1 / 28
取材対象の自宅にて(一)・彼女との初顔合わせ
しおりを挟む
……はい、少々お待ちください…。すみません、大変にお待たせを致しました…。
あ、小宮先生。こんにちは、今日はどうもわざわざ…。はい、…ええ、こちらの方が、伍代智世さん…。
はじめまして。…ええ、はい。私が立花葵です。どうぞよろしくお願いいたします。
あの、初対面から大変に失礼ですけれど、…本当に伍代智世さん、ですよね?
いえ、あの、私が勝手に想像していたより、ずっと、その…雰囲気の柔らかい方で、それに溌剌とした物言いをされるんだな、って…。その、お借りしたご本の著者略歴やら、それに、あの、不躾ですけれど、ネット検索で調べさせて頂いた範囲内では、その、少なくとも私よりも、その、お姉様でいらっしゃいますし、それに、あの、私…良い歳の上に、曲がりなりにも出版業界に携わる身で、本当に世間知らず、物知らずで申し訳ないんですけれど、相当のキャリアもおありみたいですし、…何より、その、私が拝見した限りでは、お顔立ちが、何と言うか、もっときりりとした印象だったので、きっと、その、…一昔前の女子校の先生みたいな方かと…。大変失礼を申し上げました。…いえいえ、本当にどうぞよろしくお願いいたします。
あの、まずはお上がりになりませんか?立ち話も何ですし、…何しろまだ、春は名のみの風の寒さ、ですから。
あ、…先生、もうお帰りですか?…え、もう次のお仕事の?それはどうも、…わざわざありがとうございました。…ええ…。あの、先生、どうぞお気をつけて…。
……ええと、伍代さん、とりあえず中へどうぞ。独り住まいで行き届きませんが…。
…いえ、そんなことは。広いだけの、古い家で。
…どうぞこちらへ。よろしければ、どうぞこちら、お当てください。…え、…あの、いいんですか?ありがとうございます。せっかくですし、遠慮なく頂戴いたします。実は私、これ大好物で…。
あ、後藤さんに聞いていらしたんですね。すみません、わざわざお気遣い頂いて。
お祖母ちゃん、これ、こちらの伍代さんに頂きました。お祖母ちゃんもこれ、大好きだもんね。良かったね。嬉しいね。
あの、伍代さん、これは大変に不躾なお願いなんですけれど、…もしよろしければ、ちょっとお線香を上げてやって頂けませんか?今日、祖母の月命日なんです。祖母も珍しいお客様は、きっと喜ぶと思います。
よろしいですか?ありがとうございます…。ええ、どうぞ。お願いいたします…。
お待たせしました、どうぞ、本当に粗茶ですけれど…。お茶請けはお持たせで、…どこまでも行き届かないことで、大変に申し訳ありません。
いいえ、どうぞご遠慮なさらず。私もお相伴させて頂きますから…。
…ええと、その、拝見した企画書や、それに後藤さんから伺ったお話ですと、伍代さんは、その、…あの事件について、私の話をお聞きになりたい、とのことでしたけれど、…伍代さん、後藤さんに伝手をお持ちなら、調書の大まかな内容くらいは、とっくにご存じなのではないですか…?
あ、…「直接話を聞く」って、やっぱり大事なことなんですね…。分かりました。私の話が、どの程度お役に立つのかなんて、正直全く見当が付きませんけれど…。
……え、…私,世間ではそんな言われ方を…?
え、…ええ、私、そんなことは全然…。元々ワイドショーなんかはあまり見ませんでしたし…。ええ、祖母も。…マスコミに携わってる伍代さんのような方の前で、大変に恐縮ですけれど、うちの祖母、自分のお弟子さん達を初めとした余所の方にはともかく、唯一の同居家族の私には良く、「こんな、ワイドショーなんぞで言われてるような、ちゃちな常識なんて、ある日あっという間に引っ繰り返ったって可怪しくないんだから。昭和20年の8月15日が良い例だ。その証拠に、毀誉褒貶は世の習いとは言え、いくら持て囃されてる人間だろうが、何かひとつでも問題を起こせば、たとえそれが、いわゆる犯罪を犯したんじゃなくでも、あっと言う間に世の中総出で、袋叩きの上に爪弾きの目に遭わされるんだから。世間に大きく顔が売れてる身で問題引き起こす方にも、まあ、まるっきり問題がない訳じゃないけれど、『報道の自由』を盾に、家族でも直接の関係者でも何でもないのに、散々持て囃した相手を、『一家の内事』を種にあっさり日和って、地面に叩き付けて踏んづけて、たとえ誤報だったとしても、補償どころ謝罪もしないで口を拭う側は、隣組より質が悪い。それに、『公正と中立』とやらを謳い文句にしながら、実質はスポンサー様や大手芸能事務所様辺りの提灯持ちなのは、視てるこっちがちょっと考えれば判る。その上に、自分のところに都合の悪い報道は後回し、問題が大きくなってどうしようもなくなってから、やっとおもむろに、謝罪を兼ねた特別番組なんてのを組むだろう。あれもみっともない。大本営発表のラジオニュースや新聞記事と同じだ。結局それが玉音放送に、…敗戦に繋がったんだから」って、心底胸糞悪そうに。何しろ、それこそ先の大戦の経験者ですから、言うことが、…あ、あの、…お説いちいちごもっとも、ですか?…いえ、こちらこそ、門外漢の素人が口幅ったいことを申し上げまして、恐縮です。
まあ、そういう下地の上に、祖母の介護の大騒ぎに再就職、それに祖母が亡くなってからは一層…。少し落ち着いたと思ったら、今度はあの事件でしたから…。後藤さんや小宮先生、それに病院の先生にも、あの事件は過去のこと、曲がりなりにももう済んでしまったことなんだから、無闇に掘り返すもんじゃない、特にマスコミ経由の情報は止めておけ、私の傷が大きく深くなるだけだから、って…。幸い、って言うか何と言うか、少なくとも当分の間は、こうやってこの家に引き籠っていても、誰からも文句を言われない立場ですから…。
あの、…これは凄く不遜な物言いかも知れませんけれど、私、基本的に世間の人にどう思われようと構わないんです。
私の大切な、少なくとも私が大切に思ってる相手が、私のことを大きく誤解してさえいるのでなければ。
ああ、やっぱりお気に障りました?でも、そうでも思っていなければ、私みたいな立場の人間は、生きていることが、…いえ、呼吸をすることさえも、辛くてやっていられないんです。
だから、そのことを正そうとお思いなら、…え、違う…?…私の考えには、ジャーナリズムの観点からは多少は言いたいこともないわけじゃないけれど、それは個人の思想・信条に関わることだから、取り敢えず一旦脇に置いておくとして、まず第一に、あの一件において、あんな状況から、ともかくも生還した、私という人間に、純粋に興味がある?…だからこそ、私の話を聞きたい、んですか?…ええ?…ご自分の興味を第一に優先した取材だから、もし気が進まないなら、今すぐこの場で断っても構わない…?
あ、小宮先生。こんにちは、今日はどうもわざわざ…。はい、…ええ、こちらの方が、伍代智世さん…。
はじめまして。…ええ、はい。私が立花葵です。どうぞよろしくお願いいたします。
あの、初対面から大変に失礼ですけれど、…本当に伍代智世さん、ですよね?
いえ、あの、私が勝手に想像していたより、ずっと、その…雰囲気の柔らかい方で、それに溌剌とした物言いをされるんだな、って…。その、お借りしたご本の著者略歴やら、それに、あの、不躾ですけれど、ネット検索で調べさせて頂いた範囲内では、その、少なくとも私よりも、その、お姉様でいらっしゃいますし、それに、あの、私…良い歳の上に、曲がりなりにも出版業界に携わる身で、本当に世間知らず、物知らずで申し訳ないんですけれど、相当のキャリアもおありみたいですし、…何より、その、私が拝見した限りでは、お顔立ちが、何と言うか、もっときりりとした印象だったので、きっと、その、…一昔前の女子校の先生みたいな方かと…。大変失礼を申し上げました。…いえいえ、本当にどうぞよろしくお願いいたします。
あの、まずはお上がりになりませんか?立ち話も何ですし、…何しろまだ、春は名のみの風の寒さ、ですから。
あ、…先生、もうお帰りですか?…え、もう次のお仕事の?それはどうも、…わざわざありがとうございました。…ええ…。あの、先生、どうぞお気をつけて…。
……ええと、伍代さん、とりあえず中へどうぞ。独り住まいで行き届きませんが…。
…いえ、そんなことは。広いだけの、古い家で。
…どうぞこちらへ。よろしければ、どうぞこちら、お当てください。…え、…あの、いいんですか?ありがとうございます。せっかくですし、遠慮なく頂戴いたします。実は私、これ大好物で…。
あ、後藤さんに聞いていらしたんですね。すみません、わざわざお気遣い頂いて。
お祖母ちゃん、これ、こちらの伍代さんに頂きました。お祖母ちゃんもこれ、大好きだもんね。良かったね。嬉しいね。
あの、伍代さん、これは大変に不躾なお願いなんですけれど、…もしよろしければ、ちょっとお線香を上げてやって頂けませんか?今日、祖母の月命日なんです。祖母も珍しいお客様は、きっと喜ぶと思います。
よろしいですか?ありがとうございます…。ええ、どうぞ。お願いいたします…。
お待たせしました、どうぞ、本当に粗茶ですけれど…。お茶請けはお持たせで、…どこまでも行き届かないことで、大変に申し訳ありません。
いいえ、どうぞご遠慮なさらず。私もお相伴させて頂きますから…。
…ええと、その、拝見した企画書や、それに後藤さんから伺ったお話ですと、伍代さんは、その、…あの事件について、私の話をお聞きになりたい、とのことでしたけれど、…伍代さん、後藤さんに伝手をお持ちなら、調書の大まかな内容くらいは、とっくにご存じなのではないですか…?
