暖をとる。

山の端さっど

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-27℃ 音はフラジオレット

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 テレビを騒がす連続猟奇殺人犯、スターラー。女性のお腹の中を掻き回すなんて残酷な犯行は模倣犯らしきものも含めて50件になるらしい。
 それだけの間、ほぼ手がかりを残さないなんて悪魔の仕業だ。ジャック・ザ・リッパーの幽霊じゃないか。そんな適当なコメントを、馬鹿にしながらも夢物語のように聞く。そんな人は私だけじゃないだろう。

「あ、がっ」

 スターラーが犯行を行った実績のある範囲に住んでいたって、何十万の人の中で自分がたった50人に選ばれるなんて考えない。だから楽しめる。何十万分の50の方が夢物語だから。

「あぐっ、がぁ」

 私は現実、選ばれはしなかった。
 代わりに――

「ぐ、ぎぃ、あ゛っ……」

 すぐ近くで殺される人を、息を殺してただ聞いている。

 たぶん、スターラーじゃない。お腹だけじゃなくて、全身を傷つけてる音がする。

「はぁーあ。終わっちゃった」

 たぶん、この声の主はスターラーじゃない。テレビでスターラーは男の可能性が高いって言ってた。

 状況をざっくり把握しよう。ここはビルに挟まれた裏路地。猫目当てで夜に入り込んだ物好きは私だけ。路地の奥まった逃げ道のない室外機の影にどうにか隠れている。路地の入り口側にこの事件現場。今は猫はいない。

 よ、よし。音を立てずにビルの非常階段や非常口に入るなんて超能力を持たない私に逃げ道はない。この人が立ち去るまでただ待たなくちゃいけない。
 幸い猫はいない。私の近くででも鳴かれたら困るから良かった。こういうタイプの人が猫の鳴き声を聞いたとき、「なんだ猫か」と無視してくれる確率はあまり高くないと私は思っている。相当数の女性は猫が好きだから無意識にでも見たがる。無関心でも嫌いでも、人を殺す人が猫を捕まえて殺すのが趣味というケースはありそうだ。そして何より、物音がすることで誰かがいるかもしれないという可能性を思いつかせてしまう。

 もっとも、普通に気づかれる確率も高い。私はちゃんと隠れられているだろうか?

 ああ、もう、どうして。人に見られちゃいけないことをするのなら、人がいないと分かってからやって欲しい。携帯を忘れてきた私も私だけど。そして、「見られ」ないけど。
 ……あ、そうだ。



 それから数分後、私は、存在に気付いた殺人犯に頭を殴られ気絶する。
 白杖を持つ盲目の女がをしていたから何も気付いていないだろうと思われたのか、命は助かった。たぶん、犯人は猫を殺さないタイプだ。
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