おお魔王よ、死んでしまうとはお疲れ様です。

イマノキ・スギロウ

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序章

第01話 「ヤバ、セリフ間違えた」

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 ―――世界に魔物という脅威が現われ、人々の顔から笑顔が失われてどれだけの時が経っただろう?
長い魔物達との戦いで多くの小国が滅び、大国ですらもはや国を維持するのがやっととなっている。だが、そんな辛い日々も今日までだ。この戦いに勝てば人々は笑顔を取り戻し、大陸に残った国々も復興することが出来る。
そう、『魔王』さえ倒せばすべては元に戻る!

 そうして決意を胸に3人の仲間と魔王と呼ばれる魔物達の王の居室にたどり着いた青年『勇者』はそっと扉に手を掛け、中へと入っていった。すると…、

「ふはははは、ここまでよくぞ来たな、勇者とその仲間達よ」

「誰だ!」

「誰だとはご挨拶だな、我はお前たちが魔王と呼んでいる者ぞ」

「! お前が…、魔王?」

「そうだ、ん? 貴様らなんだその顔は?」

「いや、魔物達の王なんだからもっと醜悪な化け物だとばかり思ってたんだけど、お前みたいなのがほんとに魔王なのか?」

「ちょ、遊び人! 挑発するな」

「ふふ、魔物達の姿から我のような美貌を持った魔王がいることを想像すらできずとも別に恥じることはない」

「いや、途中で戦った下半身が植物型の魔物のねーちゃんのがボンキュボンってむしろ綺麗だった気がする、こんな小娘が魔王だって言われるくらいならあっちのがよっぽど…」

「無礼な! 正真正銘我は魔王ぞ! 我の力を持ってすれば世界を支配してその一部を気前よくお主らにくれてやる事も…、!」(ヤバ、セリフ間違えた)

「・・・・・・・、」

「「「「・・・・・・、」」」」

 突然魔王の言葉が止まり、数秒の沈黙ののち何事もなかったかのように魔王は再びすまし顔で口を開いた。

「さ、さて、せっかく我が前に来たのだ少しは楽しませてもらおうか!」

「うお、いきなり来た!?」

「ちぃ、構えろ!」

「勇者様!」

「分かってる、みんな行くぞ!」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 魔王メアリーベルが現われた
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 勇者の攻撃 
 ミス!

 女戦士の攻撃 
 魔王メアリーベルに85のダメージ!
 
 女僧侶はガチムチンを唱えた! 
 全員の防御力が150上がった。
 
 男遊び人は良くわからない道具を使った。
 偶然にも召喚儀式サバトとなって悪魔が召喚された!
 しかも敵になった! 

 (……なにやってるのよ)
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 ・
 ・ 
 魔王メアリーベルは超猛吹雪ハイパーブリザードを放った!
 全員に200のダメージ!
 召喚悪魔は凍りついた!
 ・
 ・
 ・
 勇者の攻撃! 
 岩石斬り! 
 ミス!

 女戦士の攻撃
 激流斬り! 
 魔王メアリーベルに120のダメージ!

 女僧侶はマジナオールを唱えた!
 全員の体力が180回復した。

 男遊び人は攻撃を外した勇者に爆笑してしまい、動きがとまってしまった。
 勇者のイラつき度が200上がった!
 ・
 ・
 ・
 魔王メアリーベルは極炎爆破グレートエクスプロージョンを放った!
 全員に260のダメージ!
 凍り付いていた召喚悪魔は粉々になった!

 (よし、面倒なのは消した)
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 勇者の攻撃!
 電撃斬り! ミス!

 女戦士の攻撃!
 捨て身の斬舞! 
 4回命中!
 魔王メアリーベルに310のダメージ!
 攻撃の反動で女戦士は60のダメージ!  

 女僧侶はチョーマジナオールを唱えた。
 全員の体力が240回復した。

 男遊び人は女戦士に薬草を使った。
 しかし女戦士は拒否した。
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 ・
 数ターン経過
 ・
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 ・
 
 (そろそろ大技いくか、) 

 魔王メアリーベルは強力な極大魔法を放とうと魔力を溜めている!
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 ・
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 勇者は必殺の剣技を放つために力を溜め始めた!

