3 / 4
本編
第三話 グラットン 2
しおりを挟む「それで、殿下についての話とは何だ?」
人気のない小さな噴水広場に連れられて来たアイーシャは、近くのベンチに腰を下ろし、グラットンと隣合わせで座っていた。
「まあ、落ち着きたまえ、ルスキア・アイザック。まずは自己紹介といこうじゃないか」
「自己紹介か、分かった」
アイーシャが素直に頷くと、グラットンは少しだけホッとしたようだった。
「ではまずは俺から。俺の名前は、ラネール・グラットン。社交界ではそれなりに名が通っている筈なのだが·····、先程の反応を見るに、どうやらルスキア殿は俺の事を見たことは無かったようだね」
グラットンが、アイーシャに話しかけた時のことを思い出しながら話した。
「ああ·····それはすまない。なんせ、ずっと田舎に篭っていたからな。お前の事は勿論、ダイヤモンド学園に知人は一人も居ない」
アイーシャが軽く謝罪を口にすると、グラットンは少しだけ気の毒そうな顔でアイーシャを見つめた。
(確かにブス男に社交界はキツいだろうな。だが、その分、こいつは俺より、殿下のことを分かってやれるかもしれんな)
グラットンは気を使い話を変えた。
「ふむ。·····ルスキア領はそれなりに遠い。馬車では片道でも、王都に来るのには一ヶ月かかるだろう。しかし、それなら何故、ルスキア殿が護衛騎士に選ばれたのか·····」
「さあ、詳しい事は私にも分からん」
むしろ私も知りたい。何故、あの妹に役割を押し付けるようなクズ兄が殿下の護衛騎士なんかに指名されたのか。
これは、私がお父様に聞いても教えてくれなかったことだ。
「さて、次は私の番だな。 もう知っていると思うが、私の名前はアイー·····ザック。ルスキア・アイザックだ。よろしく」
アイーシャはつい本名を言ってしまいそうになったが、何食わぬ顔で立て直すと、何事も無かったかのように言いきり、友好の証に握手をしようと右手を出した。
お兄様と名前が似ていてよかったと初めて思った。
内心少しだけ焦ったアイーシャだった。
「こちらこそよろしく頼む」
そう言って、グラットンが差し出されたアイーシャの手を掴んだ。そして──手を離した瞬間に胸ポケットに忍ばせていた短剣を勢いよく抜いた。
「これは、なんの真似だろうか」
アイーシャはグラットンの右腕を掴みながら、にっこりと顔に笑みを貼り付けて言った。
一方でグラットンは何が起こったのか分からずにただ、驚いていた。
何故なら、アイーシャの動きは一瞬で目に見えなかったからだ。グラットンは完全にアイーシャを油断させて不意をついたつもりだった。しかし·····。
「いや、·····突然すまなかった。それにしても、これは、驚いたな。まさか、これ程実力があるとは·····。成程、だからルスキア殿が選ばれたのか」
「一体なんの話しだ?」
「ふむ。まあ一言で言えば、ルスキア殿の事を試させてもらった」
「···············」
「そう警戒しないでくれ。それと、そろそろ腕が痛い」
確かにグラットンから殺気は感じなかった。この短剣も見たところ実用性はあまりないいわゆるおもちゃとそう変わらないものだろう·····。
アイーシャはグラットンの右腕を素直に離した。
────────────────────────────
それからアイーシャはグラットンに説明を求めた。
グラットン曰く───
「そんなの実力を見るために決まっているだろう」
との事。
「ルスキア殿も知っての通り、王家の方々の護衛騎士は誰にでもなれる様なものでは無い。だがしかし、フランシア殿下は例外だ。あまり大きな声では言い難いが、殿下は容姿に致命的な問題があるだろう? そのせいで、フランシア殿下の護衛騎士は志願すれば誰でも慣れると噂まであるくらいだ」
「致命的な問題·····?」
「ああ。そうだ。あの容姿には酷く同情するよ。この俺でさえ、最初にあった時は固まって動けなかった。まさか、あれ程·····」
そのままグラットンの長話でも始まりそうになったその時、ゴーン、ゴーンと街の鐘が鳴り響いた。
「と、もう少し話をしたかったが、時間が来てしまったようだ。付き合って貰って悪かったね。明日になる前に、周りの側近に選ばれたもの達の人となりを見てみたかったんだが、まあ、君には中々期待出来そうだ」
グラットンはそう言いながら笑顔でベンチから立ち上がった。アイーシャもそれに倣い立ち上がる。
「期待に応えきれるかは分からないが、善処はしよう」
アイーシャはグラットンとは仲良くなれそうだと思った。と、それと同時に、明日からの学園生活·····殿下の側近としての立ち位置への不安が少しだけ解消された。
「うむ。ああ、そうだ言い忘れていたが、俺は留年していてね。──実は君より一つ年上だ。つまり、分かるね·····?」
グラットンが今まで一番濃い笑顔でアイーシャに語りかけた。
てっきり同い年だと思っていたアイーシャは、先程までの自身の態度を思い出しバツの悪そうな顔をした。
「··········すみません、グラットンさん」
「いやいや、ずっとお前呼ばわりされていた事は気にしていない。俺は大人だからな」
そう言いつつも、グラットンの笑顔の圧は変わらない。
拝啓、前世の私。
癖とは怖いもので、私は初対面の人にタメ口で話していました。どうやら、そちらに敬語を置き忘れていたようです。
フランシア殿下に会う前に気づけて良かったです。
────────────────────────────
ここまで読んでくださりありがとうございます!!!作者のやる気に繋がりますので、良ければ、お気に入り登録、しおり、コメントなどよろしくお願いします!!!(*' ')*, ,)✨ペコリ
3
あなたにおすすめの小説
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~
キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。
友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。
人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。
その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。
そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。
婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。
もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。
婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。
すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。
新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。
人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。
これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
転生先は男女比50:1の世界!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。
「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」
デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・
どうなる!?学園生活!!
転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。
aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。
ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・
4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。
それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、
生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり
どんどんヤンデレ男になっていき・・・・
ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡
何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。
転生したら没落寸前だったので、お弁当屋さんになろうと思います。
皐月めい
恋愛
「婚約を破棄してほしい」
そう言われた瞬間、前世の記憶を思い出した私。
前世社畜だった私は伯爵令嬢に生まれ変わったラッキーガール……と思いきや。
父が亡くなり、母は倒れて、我が伯爵家にはとんでもない借金が残され、一年後には爵位も取り消し、七年婚約していた婚約者から婚約まで破棄された。最悪だよ。
使用人は解雇し、平民になる準備を始めようとしたのだけれど。
え、塊肉を切るところから料理が始まるとか正気ですか……?
その上デリバリーとテイクアウトがない世界で生きていける自信がないんだけど……この国のズボラはどうしてるの……?
あ、お弁当屋さんを作ればいいんだ!
能天気な転生令嬢が、自分の騎士とお弁当屋さんを立ち上げて幸せになるまでの話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる