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§04 根濁してマロウブルー
無双放棄アクティブレスト
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「……」
「響くん、まだですよ」
「……ああ……」
「まだ終わっていません。目は閉ざさない」
「閉じてねえ……閉じては……」
人型になった道路道影に小脇に抱えられて歩かされる。山道とはいえ、あの焔が消えてしまえばさほどの距離でもない。引きずられながらでもすぐに着いてしまう。
「者共、響くんを連れてきましたよ。奴はどこに?」
「……ここだ」
いつ現場に合流したのか、小折春樹の肉声を耳に、響はぼんやりと頭を上げる。
黒い和服を着た見知らぬ男が1人、赤い糸に絡め取られながら、深い土下座で這いつくばっていた。
「……ああ、あなた様が賢木響様でございますね。……ありがとうございます……」
「っ……」
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
「っ何、だよ、あんた」
目を閉ざしていないのだから当然見える。男の傍らに置かれた不気味な弓は、あの矢と同じ色だ。弦も糸を巻く所も、全て金属でできているように見える。
「どうか無作法をお許しください。わたくしは御降が分家、密復家の疾空と申しました。しかしたった今密復から絶縁を受けた身でありますれば、何者でもありません」
「私は認めておらん。貴様は逃がさんぞ」
小折は男の後ろで顔をしかめている。
「滅相もございません。わたくしの一存なれば、家にはどうぞお咎めなきように……」
「痴れ事を! この弓矢の一欠片の呪術さえ貴様独りでは編めまい。いや、貴様らのやり方で言えば、『溶かす』か」
「溶かす……」
小折は響に一瞬だけ目をくれた。
「少なくとも100人。一族総出で、呪いを溶かし込み続けた金属だ。でなければひと触れで陰陽術を解くような荒業が成せるものか」
「……おっしゃる通りです、御降様。もうごまかしは致しません……我が一族の、悲願が成った今となっては」
男は背後の小折から響へと顔を向けた。
「これも全て、響様のお陰です」
「な……」
言葉は出てこない。確実に、この男が矢を射り、ミツダマを粉々に砕いたのに。
代わりに小折春樹が、手に持った紙屑のようなものを伸ばして畳みながら問いかける。
「ミツダマ……密復蘇込が新陰陽寮に『式紙』として差し渡されたのは、両者同意であったと聞いている。御降立会いの元、当時の当主が弟、蘇込自身が望んだと。異議はあるか」
「ございます。有り体に申し上げまして、我らは新陰陽寮に脅しを受けておりました。元より我らが鍛治の神、目二御神は、天岩戸を開く力を持たぬ神。天の秩序に紐付く陰陽の気を散らす神です。目二御の力を強く持つ蘇込様が、同時に陰陽術を受け入れるお身体にお産まれになったのはむごい事でした。かの御代の天文博士は、この話呑まねば一族を根切る、そう蘇込様に迫ったのです」
何を話しているものか、響にはもう分からない。みつまたそごみ。その名が、この握りしめた手にかすかに残る砂のミツダマの本名だということ以外。
「蘇込様は、まだ五つにもならない甥にもまた、微かに式紙たる素質がある事を見抜いておられました。世継ぎとなる兄の子を守る為にも、自らを差し出すしかなかったのです。これを合意と呼べましょうか」
「……それが真とすれば当時の新陰陽寮に偽りがあった事になるな。しかし、貴様らの犯した罪は消えんぞ」
「存じております。しかし、蘇込様を失った我々は長く考え、決めました。御降様に赦されず、今度は本当に一族根絶やしの罰を受ける事になろうとも、蘇込様の無念を晴らし、あの賀茂が一族への怨みを晴らすと」
「……そうか。当時の天文博士は賀茂家の者だったか」
「はい。十師陽行に持ち込まれたる全ての人式神……霊鬼を壊すつもりでしたが、我が微力では無理だと思うてもおりました。……まさか響様が成し遂げて下さるとは」
「……」
「密復疾空。他に言う事があるだろう」
「はい、ございます。……響様」
聞きたくない。耳は塞げない。
見たくない。目は閉じられない。
「蘇込様の最期の遺言は、式神の霊鬼でも新陰陽寮の書物でもなく、いつの日か、人間として死を全うする事でした。……我々だけでは新陰陽寮も御降様も欺けませんでした。我々では蘇込様の依代たるご遺体を集め、その術を継いで、いちどきに解く機会を作ることは不可能でした。どうか……」
拒絶したいのに目は閉じない。
「どうか、感謝をお受け取りください。ありがとうございます……」
「……とら……」
その文字が口から漏れただけで伝わったと、気づくのには時間が掛かった。その間にもう一度、繰り返し終えていた。
「……絶対に、受け取らねえ……」
疾空の表情の動きも、全て目に入ってから鈍く消化されていく。
「……言うべきは感謝では無い上に、返事を求めるとは尚奸悪だな」
小折が手にしていた紙をパッと手放すと、パタリ、と宙を舞い、賀茂瓶児の姿になって着地した。
「賀茂天文博士。密復と新陰陽寮の約定については、後日検める事としたいが宜しいか」
「……よろしゅう、頼むわ。三又に拘うとる内に、こちらもわっやくちゃになっとる……」
「そちらで何が?」
「……それも後。そろそろお出ましやろう……」
「何?」
「待っても来ないから来たよ、春樹」
「!?」
小折春樹は身体を震わせた。
「ゆが……桃音、どうしてここに」
「あなたが待っても来ないから」
「待ち合わせ?」
「お母様のお見舞いのために今日は試験休んだんだよね? まだなら、これからわたしと行くの」
クラスメートの湯上桃音だ。小折いわく、許嫁。日傘を差し、頬を膨らませて小折を見上げている。
「あれは、理由無く休む事は出来ない故の方便で」
「お義母様に会うの楽しみだな、わたし。ね?」
弟の教室に忘れ物でも届けに来たような咎め方。異様な光景に目をくれもしない。
「……まだだ。まだこの場の話は終わっていない」
「うん、急いでね。もうじゅうぶん待ったよ。ひびき君はまたパフェ食べに行こうね」
誰からだろう、「唯神……」と呟きが漏れた。
「っああ……ひとまずだ。ここに宣言する。十師陽行はここに終了した! 陰陽師よ、去るが良い。全ては天文博士賀茂瓶児と大針名代御降春樹の名の下に」
空気が変わった。空を舞っていた鳥が紙切れになって次々と落ちてくる。
「……賢木響。何があれ、お前を新陰陽寮に利用させる事はない。それは約束しよう。しかしそれ以上は、この場では何もさせるわけにいかない。安易な謝罪一つもしてやれん。……理解してくれるか」
どうでもいい。響は頷く。強く握っていても手は冷たい。
「今、私がお前に出来る最良は、お前をすぐに帰す事だけだ。……必要な治療や費用があればいくらでも請求しろ。話は明日、違うな、せめて試験後だ。……芽咲万朶と共に家に送らせる。狩留羅、車を」
バンダちゃんが、よろよろと響の隣に立った。
「響っち……手を……」
手をそっと開く。指が掌に乗せられた。バンダちゃんは丁寧に小さなミツダマの欠片を引き寄せて紙片に集め、一粒も残さずに小瓶に入れる。蓋を強く閉める。
「……ミツダマは……」
「今は何も言いたくないっす」
首を振られる。手を強く握られる。
確かに何も言わずとも十分だった。
……もう、ミツダマはどうやっても助からない。十分だ。
「…………おーい響。生きてるか」
「……千早」
「どうしたんだよ、昨日は試験時間残して教室飛び出してったと思ったら今日は少しも動かねーじゃん。手止まってる」
試験は終わっていない。それはそうだ。
「千早はどうなんだよ」