 女戦士は盾を構えて仲間達の前に出た!

 女僧侶はガチンを唱えた。
 女戦士の防御力が230上がった!

 男遊び人は背負っていた大鉄鍋に身を隠した!
 ・
 ・
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 魔王メアリーベルは殲滅光波ジェノサイドバスターを放った! 
 女戦士に900のダメージ! 
 女戦士は瀕死の重傷を負った!
 ・
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 勇者の攻撃!
 ライトニングスラッシュ!
 ミス!

 女戦士は瀕死で動けない!

 女僧侶はスベテヲアナタニササゲールを唱えた。
 魔力を全て使い女戦士を復活させた。

 男遊び人は勇者に「ドンマイ」と声をかけた。
 勇者のイラつき度が800上がった!
 あまりの恥ずかしさと男遊び人に対する怒りで勇者は真の力に覚醒した!
 
 勇者の攻撃!
 スーパーライトニングスラッシュ!
 魔王メアリーベルに9999のダメージ!
 魔王メアリーベルを倒した!
 攻撃の余波で男遊び人も倒した。

 (予定通り…、)

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「ぐぅ、まさかこれほどのものとは…、見事だ、勇者よ。この戦い、お前たちの勝ちだ…、」

 「多くの人々を苦しめたお前の称賛など必要ない、潔くくたばれ!」

 (うぐ、ミスってばっかなの見なかったことにして褒めてやったのに、地味に傷つくこと言いやがって……、)

 「ふ、ふはははは、今は仮初の平和を楽しむがいい…、またいつの日か第二、第三の魔王が必ずや…、」

 「その時はまた倒してやる!」

  そう宣言すると、勇者は聖剣を魔王に突き立て魔王メアリーベルは絶命した。 
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 神を信仰する者は神に祈りをささげる、そしてその祈りをささげる場として用いられるのが教会である。
だが勇者や魔物が存在する世界において教会は祈りをささげるほかに、寿命や病気で死んだ者以外を蘇らせるという役目も担っている。そして、ある神を信仰する教会では今、神官によって死んだ者の復活の儀式が行われていた。

 「さあ、かの者に祝福を! 目覚めなさい!」

  ゴトッ、

  神官の前にある棺の蓋が動き、中から蓋をどけて復活した人物は立ち上がると死んでいる間に固まってしまっていた身体をほぐすために大きく伸びをした。

「う~ん、疲れた~」

「おおよ、死んでしまうとはお疲れ様です」 

「お疲れ様~」

 死んだ者は教会で生き返る。それはなにも勇者や村人に限った話ではない。彼ら魔王だって彼らの信奉する神、を奉る教会で復活が可能なのだ。

「今回の勇者さんはミスが多かったですね」

「あいつ、雑魚敵には必ず攻撃当たるくせに成長させる為に送り込んだ中ボスや私相手だとほっとんど攻撃当たらなかったのよね~」

「おそらくですが、典型的な雑魚狩りレべリング専門の弱いメンタルしか持ち合わせてなかったんでしょう」

「えぇ~、だから強敵が来た途端にビビッてミスりまくりってこと? それって勇者としてどうなの?」

「まぁ今時は神々も便利で進んだ時代から先進的な知識や戦術を期待して転生で連れてきた魂を勇者にする事例が多くなっているそうですから、昔ながらの武勇が全てとする考え方は古いのかもしれませんね」

「あー、そう言われれば人間の文明って時代が進むと肉体の鍛錬をあまり必要としない方向で武力を高めちゃうことがほとんどだもんねー。そりゃ精神的軟弱者が勇者になる例も多くなるかぁ」

「……ところでメアリーさん、さっき『禁止ワード』言いかけてましたよね?」

「ギクッ、……み、見てたの?」

「そりゃラスボス戦が始まって魔王が倒されたらそれを復活させるのが私たちの仕事ですから、担当のメアリーさんの動向は勇者が魔王城に入った時点から魔法でチェックしてましたよ」

