World End

nao

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龍の章

四魔会議

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 元キール神聖王国の首都オリジンに存在する王城には、使徒達が集まる円卓の間というものが存在する。しかし国が崩壊した現在、そこを使うのは使徒ではない。

【よーぅ、来てやったぜぃ】

 獣魔グティスは足でドアを蹴飛ばして、ズカズカと部屋の中に入った。中にはすでに死魔ヴァーロンと法魔レトが円卓についていた。

【うむ。久しいな。グティスよ】

 ヴァーロンはモノクル越しにチラリとグティスを見る。しかしレトは不愉快そうな顔を浮かべて彼を無視する。

【おぅ。ヴァーロンのおっさんも元気そうだなぁ】

 ズカズカと歩いてドサリとヴァーロンの向かい側の席に着く。

【しっかし、今度は女かぁ。特性とはいえ、会う度に顔が変わるのも難儀だよなぁ】

 足をテーブルに投げ出して、椅子に体を沈めながらグティスがレトに話しかける。

【別に、我らにとって大切なのは魂だ。肉体などその付属物でしかない】

 ぶっきらぼうに答えるレトを見てニヤニヤとグティスは笑う。

【なんでぇ、随分と不機嫌だねぃ。なんかあったのかぃ? 例えば、生まれた子供に何かあったとかぁ】

 その言葉を聞いたレトは舌打ちをする。グティスは獣のような外見をしているが馬鹿ではない。むしろ頭が切れる。レト側の事情を知りつつもレトを煽って、さらに情報を引き出そうとしているのだろう。

【……】

 だからこそ、レトは口を開ける事を拒んだ。

【言えないかぁ。そりゃ残念】

 その様子を見たグティスは言葉とは裏腹に残念そうな顔を見せずにレトから目を離した。

【それにしても、ノヴァの爺さんはまだかねぃ。あの爺さん、いつも一番に来るはずなのになぁ】

 彼らが集まる時、ノヴァはフィリアに選ばれた最古の存在である事から、彼らのまとめ役を引き受けていた。真面目な性格であるため、たとえ集合場所から自分が最も離れていたとしても、一番最初にそこに行くような人物だ。それなのにすでに集合予定時間を数分過ぎている。これはある意味で異常事態と言える。

【うむ。吾輩も気になっていたところだ。ノヴァ翁は意味もなく時間に遅れるような御仁ではない】

 グティスとヴァーロンが話していると、足音が聞こえてきた。そちらに二人が視線を向けると、赤髪の若い男が立っていた。

【お前さん、誰だぃ? 魔人みたいだけどよぉ】

 感じた事のない気配にグティスは思わず尋ねる。ヴァーロンも怪訝そうな顔を浮かべた。レトのみチラリと一瞥すると、興味を失ったかのように顔を背けた。男はそんな彼らの様子を無視して、空いていた最後の席に着いた。