「俺? どうせ見ても漬け焼き出来ないから良いんだよ。白焼きで食う」
「……」
付け焼き刃はタレを漬け込んで焼かない、と言う余裕もない。
と、隣のクラスの女子が千早に話しかけてきた。
「ねえちっはー、水俣に連絡つくー? アイツまだ席来てないんだけど」
「ヤバッ。試験10分前って新記録じゃね?」
「……みつまた?」
「あ? 響お前、水俣と仲良かった?」
「……電話番号」
「ん?」
「電話番号知ってるのか」
「え? ああ、まあ……」
「今すぐ掛けて電話貸してくれ、千早」
「ちょっ、響?」
奪い取るように千早から電話を取り、響はトイレに駆け込んだ。
「出てくれ……」
『……何、千早』
「!」
『じゃないな。……賢木響様ですか?』
「様付けで呼ばれる筋合いは無え」
聞いていなかったが男子だ。顔も思い浮かばないが、不気味な反応で分かる。密復家だ。小折と御降のように呪術の家柄と苗字にわずかにズレがあるタイプの。
『……一方的なのは分かってるけど、こちらには筋があるんです』
「そこは興味無い。あんた、死ぬなよ」
『……』
「死んで責任取る気だから迷惑掛けていいみたいなの本当やめてくれ。ミツダマはそんな事、いや、違う……うまく言えねえ、迷惑だからやめろじゃなくて」
『続けてください』
思いがけず素直な反応があった。
『蘇込様の事を直接知るのは、父や私ではなく響様です。別人の記憶を植え付けられていたとしても、狂乱に呑まれていても。蘇込様は、何と?』
「……」
ゆるさない。騙された。信じてたのに。僕は悪くない。びゃく。
「……自分の方が大人だったのに、全部背負わせたって」
『!』
「あれ、ミツダマの甥? の話してたんじゃないか」
守ろうとした一族と幼子が、そのせいで怨みに囚われた事を、はっきり知っていたらミツダマは何と言っただろう。やや
「記憶がどうなのか知らねえけど、気弱で声小せえくせにパニクると大声で騒いでたよ。褒め上手っつーか、何でも喜んでくれて。今度旅行に行くって約束、してて、島がいいって聞いた」
『島……密復家は代々、離島に居を構えています』
「そこか……」
『……ぜひ、今度、いらして下さい。芽咲万朶嬢も共に』
「あんたが案内すんなら」
『では、死ねませんね』
電話は静かに切れた。
「あっ響、もう試験始まるぞ! 水俣何だって?」
「……えー、あー、休むっぽい?」
「マジかよやりやがったな……伝説入りだよ」
「はは……安い伝説だな……」
「……失礼しました。少し……話が変わりまして」
「賢木響からの電話だろう。大方察する。念を押すが私は貴様の勝手な自害など容認せん、密復家当主」
「……かしこまりました。しかし、新陰陽寮は何と?」
「ああ……土御門在朔より返答があった。咎めはあるが、密復家を過大なる罪に問うつもりは無いと」
「さようですか」
「落ち着いているな。……やはり組んでいたか、貴様ら」
「……ふう。九師もおって、誰もわたしを助けに来ぃひんと思たら、まさか密復と組んどったとはかなわんなぁ。どういう条件で裏切りよったん、青闇」
「私は元々新陰陽寮にお仕えしておりますので」
賀茂瓶児は居で深く扇子に顔を沈めている。青闇と呼ばれた式神は涼しい狐顔で冷房の温度設定を少し下げた。
「よう言うわ。……何、その電話」
「在朔様です」
『電話口からやっほー、瓶~児お兄はん。元気出しいや~』
「……気色悪ぃ」
『酷くない? じゃ楽な口調で話しちゃうぜ』
「それも素とちゃうやろ……」
『小学生のアイデンティティに正解なんて無いよ。だぜ』
ケラケラと電話口で笑うこれは、弟でも義弟でもない。なる予定もない。賀茂瓶児は電話口から耳を少し離す。
『ねえねえ、そんなに親父って古臭く見える?』
「……何がや」
『新陰陽寮なんてもはや紛い物だけどさ、僕らってばガタガタな陰陽のバランス取ってなんとか立て直してきたじゃん。常に凶星がどこかで見てる宇宙相手にさ』