「あ~あれはその~、ついカッとなって口走っちゃったと言うか~……、お願い! オフレコで黙ってて!」

「手遅れですね。さっき戦う直前の様子を見てた時に課長さんも一緒でしたから」

「ファッキン!」

「メアリーさん、口調おかしくなってます。 あ、そういえば今回の新人研修の担当メアリーさんでしたよね? 新人さんもう待合室で待ってますよ」

「え? もう来てんの!? たしか来るのあと半月後じゃなかった?」

「早まったみたいですね。邪神様が人手不足を憂慮されてそうしたらしいです」

「研修する方の身にもなってほしいなぁ~、戻ったばっかでまだなんの準備もできてないよ?」

「それについてはご愁傷様です」

「はいはい、そう思うなら今度飲みにでも連れてってね~っと」

 邪神官にそう言うとメアリーベルは邪神教会を後にし、新人の居る待合室に向かった。
 
 コンコン、 

 「失礼しまーす」

 待合室の前に来たメアリーベルは軽くノックをすると言葉とともに扉を開けた。   

「は、はじめまして! 新人魔王のデスフレアです! どうぞ宜しくお願いします!」

「はいよろしく~、私があなたの担当になった魔王のメアリーベルよ。堅苦しいのパスだからメアリーでいいわ」

「あ、はい、これからご指導ご鞭撻宜しくお願いします。メアリー先輩!」

「……ま、しっかり付いてきなさい」

「はい!」

 (先輩…か、新人研修なんて、って思ってたけどこういう子ならまぁ悪くないかも)

「で、デスフレアだっけ? あんたこの仕事についてはどのくらい理解してんの?」

「えっと、この邪神様の興した邪神人材派遣会社に登録した魔王・魔族は希望される異世界の神々の元で様々な仕事をするって事くらいしかまだ知りません」

「あ~そこからか、」

 (最近は事前に業務内容調べないで応募してくるのも多くなったなぁ)

「良い? まず魔族の連中と魔王免許を持っている私たちは大きく業務内容が違ってくるわ。魔王免許、持ってるわよね?」

「あ、はい、この会社に応募したときに健康診断って言われてあれこれ調べられた後に渡されました。これですよね? でも私、地元だとただの魔力の強い魔族ってくらいでしたけど魔王名乗っちゃっていいんですか?」

「いいのいいの、ウチの会社の専属医はそういう力量と適正見極めるのは間違いないから。自信をもって頑張んなさい」

「は、はい!!」

「よろしい。で、続きだけど、ただの魔族の場合は助っ人なりなにかの手駒として、主に下働きとして呼び出されるのがほとんどだけど、魔王となるとそうはいかないわ。いうなれば魔王は社長業を任されるようなものよ」

「急にやっていく自信がなくなりました」

「はい、絶望のオーラはラスボス戦まで取っとくこと。詳しい説明はこれから仕事しながらになるけど、魔王としての仕事は主に世界の脅威となるべく君臨して魔物だったり、策謀だったりを準備して依頼してきた神々の用意した代行者、ほとんどは『勇者』と呼ばれる存在に倒されるまでが基本的な業務内容になるわ」

「なるほど、ということはさっきの社長業っていうのは…、」

「まぁ、勇者に倒されるまでは魔物生み出して繁殖させたり、魔王としての拠点作って維持管理したり、現地住民の国に宣戦布告して戦略や謀略めぐらしたり部下に指示出したりって下働きじゃ考えられないような面倒事がてんこ盛りだからね~」

「あうぅ、なおさらやってく自信がなくなってきました」

「初めはみんなあなたと同じ様な気持ちになるわよ、とにかく一つ一つ私が付いててあげるからこなせるようになりなさい。研修が終わるころには全部できるようにするから」

「が、頑張ります」

「その意気よ」

 メアリーの言葉に勇気づけられ、デスフレアはいきなり折れそうになっていた心をなんとか保って先輩の差し出した手を握った。そうして二人の研修が始まろうとしているところに……、


〈ピンポンパンポーン♪ 第三魔王課、メアリーベル係長、課長がお呼びです。社内におりましたらただちに第三魔王課までお越しください。繰り返します、第三…、〉

「あ! ヤバ、仕事から戻った報告まだだった! デスフレア! ちょっと一緒に来て!!」

「え…? あ、わぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 事情をよく理解できないうちに手を掴まれたデスフレアはメアリーに引っ張られ、文字通り飛ぶような(事実魔法で飛んでいる)スピードで待合室を後にした。




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