは立ち上がると、シオンを救うために、両手に持った一本の魔剣を解放した。
ジンにとって、いや人類にとっての災厄の存在。龍の魔人にしてその頂点に君臨する存在。龍魔王。
レヴィは周囲を見渡し、全てを嘲るように笑った。
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「なんだあいつ、一体どこから現れたんだ?」
観客の一人が呟く。その声につられてか、徐々に彼らの疑問の声は大きくなっていく。
「お、おいどうしたんだよジ…」
ルースが隣を見ると、そこには今までに見たことのない顔を浮かべたジンが立っていた。声をかけることすら躊躇われるほど、鬼気迫るその瞳は全て謎の闖入者に向けられている。瞬間、ジンが観客席を蹴って宙に飛んだ。
「レェエエエエエヴィイイイイイイイイ!!!!」
一体どう叫べばこれほどの声が出せるのだろうかと思うほどの吠え声が、会場内に轟き渡る。ジンは空中で短剣を鞘から引き抜くと、そのまま舞台に立つ少年に斬りかかった。
ジンのその行動に誰も反応できなかった。それは舞台に立っていたシオンも同様だ。ただただ速すぎて誰も視認できなかったのだ。瞬く間にレヴィと呼ばれた少年に接近したジンには、シオンの姿は一切見えていないようだった。
「あはは、久しぶりだねジンくん」
嗤いながらレヴィは迫り来る短剣の刃先をつまんだ。それを見越していたかのように、ジンは即座に空中で体を回転させて相手の首を目掛けて蹴りを放った。ドゴッという音から推察されるその蹴りの威力は先ほどの試合で見せていたものとはまるで違う。完全に相手を殺すための蹴りだ。
だがそれもまるで効いた様子がない。そんなことは知っているとばかりにジンは必死になって攻撃を叩き込み続けた。しかし相手はその場から一歩も動くことすらない。残像すら残る攻撃はその一撃一撃が必殺であることは誰の目から見ても明らかであった。
「あはは、少しは落ち着こうよジンくん」
その言葉がシオンの耳に入った瞬間、ジンは舞台から弾き飛ばされ、100メートル以上先の壁に叩きつけられていた。
「がはっ!」
肺にたまっていた空気を一気に吐き出したジンはそのまま動かなくなった。そんな彼を一瞥もせずに、レヴィは観客たちに顔をむけて手を広げた。
「皆さん、楽しい時間をお邪魔して申し訳ありません!」
まるで舞台役者か何かのようだとシオンは思いながら少年の動向に注視する。
「僕の名前はレヴィ。姓はありませんので、ぜひレヴィとお呼びください。皆さんは突然現れた僕が一体何者なのか気になっていることでしょう!そんな疑問にお答えさせていただきましょう。僕は皆さんから魔人と呼ばれる存在です。そして四魔の一角、龍魔の名を預からせていただいています!今日は友人に会いに来たついでに、皆さんに僕の糧となってもらいたくて参上しました!」
その紹介に、その場にいた全ての人間が凍りつく。ただただ信じられない。龍魔王とは伝説上の存在であり、この日この時まで、彼らには何にも関係のない化物だったのだから。
「は、ははは何馬鹿なこと言ってんたよ、気でも狂ってるんじゃねえかあいつ?」
観客の一人が思わず口に出した言葉は静まり返った空間の中で想像以上に響いた。レヴィが琥珀色の瞳を男へと向けると柔らかな笑みを浮かべた。
「あはは、そうでしょうそうでしょう!突然のことで信じられないのは分かります。あなたが悪いわけじゃありません。でもだからと言って僕を侮辱したという事実は見逃せませんよね?だから……死んでください」
優しく語りかけるような声で、レヴィは右の掌を男の方へと突き出し。そっと拳を握った。
「な、なんだ?え、あ。ぐっ、ぎゃああああ!!!やめてくれやめ……!ごめんなさいごめんなさ……」
ブチュンという生々しい音とともに、男はまるで握りつぶした虫のように肉塊へと変わり果てた。夥しい血が男の周囲にいた観客達に吹き掛かった。
「き、きゃあああああああ!」
観客の誰かが叫び声をあげる。それは波紋のように広がり一斉に火がついたかのように逃げようと入口まで駆け始めた。何人もの人間が押し合い、転び、そんな人々を踏みつけていく。逃げるだけで何人も人間が死んでいく。
「あははは、僕は今日ここに食事に来たんですよ?逃すわけないじゃないですか!」
レヴィの言葉通りに、いつの間にか会場を包むように巨大な結界が張られていた。入口までたどり着いた不幸な観客達は結界に触れてそのまま炎に包まれた。周囲一帯に苦痛と恐怖に泣き叫ぶ声が響く。
「さてと……」
そこでようやくレヴィの目が恐怖から尻餅をついているアンブラと立ち尽くし、体を震わせているシオンに移った。
「ふむ……」
一瞬思考したのも束の間に、レヴィはアンブラの方に目を向ける。
「君の方が不味そうだから先にしようかな」
「ヒッ!」
その言葉に彼の顔を絶望が覆う。
「ああ、その表情、たまらないね。月並みな雑魚どもと同じことを言うのも癪だけど、やぱり恐怖で絶望している人間が一番美味しいからね」
そう言って、なんとか這って逃げようとするアンブラの右足の太腿を軽く踏んづける。その細身の体の一体どこにそれほどの重さがあるのかと思えるほど、徐々にアンブラの太腿が踏み潰されていく。痛みに叫びながらも必死になって逃げようとするアンブラの思いは届かず、ポキリと骨の折れる虚しい音が鳴り響き、やがてレヴィの足は地面へとたどり着いた。踏み潰された箇所からは大量に血が流れ、辺りに飛び散った。シオンの頬にアンブラの温かい血が付着する。
「あっ、ぎゃあああああああああ!」
ちぎれた足を片手で、ひょいと持ち上げると邪魔な服を面倒臭そうに剥ぎ取ったレヴィはその肉を顔の前まで持ち上げた。
「それじゃあいただきます」
レヴィはアンブラの足にしゃぶりつく。目の前で人肉をガツガツと勢いよく食べ始めたその姿を見て、シオンは体から力が抜けていくのが分かった。ストンと尻餅をついて、ただただその光景を眺めていた。今までにないほどの恐怖に彼女の体は激しく震える。
目の前にいるのは悪を凝縮した存在だ。ここから今すぐ離れなければ、いや離れても恐らくは殺されるだろう。何せアンブラはシオンと比較されて先に選ばれただけなのだから。すがるような思いで、ジンが飛ばされていった方を見やる。そしてわずかにその目に希望の光が宿った。
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ジンは短剣を握りしめ、痛みをこらえて立ち上がった。たった一発だ。たった一発で体はボロボロだ。内臓を痛めたのか痛みとともに血を吐き出した。だが怒りに狂っていた頭も少し冷えてきた。
『どうする?』
どうやってこの状況を打開するか。どうやってシオンをあの化け物から引き離すか。それが今のジンの問題だ。だが彼にはそんなに時間は残っていない。すでにアンブラの半身は喰い尽くされている。
レヴィが何かしたのかアンブラにはいまだに意識があった。普通なら死んでいてもおかしくない。徐々に食われていく自分を見て泣き叫ぶ悲痛な声がジンの耳に届いた。
『正味あと数分も持たねえな』
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