「……何も、古いとは思うてへん。臆病者言うとるだけや」
『わっはっは!』
「けったいな笑い方すな」
『悪い悪いおかしくって。だって瓶児兄こそ本質は旧態依然の化っけ物じゃんか。目隠し十字架男より前も自分も見えてないなら、僕がその重た~い瞼抉ってあげてもいいぜ。そしたらその分肩も軽くなるだろ――にゃろ?』
「おのれっ……」
『……ぶっちゃけ榊の式神は、まだ瓶児兄には扱えない』
「っ!」
『だろ。せいぜい10年後とかだぜ。知天命年はかかるって言われるレベルの奴なんだから大っ天才に変わりないじゃん』
「……土御門のぼんにはわたしらの事なんと分からんわ」
『えー。これでも僕、兄さんのためを想ってやってるんだぜ。後々僕の優しさに震える日が来るよ。だから今は大人しく敗北を噛み締めてろだぜ』
「……切りよった……」
「手心の無い……」
「……はあ。青闇ぃ、おのれどうするん?」
「次の指示が出るまでこれまで通り瓶児様に尽くしますが?」
「はぁー……最悪や……」
「……影、話がある」
「私もです、響くん。今日が試験最終日でしたね? 全試験の自己採点の結果を聞いてから話しましょう」
「もう学校で採点してきた。多分全教科赤点は回避してる。歴史がギリ宿題レポートあるかもしれないけど」
「頑張りましたね。……それでは話しましょう」
響はゆっくり息をつく。ミツダマ、が入った瓶はバンダちゃんに渡している。安全だ。
「あの時、俺の中から出てきたよな、あんた」
心臓のあたりからだ。いつものようにどこからか這い出てくるのとは明らかに違った。
「あれは実に腹が立ちましたね。小癪な呪いだ」
……半ば予想通り、影は平然とティーカップを揺らした。
「あの時のきみは半端に受け入れた式神術と、それを強引に壊す呪いが混ざってリスクの高い状態でした。単なる蘇生や修復では余計な物が混ざり込む可能性がありました。それで引き剥がしましたが」
「そんな事聞きたいんじゃない」
「では何を?」
「……俺の中に、いつも居たのか?」
「きみは苗床でもあると前に言いました。契約の際に、私の幾らかをきみの最奥に埋め込んでいます。きみの恐怖症が反応しないよう、うまくスケープゴートが馴染むように」
そうか。
「これまで妙なものも感じなかったでしょう? きみに急な危害が及ばなければ何もしませんよ。私と全ての感覚を共有しているわけでもない――」
「動けたよな」
「?」
「あんたがもっと早く動いてたら、ミツダマに矢が刺さるのは止められた」
影はカップから手を離した。
「はい。そうですね」
「……」
「ですが、それでは私しか知らない奥の手、きみとの契約の内容が他の者にいくらか漏れてしまいます。あの時点の手前まではきみは自力で身を守れた。極力隠したかったのですが、カードを切らされました」
「ふざけんな」
「……」
「助けたかったんだよ。あんたが乗り気じゃない事くらい知ってたけど、あんたも……少し協力してくれたら、あと少しで、助けられたじゃねえか!」
「奥の手というのはそうやって出すものではない」
影は、……冷たい手で響の肩を押さえた。
「あんな事に使うためのものではありません」
「あんな事って……!」
「私が隠していたのが悪いように言いますが、きみだって隠し事をしているでしょう」
「あ? んな事言ってな……」
トン、と軽く押される。それだけで緊張している身体が揺らぐわけもないのに、響の全身は崩れ落ちる。
「……、あぁあ……」
倒れた身体を掴み上げられる。
「大した秘密だ! 全身に綾取術など勝手に入れて。いい腕ですが、分かって見れば分かりやすい。きみがずっと私や植物への恐怖を隠しているのは明瞭です。ああ、そこが陰陽術の対抗紋様ですか」
「んっ……! や……」
気づかれないように偽装した、なんて小折は言っていただろうか?
