拝啓、前世の私。今世では美醜逆転世界で男装しながら王子様の護衛騎士をすることになりました

奈風 花

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本編

第二話 グラットン 1

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   アイーシャは衝撃を受けていた。

   昔から·····いや、前世を思い出した5歳の頃から、ずっと周りの美的感覚に違和感を覚えていた。けれどそれは、国によって文化が違うように、種族によって差別があるように、この世界の美的感覚は前世とは少し違うんだな、くらいにしか思っていなかった。

   しかし、どうやらそれはすこしどころでは無かったらしい。

   他の美醜にあまり興味が無い自分でさえ思わず見蕩れてしまうほど美青年な王子殿下を、周りの生徒は見惚れるどころかむしろ·····蔑んでいる、ようにみえた。

   うーん。難しいな·····。
   一体、皆は殿下のどこにマイナスがあると見ているのだろう·····。

   これ以上考えるのは、何だか、これまで自分が信じていた物まで崩れそうで怖いな。

   明日から早速授業が始まるというのに、結局、入学式では殿下に話しかける事は出来なかった。

   両親が言うには殿下とは同じクラスの様だし、明日まで待てば良いのかも知れない、が·····。

「今日中に挨拶くらいするのが礼儀だよなぁ」

   アイーシャはそうぼやいて、学園の寮に向かった。

   寮にいなかったらどうしよう·····



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   当然と言うべきか否か、フランシア殿下は寮ではなく王宮に帰ったはずだと、寮母さん教えて貰った。

   アイーシャは仕方なく学校近くに借りている宿に戻ることにした。

   と、その時──。

「おい、そこの新入生」

   後ろから声をかけられた。

   誰·····?

   辺境から来たばかりのアイーシャには、この学園に知り合いと呼べる人なんていない。故に、アイーシャは警戒した。

「ルスキア・アイザックってやつ知らないか?」

   アイーシャが振り向くとそこには、緑色の髪をした見知らぬ人がいた。パッと見るに、上着の左ポケットに武器があるくらいで、後は特に何も持ってなさそうだった。

   ··········て、ルスキア・アイザックって、お兄様の名前·····いや、私の事じゃないか!

「知らないも何もそれは私の名前だ」

   アイーシャは警戒を解かないまま、話しかけてきた緑髪の青年に返事を返した。

「何? お前があのルスキア・アイザックなのか?」

「そうだ·····、私に何か用か?」

「ああ、殿下の事でちょっとな。今から少し時間はあるか?」

「この後は何も予定は無い」

「そうか、なら少し場所を移そう。ついてきてくれ」

   そう言って歩き出した緑髪の青年にアイーシャは黙って着いて行った。

   短剣は隠し持っているようだが、相手に敵意は無い。それに、殿下の事で話があると言うのなら、彼については心当たりがあった。

「お前、ラネール・グラットンか?」

   アイーシャは緑髪の青年の背中に問いかけた。しかし、目的地に着くまで話す気は無いのか返事はない。

   ラネール・グラットン。
   その名は事前にお父様から伝え聞いていた。今回、私と同様に殿下の側近として選ばれた男。確か公爵家の次男で緑色の髪と瞳を持つ美青年だとか。··········、コイツ、この顔で美青年だって褒めたたえているのか·····?(失礼)

   やはり、この世界の美的感覚は前世とは全く違うな。

   まあ、確かにゆるキャラ感はあるにはあるが。

   チビで、ぽちゃっとした体に、のっぺりとした顔。髪の毛は芸術的センスで固められて居て、あちこちの方向にツンとたっている。

   人のセンスにあまり興味の無いアイーシャでさえも、思わずツッコミを入れたくなるヘアスタイルだと言うのに、そのヘアスタイルが入学式で見たところ、全体で1割くらいいたのだから、この世界では普通なのかもしれないと黙っていた。

   さすが異世界と言うべきか。
   私が前世の美的感覚に引っ張られすぎているのか·····。

   いやしかし、それでも女生徒の方は特に目立ったヘアスタイルや奇抜なファッションをしている人はいなかった。

   基準が分から無いと不便だな·····。

「おい、そんなに見つめるな。お前のようなブス男に見つめられても、怖気が走るだけだ」

   いつの間にか目的地に着いていたらしい。振り返ったグラットンが難しい顔をしながら、自身を凝視していたアイーシャに気づき両腕をさすった。

「ああ、すまない」

「いやまあ、俺ほどの美青年は余りいないからな。気持ちは分からなくも無いが、気をつけてくれよ·····?
  ·····はぁ、まさかルスキア・アイザックがブス男だったとは·····、もう少しましな容姿を想像していたのに·····(小声)」

「·········」

   グラットンは笑顔で忠告をした後に、本人を目の前にして聞こえないように、小声で不満を漏らした。

   しかし、元々耳がいいアイーシャには全てが筒抜けだった。思わず真顔になったアイーシャにグラットンは気づかなかった。


   拝啓、前世の私。今世はそれなりに可愛い顔に生まれたと思っていましたが、どうやら勘違いをしていたようです。

   何だか、このことを深く考えると過去の自分の行動が怖そうなので、蓋をすることにます。

   今日から私は大人しくなろうと思います。



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