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第7章:再会編
激闘
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ジンの全身に竜の紋様が現れる。それと同時に、彼は肉体を強化していく。
【それは……なるほど、あやつめ、なんの為に来たのかと思ったら、この為に来たのか】
レトは瞬時にその姿が誰の仕業なのかを理解した。
【まあ、良い。さあ、命を賭してかかってこい】
「言われなくても!」
ジンは腰に差していた一対の短剣を引き抜くと駆け出す。ウィリアムとアレキウスが補助に回ろうと動き出そうとして立ち止まる。
「これ、邪魔しない方がいいっすね」
「ああ、みたいだな。動きを見極めて加勢するしかねえ」
あまりの速さに余計な介入をすればジンを妨害する事になるのをすぐに悟ったのだ。何しろ、アレキウスは片腕を折り、ウィリアムも法術を多用したことにより、疲労が蓄積している。満身創痍な2人にはジンとレトの戦いに割って入れるほどの余力が残っていない。
「はあああああああ!」
ジンが飛んできた豪炎を足を止めずにかがみ込んで回避すると、そのまま斬りかかる。しかし彼の下から突如岩の壁が物凄い勢いで盛り上がり、それが腹に直撃し、宙に高く浮かぶ。
「ぐふっ!?」
【ほら、よけろ】
浮かんだ彼に向かって風の刃が飛んでくる。
「ちっ!」
ジンは空中で器用に体を捻って、ギリギリのところで回避する。
【ほう、躱したか。ならばどんどんいくぞ】
「くそが!」
着地までの数秒が長く感じるほど、次から次へと、縦横斜めの風の斬撃が襲いかかってくる。しかしジンは空中で体を動かし続け、なんとか全て回避し、着地する。そして着地した瞬間に爆発したかのような跡を残して、地面を思いっきり蹴ると、今度こそレトに斬りかかった。
「はあああああああ!」
斜め下から上へ交差するように両手に持つ短剣を振る。僅かに体に刃先が触れた事をジンが感じた瞬間に、違和感を覚え、咄嗟に剣を手放した。
【やるではないか。この体に傷をつけられるかと思ったぞ】
ジンの目の前には、いつの間にか青い『炎鎧』を発動させたレトがいた。凄まじい熱気が周囲を覆い、息をすれば肺が燃えるほどだ。短剣はその炎に巻き込まれ、熱された鋼の様にドロドロに溶けていった。
~~~~~~~~~~~
「アレクさん!」
ウィリアムが叫ぶと、アレキウスはすぐさまその意図を理解し、彼に近寄る。それを確認すると、ウィリアムは力を振り絞って、水の球体を作り上げ、2人を包む。だが球体は作ったそばからどんどん蒸発していった。
「しまった!」
ウィリアムがジンの事を思い出し、思わず叫ぶ。だがアレキウスはそんな彼に向かって首を振った。
「安心しろ。どうやら大丈夫みてえだ」
「え?」
ウィリアムが水蒸気の向こうの光景を見る。うっすらとだが2つの人影が向かい合っているのが見えた。
~~~~~~~~~~~~
「その剣、けっこう高価なやつなんだけど」
ジンの短剣はアカツキの名工が作製し、献上した国宝である。魔核は魔物ではなく、魔人の物が使われており、剣に込められた術も、その威力もかつてジンが持っていた、初めて倒した魔物から作り上げた短剣よりも遥かに上だった。だがそれも目の前の規格外の化物からすると大した物では無かったという事だ。
【そうか。それは悪い事をした】
「まあ、いいさ。武器なら他にもある」
ジンは空中に分厚い氷で出来た剣を空間を覆い尽くす様に無数に作り出す。
「行け!」
彼の声とともに、無数の氷剣がレトに向かって動き出す。だが近づけば近づくほどに、氷は溶けていき、彼女に到達する前に水蒸気となって消え去っていった。
【空間を埋め尽くす氷の剣か。良いアイディアだが、そんなものが通じると思うか?】
水蒸気で見えないが向こう側にいるはずのジンに向かって、馬鹿にした様に話しかける。
「そいつはどうかな?」
しかしその返事は自分の真下から聞こえてきた。
【なっ!?】
「お返しだ!」
そのまま限界まで強化した右拳が下から伸びてきて、レトの胸部に突き刺さる。骨を砕く音とともにレトが軽く浮く。すぐさまジンは体勢を整えると、レトに向かって後ろ回し蹴りを放った。
【くはっ】
レトはその勢いで背面に吹き飛び、壁に激突する。しかし、放出する熱によって瓦礫が瞬時に溶け、壁にぶつかっても大きなダメージはなかった。それでもジンによって放たれた蹴りで甚大なダメージを負っていた。
そんなレトから目を一瞬だけ外し、ジンは自分の右掌を見つめる。骨を砕く確かな感触と、誰が相手なのかという考えが頭の中で一瞬よぎるが、ギュッと拳を握りしめ、雑念を消し去る。
【く、くく、くはははは! 良い! 良いぞ! これこそ我が望んでいた戦い! やはり戦いはこうでなくては!】
レトが笑いながらヨロヨロと立ち上がる。肋骨を折ったはずな上に、下手すれば心臓や肺は破裂しているはずだ。しかし、当然の様に動けるあたり、既に治ったと考えるべきだろう。
【気付いているか? あそこの使徒が全力で水の結界で身を包まなければならない空間で、お主だけが何もせずにいられていることに】
ジンはその言葉で自分の拳と足を見てみる。靴は溶けているが、拳も足も火傷一つない。
「マジかよ」
【全くもってあやつは良い置き土産を残していったわ! 『龍麟』を持つ者に炎は効かぬよなあ! くははははは!】
その言葉で、ジンはレヴィにも炎がまともに効かない事を思い出した。龍には炎に対する耐性が存在しているのだ。そこまで考えて違和感を覚える。『なぜノヴァは俺にこの力を?』とジンは疑問に思うが、現状答えなど見つからない。すぐに頭を切り替える。
【ならば攻め方を変えねばなるまいな】
そう言うと、レトは『炎鎧』を解除した。そして今度は『風衣』と『岩籠手』を体と腕に纏う。
「なんのつもりだ?」
【なに、法魔であっても、肉弾戦ができるというところを見せてやろうと思ってな】
レトが心底楽しそうに笑う。『龍鱗』は炎だけではなく、法術全般に耐性がある。その為、傷を与えるには遠距離よりも近距離から殴り合う方が効果的だとレトは考えたのだった。
「ああ、そうかよ!」
しかしジンはすぐさま後方に飛んで距離を取ると、先ほどと同じく空間を氷の大剣で覆い尽くす。まだ熱い空間が一気に冷え始める。
「くらえ!」
再び、一斉に放たれた氷剣がレトに迫る。
【くく、くはははははははは!】
だがそれらを風で加速させた猛烈な速さの拳で正面から叩き壊し、背後から飛んできたものは風で絡め取り、ジンへと飛ばす。しかし吹き飛ばされたものはすぐに軌道を変えて再度レトに向かってくる。
【追尾性か!】
「ご名答」
それに気がついたレトは笑いながらも、冷静に飛んでくる氷剣に対応する。
「おかわりだ!」
【良いぞ、良いぞ良いぞ!】
だがジンは氷剣の中に雷の槍を潜める。何も知らないレトは反射的に飛んできたそれに拳を叩きつけた。凄まじい電流が彼女の体を駆け巡る。
【ぐうううう!?】
体と意識が痺れて一瞬だけ風に綻びが出来る。ジンはそこを狙って、鋼鉄の槍を作り出すと思いっきり投擲する。黒い影が宙を切り裂き、風を突き抜けて、レトの腹部に突き刺さる。
「まだっ、まだあああああ!」
ジンはすぐにもう一本作り出すと、今度は頭目掛けて投擲する。放たれた槍をレトは何も出来ずにそのまま眉間で受け止める。そして槍は勢いを止めずに彼女の頭を貫通すると、そのまま背後の壁に突き刺さった。
「はあ、はあ、はあ」
大技の連発に流石にジンも息が切れる。片膝をついて、顔を苦しそうに歪めながら、レトを睨む。頭を仰け反らせているものの、倒れるそぶりがない。それが意味することは……
【なんだ。もう終わりか?】
ゆっくりと体を起こしたレトの額は肉が蠢いて、修復を開始していた。額から口元に垂れた血をしたでペロリと舐め掬う。
【くくく、先の言葉を撤回しよう。お前は我の前に立つ資格のある戦士だ。この手で殺して喰えぬことが惜しいくらいだ】
その言葉にジンの脳裏で『贄』と『フィリア』という2つの言葉が思い浮かぶ。
「ああ、そうかよ」
【まあ、しかし】
レトが笑う。
【腕や脚の一本ぐらいはつまみ喰いしても構わんよな?】
その瞬間、レトの指先から光が放たれ、ジンの左腕が肩から斬り飛ばされた。
【それは……なるほど、あやつめ、なんの為に来たのかと思ったら、この為に来たのか】
レトは瞬時にその姿が誰の仕業なのかを理解した。
【まあ、良い。さあ、命を賭してかかってこい】
「言われなくても!」
ジンは腰に差していた一対の短剣を引き抜くと駆け出す。ウィリアムとアレキウスが補助に回ろうと動き出そうとして立ち止まる。
「これ、邪魔しない方がいいっすね」
「ああ、みたいだな。動きを見極めて加勢するしかねえ」
あまりの速さに余計な介入をすればジンを妨害する事になるのをすぐに悟ったのだ。何しろ、アレキウスは片腕を折り、ウィリアムも法術を多用したことにより、疲労が蓄積している。満身創痍な2人にはジンとレトの戦いに割って入れるほどの余力が残っていない。
「はあああああああ!」
ジンが飛んできた豪炎を足を止めずにかがみ込んで回避すると、そのまま斬りかかる。しかし彼の下から突如岩の壁が物凄い勢いで盛り上がり、それが腹に直撃し、宙に高く浮かぶ。
「ぐふっ!?」
【ほら、よけろ】
浮かんだ彼に向かって風の刃が飛んでくる。
「ちっ!」
ジンは空中で器用に体を捻って、ギリギリのところで回避する。
【ほう、躱したか。ならばどんどんいくぞ】
「くそが!」
着地までの数秒が長く感じるほど、次から次へと、縦横斜めの風の斬撃が襲いかかってくる。しかしジンは空中で体を動かし続け、なんとか全て回避し、着地する。そして着地した瞬間に爆発したかのような跡を残して、地面を思いっきり蹴ると、今度こそレトに斬りかかった。
「はあああああああ!」
斜め下から上へ交差するように両手に持つ短剣を振る。僅かに体に刃先が触れた事をジンが感じた瞬間に、違和感を覚え、咄嗟に剣を手放した。
【やるではないか。この体に傷をつけられるかと思ったぞ】
ジンの目の前には、いつの間にか青い『炎鎧』を発動させたレトがいた。凄まじい熱気が周囲を覆い、息をすれば肺が燃えるほどだ。短剣はその炎に巻き込まれ、熱された鋼の様にドロドロに溶けていった。
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「アレクさん!」
ウィリアムが叫ぶと、アレキウスはすぐさまその意図を理解し、彼に近寄る。それを確認すると、ウィリアムは力を振り絞って、水の球体を作り上げ、2人を包む。だが球体は作ったそばからどんどん蒸発していった。
「しまった!」
ウィリアムがジンの事を思い出し、思わず叫ぶ。だがアレキウスはそんな彼に向かって首を振った。
「安心しろ。どうやら大丈夫みてえだ」
「え?」
ウィリアムが水蒸気の向こうの光景を見る。うっすらとだが2つの人影が向かい合っているのが見えた。
~~~~~~~~~~~~
「その剣、けっこう高価なやつなんだけど」
ジンの短剣はアカツキの名工が作製し、献上した国宝である。魔核は魔物ではなく、魔人の物が使われており、剣に込められた術も、その威力もかつてジンが持っていた、初めて倒した魔物から作り上げた短剣よりも遥かに上だった。だがそれも目の前の規格外の化物からすると大した物では無かったという事だ。
【そうか。それは悪い事をした】
「まあ、いいさ。武器なら他にもある」
ジンは空中に分厚い氷で出来た剣を空間を覆い尽くす様に無数に作り出す。
「行け!」
彼の声とともに、無数の氷剣がレトに向かって動き出す。だが近づけば近づくほどに、氷は溶けていき、彼女に到達する前に水蒸気となって消え去っていった。
【空間を埋め尽くす氷の剣か。良いアイディアだが、そんなものが通じると思うか?】
水蒸気で見えないが向こう側にいるはずのジンに向かって、馬鹿にした様に話しかける。
「そいつはどうかな?」
しかしその返事は自分の真下から聞こえてきた。
【なっ!?】
「お返しだ!」
そのまま限界まで強化した右拳が下から伸びてきて、レトの胸部に突き刺さる。骨を砕く音とともにレトが軽く浮く。すぐさまジンは体勢を整えると、レトに向かって後ろ回し蹴りを放った。
【くはっ】