……全部、バレているらしい。違う、バレていた。
「勝手にこんな事まで……きみには貞操観念が無いんですか?」
吐く寸前まで振り回されたような違和感。それでいて、ただそう感じるように電流でも流されているような快感。
影に肩から引きずり出された、光るレースが探られ、引き出されていくたびに響を置き去りに勝手に刺激が強まる。動けない。糸に触れられているから。身をよじることも出来ない。
「ぁぁぁぁぁっ……」」
気が狂う、方がマシだ。
「随分御降春樹に気に入られたようだ。コソコソと身体を許して。私に何か言えた義理ですか? これが」
「や、めっ……」
「ああ酷い…………ここに至っては糸が一本引き抜かれている。こんな芸当があの小童に? 何のために? 響くん、これは……おや」
……もう、目を開けていられない。
「尋問は後にしますか。お仕置きも。どうせ夏季休暇は部屋から出しませんから」
「冗、談……」
「私は、怒っていますからね。きみの思うよりもずっと」
響は意識を手放した。
根濁してマロウブルー 了
「響くん、まだですよ」
「……ああ……」
「まだ終わっていません。目は閉ざさない」
「閉じてねえ……閉じては……」
人型になった道路道影に小脇に抱えられて歩かされる。山道とはいえ、あの焔が消えてしまえばさほどの距離でもない。引きずられながらでもすぐに着いてしまう。
「者共、響くんを連れてきましたよ。奴はどこに?」
「……ここだ」
いつ現場に合流したのか、小折春樹の肉声を耳に、響はぼんやりと頭を上げる。
黒い和服を着た見知らぬ男が1人、赤い糸に絡め取られながら、深い土下座で這いつくばっていた。
「……ああ、あなた様が賢木響様でございますね。……ありがとうございます……」
「っ……」
「ありがとうございます、ありがとうございます……」
「っ何、だよ、あんた」
目を閉ざしていないのだから当然見える。男の傍らに置かれた不気味な弓は、あの矢と同じ色だ。弦も糸を巻く所も、全て金属でできているように見える。
「どうか無作法をお許しください。わたくしは御降が分家、密復家の疾空と申しました。しかしたった今密復から絶縁を受けた身でありますれば、何者でもありません」
「私は認めておらん。貴様は逃がさんぞ」
小折は男の後ろで顔をしかめている。
「滅相もございません。わたくしの一存なれば、家にはどうぞお咎めなきように……」
「痴れ事を! この弓矢の一欠片の呪術さえ貴様独りでは編めまい。いや、貴様らのやり方で言えば、『溶かす』か」
「溶かす……」
小折は響に一瞬だけ目をくれた。
「少なくとも100人。一族総出で、呪いを溶かし込み続けた金属だ。でなければひと触れで陰陽術を解くような荒業が成せるものか」
「……おっしゃる通りです、御降様。もうごまかしは致しません……我が一族の、悲願が成った今となっては」
男は背後の小折から響へと顔を向けた。
「これも全て、響様のお陰です」
「な……」
言葉は出てこない。確実に、この男が矢を射り、ミツダマを粉々に砕いたのに。
代わりに小折春樹が、手に持った紙屑のようなものを伸ばして畳みながら問いかける。
「ミツダマ……密復蘇込が新陰陽寮に『式紙』として差し渡されたのは、両者同意であったと聞いている。御降立会いの元、当時の当主が弟、蘇込自身が望んだと。異議はあるか」
「ございます。有り体に申し上げまして、我らは新陰陽寮に脅しを受けておりました。元より我らが鍛治の神、目二御神は、天岩戸を開く力を持たぬ神。天の秩序に紐付く陰陽の気を散らす神です。目二御の力を強く持つ蘇込様が、同時に陰陽術を受け入れるお身体にお産まれになったのはむごい事でした。かの御代の天文博士は、この話呑まねば一族を根切る、そう蘇込様に迫ったのです」
何を話しているものか、響にはもう分からない。みつまたそごみ。その名が、この握りしめた手にかすかに残る砂のミツダマの本名だということ以外。
「蘇込様は、まだ五つにもならない甥にもまた、微かに式紙たる素質がある事を見抜いておられました。世継ぎとなる兄の子を守る為にも、自らを差し出すしかなかったのです。これを合意と呼べましょうか」
「……それが真とすれば当時の新陰陽寮に偽りがあった事になるな。しかし、貴様らの犯した罪は消えんぞ」
