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「幼少期の主人公、『雑木林』の外にて『謎の紙片』を開く。」

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そこには、
…当然かも知れないけれど、宝の場所を示す絵図も、曰くありげな文言も、全く書かれてはいなかった。

それは、まあ、「芸術写真」と言えばそうなのだろうけれど、

その、写真に写った解き髪の、官能的な化粧を施された美女は、
上半身に一糸も纏ってはいなかった。

元は、いわゆる「大人のグラビア雑誌」の一ページだったのだろう。

綴じられていたと推測される辺りに、ほぼ破り取られたのだろうと思しき跡があり、

その白々しい破れ目を目にして、

(変な期待させやがって!)

という、何やら場違いな怒りと同時に、
非常に虚しい思いに駆られたのを憶えている。


そんなモノを、後生大事に家に持って帰る気には到底なれず、

少し遠回りをして、最寄りのコンビニに手洗いを借りる振りをして入り、

お店と、あと被写体の女性には悪いとは思ったけれど、

入ってすぐに、お店までの経路の途中で、すでにぐしゃぐしゃに丸めておいたそれを、
お店の、「燃えるゴミ」と書かれたごみ箱の口に叩き込み、

直後、コンビニの手洗いに併設された洗面所で、それはもう念入りに手を洗ったことであった。
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