【お前さん、もしかしてノヴァの爺さんなのかぁ?】

 グティスは再度尋ねる。レヴィはグティスに顔を向けた。

「違う。俺はレヴィ、ノヴァじゃないが龍魔だ」

 その言葉にポカンとした表情をグティスとヴァーロンは浮かべ、ついでその言葉の意味を理解すると、ノヴァは腹を抱えて笑い出し、ヴァーロンは顔を背けて肩を震わせた。

【ギャハハハハ! ノヴァの爺さん、いっつも偉そうな事ぉ言ってやがったのに、器に消されたのかよぅ! 雑魚すぎぃ! なんの冗談だよぉ!】

【くふふ、あまり笑ってやるな。ノヴァ翁がし……くくく……死んだんだぞ】

 グティスを嗜めつつも、ヴァーロンも笑いを堪える事が出来なかった。

~~~~~~~~~

 しばらくして、ようやく笑いやむと、レトが口を開いた。

【それで、今回話す内容についてだが……】

【おぃおぃ、なに仕切ろうとしてんだぃ? ノヴァの爺さんならまだしも、一番若い奴がしゃしゃるんだじゃねぇよぉ】

 法魔であるレトは四魔の中で最後に生み出された存在だ。そのためグティスはレトを若造として見下す事があるのだ。

【誰かが話し始めなければ進むものも進まないだろう】

【んなこたぁ、わかってるさぁ。俺が言いたいのはテメェじゃ役不足ってことだ】

 それを聞いたレトは肩をすくめると、口を閉じた。

【さてとぉ、ヴァーロンのおっさん、俺が進めてもいいかぃ?】

【うむ、よかろう】

【じゃあ、許可も出たという事で、情報開示を始めるとするかぃ】

 グティスはそう告げると、自分が統治する大陸西側の話をし始めた。現在の支配規模や戦力などだ。それが終わると、ヴァーロンが話し、次いでレトも現状を報告する。

【んで、最後にえっと、レヴィだったかぁ? お前の情報を共有しろぃ】

「情報か……」

 だがレヴィは彼らが望むような情報を持っていない。

【どうした? ノヴァ翁からは何も聞いていないのか?】

 ヴァーロンの質問に、レヴィは首肯する。

【だぁから、リュカ王国を落としてないのかぁ】

 ようやくグティスは納得したという表情を浮かべた。

「どういうことだ?」

【四魔は毎回目覚めるとフィリア様より使命を与えられる。その役割は毎回異なるが、共通しているのは何かしらで争うという事だ】

 レヴィの様子を見て、レトが口を開く。

【今回我らに与えられた使命は陣取りゲーム。一国を制圧後、1年間の準備期間を経て、戦争を始めるというものだ】

「なんだそれ?」

【準備とは例えば配下を増やす事などがある。我らは自分の手元の駒と自らを用いて殺し合いをするのだ】

【ついでに言うとぉ、最中に勇者が殺しに来るかもしれないけど、それは自分でどうにかするって事でぇ】

「……それなら贄はどうするんだ?」

【贄? そういや、今回のはどんなやつなんだぁ?】

 その質問に、レヴィはジンの特徴を説明する。

【へぇ、無神術の使い手で強化の権能持ちねぇ。なかなかにやばそうな組み合わせだぁ】

 グティスは目を細める。先程までは大型の肉食獣のように荒々しい印象だったが、急に蛇のように狡猾そうな雰囲気が出てくる。

【うむ。其奴、危険すぎるな。下手すれば、フィリア様のお体を傷つけるかもしれん。強さはどの程度なのだ?】

【今現在の強さは大したものではない。そうだな、我らであれば本気を出さずとも容易く倒す事ができるだろう】

 ヴァーロンの疑問に、レヴィの代わりにレトが答える。

【ほう、すでに戦ったのか?】

 興味深そうにヴァーロンが尋ねる。

【ああ、この器と因縁浅からぬ仲でな。器を奪う時に少し戦った】

【それじゃあ、そいつは十全に戦えなかったんじゃねぇかぁ?】

【だろうな。だが侮るなよ。腐っても我は法魔だ。相手の実力を測る事など容易く出来る】

 馬鹿にするように言ってきたグティスにレトは言い返した。

【まぁ、お前が言うならそうなんだろうよぉ】

【うむ。しかし、強化の権能とやらは話によると無限に力を増す事が出来るのだろう? 現状の戦闘力を鵜呑みにするのは少々安直すぎるな】

【おっさんの言う通りだぁな。それで、今そいつはどこにいるんだぁ?】

 だが、その質問にレヴィは首を横に振った。

「わからない」

【なんでぇ、動向を探ってねぇのか?】

「こちらにも都合があったんだ」

【ふーん。まあ、贄ならそのうち出てくるだろぅさ。そういう風に創られているからなぁ。んじゃあまぁ、大体話はこれで終わりかぃ?】

 グティスがそう言うと、他の三人も頷いた。

【そんじゃぁ、今日から丁度一月後、ゲームを始めようぜぇ。龍魔はまぁ今回は残念だったなぁ。陣取りゲームするにも陣がなきゃぁな。フィリア様の寵愛はまた来世っつぅ事だぁ】

 小馬鹿にしたように言ってくるグティスをレヴィは無視する。彼にとって、もはやフィリアの愛は必要なものではない。

「じゃあ、俺は行く。贄を探し、育てる事が俺の使命だからな」

【おぅ、それはお前に頼んだぜぇ】

【うむ、任せた】

【……】

 レヴィは立ち上がると円卓の間から出る。それに続くようにヴァーロンも立ち上がり、窓から飛び去った。部屋の中にはグティスとレトが残った。

【なんだ?】

 レトが不快そうに出て行こうとしないグティス尋ねる。

【お前……弱体化しているなぁ】

 ニヤニヤと笑うグティスに、眉がピクリと動く。

【ギャハハハハ、図星かぁ。まぁいい、1ヶ月後にまた会おうぜぇ】

 グティスは立ち上がると鼻で笑って去って行った。

【ちっ】

 誰もいなくなった円卓の間でレトは舌打ちをした。

~~~~~~~

 空を飛びながら、俺はさっきの話し合いで聞いた内容を頭で反芻する。カミーラ達を巻き込まない為にはどうすればいいのか。だがわからない。他の四魔達が動き出せば、きっとこの世界に逃げられる場所はない。

 ならば俺がすべき事は何か。カミーラ達を守る為に何が出来るのか。

 きっと間も無く世界が終わる。その時、俺は何が出来るのだろうか。
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