「存じております。しかし、蘇込様を失った我々は長く考え、決めました。御降様に赦されず、今度は本当に一族根絶やしの罰を受ける事になろうとも、蘇込様の無念を晴らし、あの賀茂が一族への怨みを晴らすと」
「……そうか。当時の天文博士は賀茂家の者だったか」
「はい。十師陽行に持ち込まれたる全ての人式神……霊鬼を壊すつもりでしたが、我が微力では無理だと思うてもおりました。……まさか響様が成し遂げて下さるとは」
「……」
「密復疾空。他に言う事があるだろう」
「はい、ございます。……響様」
聞きたくない。耳は塞げない。
見たくない。目は閉じられない。
「蘇込様の最期の遺言は、式神の霊鬼でも新陰陽寮の書物でもなく、いつの日か、人間として死を全うする事でした。……我々だけでは新陰陽寮も御降様も欺けませんでした。我々では蘇込様の依代たるご遺体を集め、その術を継いで、いちどきに解く機会を作ることは不可能でした。どうか……」
拒絶したいのに目は閉じない。
「どうか、感謝をお受け取りください。ありがとうございます……」
「……とら……」
その文字が口から漏れただけで伝わったと、気づくのには時間が掛かった。その間にもう一度、繰り返し終えていた。
「……絶対に、受け取らねえ……」
疾空の表情の動きも、全て目に入ってから鈍く消化されていく。
「……言うべきは感謝では無い上に、返事を求めるとは尚奸悪だな」
小折が手にしていた紙をパッと手放すと、パタリ、と宙を舞い、賀茂瓶児の姿になって着地した。
「賀茂天文博士。密復と新陰陽寮の約定については、後日検める事としたいが宜しいか」
「……よろしゅう、頼むわ。三又に拘うとる内に、こちらもわっやくちゃになっとる……」
「そちらで何が?」
「……それも後。そろそろお出ましやろう……」
「何?」
「待っても来ないから来たよ、春樹」
「!?」
小折春樹は身体を震わせた。
「ゆが……桃音、どうしてここに」
「あなたが待っても来ないから」
「待ち合わせ?」
「お母様のお見舞いのために今日は試験休んだんだよね? まだなら、これからわたしと行くの」
クラスメートの湯上桃音だ。小折いわく、許嫁。日傘を差し、頬を膨らませて小折を見上げている。
「あれは、理由無く休む事は出来ない故の方便で」
「お義母様に会うの楽しみだな、わたし。ね?」
弟の教室に忘れ物でも届けに来たような咎め方。異様な光景に目をくれもしない。
「……まだだ。まだこの場の話は終わっていない」
「うん、急いでね。もうじゅうぶん待ったよ。ひびき君はまたパフェ食べに行こうね」
誰からだろう、「唯神……」と呟きが漏れた。
「っああ……ひとまずだ。ここに宣言する。十師陽行はここに終了した! 陰陽師よ、去るが良い。全ては天文博士賀茂瓶児と大針名代御降春樹の名の下に」
空気が変わった。空を舞っていた鳥が紙切れになって次々と落ちてくる。
「……賢木響。何があれ、お前を新陰陽寮に利用させる事はない。それは約束しよう。しかしそれ以上は、この場では何もさせるわけにいかない。安易な謝罪一つもしてやれん。……理解してくれるか」
どうでもいい。響は頷く。強く握っていても手は冷たい。
「今、私がお前に出来る最良は、お前をすぐに帰す事だけだ。……必要な治療や費用があればいくらでも請求しろ。話は明日、違うな、せめて試験後だ。……芽咲万朶と共に家に送らせる。狩留羅、車を」
バンダちゃんが、よろよろと響の隣に立った。
「響っち……手を……」
手をそっと開く。指が掌に乗せられた。バンダちゃんは丁寧に小さなミツダマの欠片を引き寄せて紙片に集め、一粒も残さずに小瓶に入れる。蓋を強く閉める。
「……ミツダマは……」
「今は何も言いたくないっす」
首を振られる。手を強く握られる。
確かに何も言わずとも十分だった。
……もう、ミツダマはどうやっても助からない。十分だ。
「…………おーい響。生きてるか」
「……千早」
「どうしたんだよ、昨日は試験時間残して教室飛び出してったと思ったら今日は少しも動かねーじゃん。手止まってる」
試験は終わっていない。それはそうだ。
「千早はどうなんだよ」
「俺? どうせ見ても漬け焼き出来ないから良いんだよ。白焼きで食う」
「……」
付け焼き刃はタレを漬け込んで焼かない、と言う余裕もない。
と、隣のクラスの女子が千早に話しかけてきた。
「ねえちっはー、水俣に連絡つくー? アイツまだ席来てないんだけど」
