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おれの入れ替わり人生始まり1-1

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 俺は今日会社をクビになった、この世の中AIデジタル化が進み少人数での会社運営が可能となり、会社は大幅なリストラを実行したのだった。
「‥はっ、これからどうしよう、生活費もままならん、次の就職が決まるまでもっと切り詰めないとな」
有給休暇も取らずに早朝から深夜まで働いていた、カノジョもつくる暇なく、ボーナスもなく、残業手当もない、全て会社に捧げていたのだ。今でいうブラック企業だったのかも知れない。俺は俯いて歩いていた。
″キキキキキキキキキッ″「退いてっ」″ドン″″バシャン″俺は突然凄まじい衝撃を身に受けた。痛っ

「‥‥大丈夫ですか」
頭と耳がジシジンするが微かに声が聞こえて来る。
「あ、はい、(思う)え、あれ、この声、俺の声か、めちゃ甲高い」
甲高い声は咳払いをしてもなおらなかった。とにかく起き上がろうと手を地面に着こうとした時、俺の腰を覆うように広がってる織めの付いた布を挟んでしまう。ん?赤いスカート。あきらかに裾の長いスカートだった。なんとか起き上がると、目の前にママチャリが転がっている。前輪ハンドル部分には子供を乗せる為のものも装着されていた。
「良かった、気が付いたんですね」
幼稚園の制服を着た女の子が言う。見下ろす俺。
「ママ、大丈夫っ」
ビジネススーツを着たおっさんが子供ぽい喋り方で顔を近づけてきた。
「うあっ、近いっ、汗くさ、離れて、離れて」
俺はおっさんを押して離した。
「ごめんなさい、坂道で自転車のブレーキ急に壊れてちゃって、歩いていたあなたに激突してしまったんです」
幼稚園の女の子か申し訳なさそうに言う。かわいいなと思う俺。
「あ、そうなの、パパが運転してた自転車がぶつかったんだね、ちゃんとパパの代わり謝れるなんていい子だね、でも、大丈夫、なんともないよ安心して、、、あれっ、俺っ、なんで女もんのブラウス着てるんだ、んっ、おっ、胸に大きな膨らみが2つ、お、あ、俺の胸が丸くぱんぱんに膨らんでるぅ、なんだこれ、めちゃ揺れる揺れる」
俺は自分の胸の大きな膨らみを鷲掴みにしてしまっていた。
「あ、あのう、は、恥ずかしいですので、ここでは」
幼稚園の女の子がもじもじしながら言う。

自転車を起こし道の端に寄せてから幼稚園の女の子に詳しい事情を聞いた。要するに俺たちは自転車が激突した衝撃でお互いの体と精神が入れ替わってしまったらしいのだ。
「お、俺があなたになってるんですね」
甲高い女の声で俺が聞く。
「はい、そうです、私は娘の身体に入ってしまったようです」
幼稚園の女の子が言う。
「じゃあ、その男は俺ですか(思う)そういや、俺の顔してんな、全然気が付かなかった」
俺は思った。女って匂いに敏感っていうけど、俺チョー汗くせ、ガックシ、まあ、仕事帰りだから仕方ないけど。反対に自分の体からはフローラルのいい香りがしていた。奥様って感じの匂い。
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