レトはその勢いで背面に吹き飛び、壁に激突する。しかし、放出する熱によって瓦礫が瞬時に溶け、壁にぶつかっても大きなダメージはなかった。それでもジンによって放たれた蹴りで甚大なダメージを負っていた。
そんなレトから目を一瞬だけ外し、ジンは自分の右掌を見つめる。骨を砕く確かな感触と、誰が相手なのかという考えが頭の中で一瞬よぎるが、ギュッと拳を握りしめ、雑念を消し去る。
【く、くく、くはははは! 良い! 良いぞ! これこそ我が望んでいた戦い! やはり戦いはこうでなくては!】
レトが笑いながらヨロヨロと立ち上がる。肋骨を折ったはずな上に、下手すれば心臓や肺は破裂しているはずだ。しかし、当然の様に動けるあたり、既に治ったと考えるべきだろう。
【気付いているか? あそこの使徒が全力で水の結界で身を包まなければならない空間で、お主だけが何もせずにいられていることに】
ジンはその言葉で自分の拳と足を見てみる。靴は溶けているが、拳も足も火傷一つない。
「マジかよ」
【全くもってあやつは良い置き土産を残していったわ! 『龍麟』を持つ者に炎は効かぬよなあ! くははははは!】
その言葉で、ジンはレヴィにも炎がまともに効かない事を思い出した。龍には炎に対する耐性が存在しているのだ。そこまで考えて違和感を覚える。『なぜノヴァは俺にこの力を?』とジンは疑問に思うが、現状答えなど見つからない。すぐに頭を切り替える。
【ならば攻め方を変えねばなるまいな】
そう言うと、レトは『炎鎧』を解除した。そして今度は『風衣』と『岩籠手』を体と腕に纏う。
「なんのつもりだ?」
【なに、法魔であっても、肉弾戦ができるというところを見せてやろうと思ってな】
レトが心底楽しそうに笑う。『龍鱗』は炎だけではなく、法術全般に耐性がある。その為、傷を与えるには遠距離よりも近距離から殴り合う方が効果的だとレトは考えたのだった。
「ああ、そうかよ!」
しかしジンはすぐさま後方に飛んで距離を取ると、先ほどと同じく空間を氷の大剣で覆い尽くす。まだ熱い空間が一気に冷え始める。
「くらえ!」
再び、一斉に放たれた氷剣がレトに迫る。
【くく、くはははははははは!】
だがそれらを風で加速させた猛烈な速さの拳で正面から叩き壊し、背後から飛んできたものは風で絡め取り、ジンへと飛ばす。しかし吹き飛ばされたものはすぐに軌道を変えて再度レトに向かってくる。
【追尾性か!】
「ご名答」
それに気がついたレトは笑いながらも、冷静に飛んでくる氷剣に対応する。
「おかわりだ!」
【良いぞ、良いぞ良いぞ!】
だがジンは氷剣の中に雷の槍を潜める。何も知らないレトは反射的に飛んできたそれに拳を叩きつけた。凄まじい電流が彼女の体を駆け巡る。
【ぐうううう!?】
体と意識が痺れて一瞬だけ風に綻びが出来る。ジンはそこを狙って、鋼鉄の槍を作り出すと思いっきり投擲する。黒い影が宙を切り裂き、風を突き抜けて、レトの腹部に突き刺さる。
「まだっ、まだあああああ!」
ジンはすぐにもう一本作り出すと、今度は頭目掛けて投擲する。放たれた槍をレトは何も出来ずにそのまま眉間で受け止める。そして槍は勢いを止めずに彼女の頭を貫通すると、そのまま背後の壁に突き刺さった。
「はあ、はあ、はあ」
大技の連発に流石にジンも息が切れる。片膝をついて、顔を苦しそうに歪めながら、レトを睨む。頭を仰け反らせているものの、倒れるそぶりがない。それが意味することは……
【なんだ。もう終わりか?】
ゆっくりと体を起こしたレトの額は肉が蠢いて、修復を開始していた。額から口元に垂れた血をしたでペロリと舐め掬う。
【くくく、先の言葉を撤回しよう。お前は我の前に立つ資格のある戦士だ。この手で殺して喰えぬことが惜しいくらいだ】
その言葉にジンの脳裏で『贄』と『フィリア』という2つの言葉が思い浮かぶ。
「ああ、そうかよ」
【まあ、しかし】
レトが笑う。
【腕や脚の一本ぐらいはつまみ喰いしても構わんよな?】
その瞬間、レトの指先から光が放たれ、ジンの左腕が肩から斬り飛ばされた。
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