「ヤバッ。試験10分前って新記録じゃね?」
「……みつまた?」
「あ? 響お前、水俣と仲良かった?」
「……電話番号」
「ん?」
「電話番号知ってるのか」
「え? ああ、まあ……」
「今すぐ掛けて電話貸してくれ、千早」
「ちょっ、響?」
奪い取るように千早から電話を取り、響はトイレに駆け込んだ。
「出てくれ……」
『……何、千早』
「!」
『じゃないな。……賢木響様ですか?』
「様付けで呼ばれる筋合いは無え」
聞いていなかったが男子だ。顔も思い浮かばないが、不気味な反応で分かる。密復家だ。小折と御降のように呪術の家柄と苗字にわずかにズレがあるタイプの。
『……一方的なのは分かってるけど、こちらには筋があるんです』
「そこは興味無い。あんた、死ぬなよ」
『……』
「死んで責任取る気だから迷惑掛けていいみたいなの本当やめてくれ。ミツダマはそんな事、いや、違う……うまく言えねえ、迷惑だからやめろじゃなくて」
『続けてください』
思いがけず素直な反応があった。
『蘇込様の事を直接知るのは、父や私ではなく響様です。別人の記憶を植え付けられていたとしても、狂乱に呑まれていても。蘇込様は、何と?』
「……」
ゆるさない。騙された。信じてたのに。僕は悪くない。びゃく。
「……自分の方が大人だったのに、全部背負わせたって」
『!』
「あれ、ミツダマの甥? の話してたんじゃないか」
守ろうとした一族と幼子が、そのせいで怨みに囚われた事を、はっきり知っていたらミツダマは何と言っただろう。やや
「記憶がどうなのか知らねえけど、気弱で声小せえくせにパニクると大声で騒いでたよ。褒め上手っつーか、何でも喜んでくれて。今度旅行に行くって約束、してて、島がいいって聞いた」
『島……密復家は代々、離島に居を構えています』
「そこか……」
『……ぜひ、今度、いらして下さい。芽咲万朶嬢も共に』
「あんたが案内すんなら」
『では、死ねませんね』
電話は静かに切れた。
「あっ響、もう試験始まるぞ! 水俣何だって?」
「……えー、あー、休むっぽい?」
「マジかよやりやがったな……伝説入りだよ」
「はは……安い伝説だな……」
「……失礼しました。少し……話が変わりまして」
「賢木響からの電話だろう。大方察する。念を押すが私は貴様の勝手な自害など容認せん、密復家当主」
「……かしこまりました。しかし、新陰陽寮は何と?」
「ああ……土御門在朔より返答があった。咎めはあるが、密復家を過大なる罪に問うつもりは無いと」
「さようですか」
「落ち着いているな。……やはり組んでいたか、貴様ら」
「……ふう。九師もおって、誰もわたしを助けに来ぃひんと思たら、まさか密復と組んどったとはかなわんなぁ。どういう条件で裏切りよったん、青闇」
「私は元々新陰陽寮にお仕えしておりますので」
賀茂瓶児は居で深く扇子に顔を沈めている。青闇と呼ばれた式神は涼しい狐顔で冷房の温度設定を少し下げた。
「よう言うわ。……何、その電話」
「在朔様です」
『電話口からやっほー、瓶~児お兄はん。元気出しいや~』
「……気色悪ぃ」
『酷くない? じゃ楽な口調で話しちゃうぜ』
「それも素とちゃうやろ……」
『小学生のアイデンティティに正解なんて無いよ。だぜ』
ケラケラと電話口で笑うこれは、弟でも義弟でもない。なる予定もない。賀茂瓶児は電話口から耳を少し離す。
『ねえねえ、そんなに親父って古臭く見える?』
「……何がや」
『新陰陽寮なんてもはや紛い物だけどさ、僕らってばガタガタな陰陽のバランス取ってなんとか立て直してきたじゃん。常に凶星がどこかで見てる宇宙相手にさ』
「……何も、古いとは思うてへん。臆病者言うとるだけや」
『わっはっは!』
「けったいな笑い方すな」
『悪い悪いおかしくって。だって瓶児兄こそ本質は旧態依然の化っけ物じゃんか。目隠し十字架男より前も自分も見えてないなら、僕がその重た~い瞼抉ってあげてもいいぜ。そしたらその分肩も軽くなるだろ――にゃろ?』
「おのれっ……」
『……ぶっちゃけ榊の式神は、まだ瓶児兄には扱えない』
「っ!」
『だろ。せいぜい10年後とかだぜ。知天命年はかかるって言われるレベルの奴なんだから大っ天才に変わりないじゃん』
「……土御門のぼんにはわたしらの事なんと分からんわ」
『えー。これでも僕、兄さんのためを想ってやってるんだぜ。後々僕の優しさに震える日が来るよ。だから今は大人しく敗北を噛み締めてろだぜ』
「……切りよった……」
「手心の無い……」
「……はあ。青闇ぃ、おのれどうするん?」
「次の指示が出るまでこれまで通り瓶児様に尽くしますが?」
「はぁー……最悪や……」
「……影、話がある」
「私もです、響くん。今日が試験最終日でしたね? 全試験の自己採点の結果を聞いてから話しましょう」
「もう学校で採点してきた。多分全教科赤点は回避してる。歴史がギリ宿題レポートあるかもしれないけど」
「頑張りましたね。……それでは話しましょう」
響はゆっくり息をつく。ミツダマ、が入った瓶はバンダちゃんに渡している。安全だ。
「あの時、俺の中から出てきたよな、あんた」
心臓のあたりからだ。いつものようにどこからか這い出てくるのとは明らかに違った。
「あれは実に腹が立ちましたね。小癪な呪いだ」
……半ば予想通り、影は平然とティーカップを揺らした。
「あの時のきみは半端に受け入れた式神術と、それを強引に壊す呪いが混ざってリスクの高い状態でした。単なる蘇生や修復では余計な物が混ざり込む可能性がありました。それで引き剥がしましたが」
「そんな事聞きたいんじゃない」
「では何を?」
「……俺の中に、いつも居たのか?」
「きみは苗床でもあると前に言いました。契約の際に、私の幾らかをきみの最奥に埋め込んでいます。きみの恐怖症が反応しないよう、うまくスケープゴートが馴染むように」
そうか。
「これまで妙なものも感じなかったでしょう? きみに急な危害が及ばなければ何もしませんよ。私と全ての感覚を共有しているわけでもない――」
「動けたよな」
「?」
「あんたがもっと早く動いてたら、ミツダマに矢が刺さるのは止められた」
影はカップから手を離した。
「はい。そうですね」
「……」
「ですが、それでは私しか知らない奥の手、きみとの契約の内容が他の者にいくらか漏れてしまいます。あの時点の手前まではきみは自力で身を守れた。極力隠したかったのですが、カードを切らされました」
「ふざけんな」
「……」
「助けたかったんだよ。あんたが乗り気じゃない事くらい知ってたけど、あんたも……少し協力してくれたら、あと少しで、助けられたじゃねえか!」
「奥の手というのはそうやって出すものではない」
影は、……冷たい手で響の肩を押さえた。
「あんな事に使うためのものではありません」
「あんな事って……!」
「私が隠していたのが悪いように言いますが、きみだって隠し事をしているでしょう」
「あ? んな事言ってな……」
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「……、あぁあ……」
倒れた身体を掴み上げられる。
「大した秘密だ! 全身に綾取術など勝手に入れて。いい腕ですが、分かって見れば分かりやすい。きみがずっと私や植物への恐怖を隠しているのは明瞭です。ああ、そこが陰陽術の対抗紋様ですか」
「んっ……! や……」
気づかれないように偽装した、なんて小折は言っていただろうか?
……全部、バレているらしい。違う、バレていた。
「勝手にこんな事まで……きみには貞操観念が無いんですか?」
吐く寸前まで振り回されたような違和感。それでいて、ただそう感じるように電流でも流されているような快感。
影に肩から引きずり出された、光るレースが探られ、引き出されていくたびに響を置き去りに勝手に刺激が強まる。動けない。糸に触れられているから。身をよじることも出来ない。
「ぁぁぁぁぁっ……」」
気が狂う、方がマシだ。
「随分御降春樹に気に入られたようだ。コソコソと身体を許して。私に何か言えた義理ですか? これが」
「や、めっ……」
「ああ酷い…………ここに至っては糸が一本引き抜かれている。こんな芸当があの小童に? 何のために? 響くん、これは……おや」
……もう、目を開けていられない。
「尋問は後にしますか。お仕置きも。どうせ夏季休暇は部屋から出しませんから」
「冗、談……」
「私は、怒っていますからね。きみの思うよりもずっと」
響は意識を手放した。
根濁してマロウブルー 了
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