あ、…「直接話を聞く」って、やっぱり大事なことなんですね…。分かりました。私の話が、どの程度お役に立つのかなんて、正直全く見当が付きませんけれど…。
……え、…私,世間ではそんな言われ方を…?
え、…ええ、私、そんなことは全然…。元々ワイドショーなんかはあまり見ませんでしたし…。ええ、祖母も。…マスコミに携わってる伍代さんのような方の前で、大変に恐縮ですけれど、うちの祖母、自分のお弟子さん達を初めとした余所の方にはともかく、唯一の同居家族の私には良く、「こんな、ワイドショーなんぞで言われてるような、ちゃちな常識なんて、ある日あっという間に引っ繰り返ったって可怪しくないんだから。昭和20年の8月15日が良い例だ。その証拠に、毀誉褒貶は世の習いとは言え、いくら持て囃されてる人間だろうが、何かひとつでも問題を起こせば、たとえそれが、いわゆる犯罪を犯したんじゃなくでも、あっと言う間に世の中総出で、袋叩きの上に爪弾きの目に遭わされるんだから。世間に大きく顔が売れてる身で問題引き起こす方にも、まあ、まるっきり問題がない訳じゃないけれど、『報道の自由』を盾に、家族でも直接の関係者でも何でもないのに、散々持て囃した相手を、『一家の内事』を種にあっさり日和って、地面に叩き付けて踏んづけて、たとえ誤報だったとしても、補償どころ謝罪もしないで口を拭う側は、隣組より質が悪い。それに、『公正と中立』とやらを謳い文句にしながら、実質はスポンサー様や大手芸能事務所様辺りの提灯持ちなのは、視てるこっちがちょっと考えれば判る。その上に、自分のところに都合の悪い報道は後回し、問題が大きくなってどうしようもなくなってから、やっとおもむろに、謝罪を兼ねた特別番組なんてのを組むだろう。あれもみっともない。大本営発表のラジオニュースや新聞記事と同じだ。結局それが玉音放送に、…敗戦に繋がったんだから」って、心底胸糞悪そうに。何しろ、それこそ先の大戦の経験者ですから、言うことが、…あ、あの、…お説いちいちごもっとも、ですか?…いえ、こちらこそ、門外漢の素人が口幅ったいことを申し上げまして、恐縮です。
まあ、そういう下地の上に、祖母の介護の大騒ぎに再就職、それに祖母が亡くなってからは一層…。少し落ち着いたと思ったら、今度はあの事件でしたから…。後藤さんや小宮先生、それに病院の先生にも、あの事件は過去のこと、曲がりなりにももう済んでしまったことなんだから、無闇に掘り返すもんじゃない、特にマスコミ経由の情報は止めておけ、私の傷が大きく深くなるだけだから、って…。幸い、って言うか何と言うか、少なくとも当分の間は、こうやってこの家に引き籠っていても、誰からも文句を言われない立場ですから…。
あの、…これは凄く不遜な物言いかも知れませんけれど、私、基本的に世間の人にどう思われようと構わないんです。
私の大切な、少なくとも私が大切に思ってる相手が、私のことを大きく誤解してさえいるのでなければ。
ああ、やっぱりお気に障りました?でも、そうでも思っていなければ、私みたいな立場の人間は、生きていることが、…いえ、呼吸をすることさえも、辛くてやっていられないんです。
だから、そのことを正そうとお思いなら、…え、違う…?…私の考えには、ジャーナリズムの観点からは多少は言いたいこともないわけじゃないけれど、それは個人の思想・信条に関わることだから、取り敢えず一旦脇に置いておくとして、まず第一に、あの一件において、あんな状況から、ともかくも生還した、私という人間に、純粋に興味がある?…だからこそ、私の話を聞きたい、んですか?…ええ?…ご自分の興味を第一に優先した取材だから、もし気が進まないなら、今すぐこの場で断っても構わない…?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる