Sweetest Quest & B お菓子な世界

山の端さっど

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Smallest Q.1 王都・ラスティケーキ

005_チョコファウンテン&ババロア

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「そもそも、君なんて言ったわけ?」
「真面目に報告したっつの! 聞かせてやりたいくらいだったぜ?」
「……まあ、半年高陽級でくすぶってた停滞冒険者がLvラベル500の魔菓子倒して黙ってるわけもないか」
「そうだよ! そうだろ? どう考えてもおかしいよな半年って!」
「いやそんな怖い顔で同意求められても」
「うるせえお前は何級なんだよ!」
「深草。前まで居た町では草級以上の等級審査できなかったからデカい街に来た」

 おさらいしよう。冒険者の等級は、下から地衣・若草・深草・低陽・高陽・低陰・高陰・極相。フードの青年の等級はアレンの2つ下という事になる。

「……うっそだろお前、あんな堂々とケンカ売ってて草級かよ! ギローノはあれでも何故か一応どういうわけか低陽級だぞ!」
「だから、前の所じゃ草までしか等級上げられなかったって言ってんでしょ。君のスイートオムレツみたいな自信と似てるのはヤだけど、実質はもっと上だから」
「スイートオムレツみたいな、ってどういう意味だよ」
「オムレツみたいに土台のない大ボラ吹きって事」
「お前口悪いな!」

 言い合いながら2人が再びギルドに駆け込むと、

「……ふうん」

 もう受付嬢が帰ってしまった夜のギルドには、夜番のネロがいた。ネロは1つの酒場のマスター兼、ギルドの雑用係でもあるのだ。

「なあに、貴方達。へーえ、そうお、そこで繋がるわけね」
「何だよ? そんな事より聞いてくれ、ネロさん!」
「うんうん、良いコンビだと思うよ、貴方達」
「「は?」」

 ネロは蛇系の舌をのぞかせてニヤニヤ笑いながら、一枚の紙を2人の前に出した。

「はい、パーティ結成の申請書。尖った者同士意外と上手くやれるんじゃない? これで俺も一安心だわあ」



 ……しばらくして、

「……はっ? 何ですかその冗談。こんな脳みそババロアと何で僕が組むと思ったんです?」
「なっ、何だと! 俺だって誰がこんな常時嫌味垂れ流すチョコファウンテンとパーティなんて組むかっ!!」

 フードの大声とアレンの叫び声が夜モードのギルドに大きく響き渡った。



 *



「……『小人の高陽級』がどういう扱いを受けるか、って事がよく分かったよ。少しだけ同情しとく」

 夜も更けた頃、アレンとフードの青年はまた道端で話し込んでいた。

「ネロさんは特にムカつくけど、他の受付も対応は大差ないんだよな……俺って嘘言いそうに見えるか?」
「まあ、正直言って僕も、君がミロワール倒したとか信じきれてないし」
「マジかよ」
「でも君が激甘レベルのバカ正直に見えるのはまあ事実かな。妙に嘘とは思えない」
「なんか俺けなされてないか?」

 青年は「ふう」と息をついて、石造りの地面を蹴った。クラレット国の王都だけは、チョコやスポンジでできた汚染地面が本物の石できっちりと覆われている。が、その隙間からは砂糖菓子の雑草がツンツンと伸び出ていた。

「いや、ヤバイんだよなやっぱり」
「何が?」
「いや、ミロワールっつっても一回出会っただけだし、何言っても無駄だから一旦忘れる事にしてたんだけどよ、そういやピンククグロフ山って今、めっちゃ冒険者が来るんだよ」
「はあ……でも陽級冒険者なら倒せなくてもなんとか逃げられるでしょ?」
「いや、最近、ピンククグロフでよく地衣級の冒険者見るんだよ。俺が狩りしてる所にまでいるから、かなり深く潜ってるらしい。なんで規制されてないのか不思議だけど……」
「パーティ組んでるってこと?」
「だろうな」

 高陽級と深草級の冒険者が組めば低陰級見込みになれるように、パーティを組むとまとめてランクが上がった扱いになる事が多い。大人数なら新米の地衣級冒険者を連れて行く事も可能だし、実際そのようにして彼らは連れてこられている。……残念な事に、昨日今日王都に来たばかりのフードの青年には、ピンククグロフ山に地衣級が訪れる理由がアレン観光だとは気づく術が無かった。アレン自身も、(出会った冒険者がまた仕事放り出して見てきやがる)くらいの認識でいたので、まさか登山自体が自分目当てだとは思いつきもしない。

「地衣級抱えたパーティじゃ、Lv500相手逃げるのはキツイかもね」

 青年は腕を組んだ。

「そうだよな、よし、今からピンククグロフ狩りに行ってくるか」
「は?」
「いや、だって、ミロワール湧いてても狩ればいいだろ」
「あの大山一つ、一人だけでカバーできる訳ないでしょ。危険となればギルド規模で対処しなきゃ無理。それとも君ミロワールを一瞬で吹っ飛ばせるわけ? 何体かに囲まれても対処できる?」
「それは……」
「でしょ。だから何とかしてギルドを動かさないと。せめて低級冒険者の立ち入り禁止くらいはさせるべき」
「どうやって?」
「……」

 本来ならアレンが報告した内容だけでピンククグロフ山に調査が入り、事実確認がされるべきなのだが、既に何度も無視されている。アレン自身も心が折れて最近は言わなくなっていたくらいだ。

「フン、マーブル差別はこれだから嫌いだ」
「お前ってワガママに見えて案外人の為に怒れるんだな」
「別に、ギルドの雑な対応に怒ってるだけだし。王都ギルドでこれって、クラレット国も相当ヤバくない?」
「クラレット?」
「僕クラレット出身じゃないから。……ま、どの国も大差ないけど」
「うーん、俺は出た事ないからな。それにお前くらいだぞ、初見でお人形マスコット呼ばわりしてこないの」
「だって中身がこれじゃね」
「……けなしてはくるけどな!」
「別にいいでしょ、結果出してんなら大きかろうと小さかろうと。君を小物扱いするって事は、小さい高Lv魔菓子に死ぬほどボコられた経験とか無いんでしょ。そんな経験不足の雑魚放っておけばいい」
「あー、確かに弱かった時はタルティクラウンとか怖かったな。お前もトラウマあるのか?」
「あるよ。マーブルの差とかどうでもよくなる程度にはね」

 フードの奥で、かすかに目が光ったのをアレンは見た気がした。今となっては良い思い出、という雰囲気ではない。

「だから僕はさっさと上の等級に上がって勇者にでもなりたいわけ。でも余計な詮索する奴らばっかでパーティは組めないし、信頼できる奴なんてできそうもないし」

 どこかおどけた口調に戻って肩をすくめてみせる姿に、アレンは深く息をついた。ふいに思いついた事があったのだ。

「じゃあ……組めばいいだろ、パーティ。
「は? 何言って……」
「よく考えたら、さっさと俺がランクアップすればミロワールの事も信じてもらえるだろ。それにお前も、早く上に上がりたいんだろ? 俺がいれば陰級の認定は早まるぞ」

 フードの青年は、アレンの方をぽかん、とした様子で見てきた。

「もちろん、一時的なやつだからな。俺だってこんな嫌味ばっかの奴と組みたかないけど、そんな事言ってる場合じゃないだろ。俺はとにかく深草以上の実力者と組みたい。お前は詮索されたくない。そこそこ2人で戦えるのは分かってる、二人とも急いでる。これ以上の条件はあるか?」
「……待って」

 フードの青年は床に片膝を立てて座り込んだ。

「……君、魔法は使えないんだよね? 得物は?」
「投げナイフにはこのバターナイフ。もうちょい長さが必要ならこのフルーツナイフ。で、メインの得物はこれ。『幻鏡剣シルエットミラー』ってデザートナイフ剣だ」
「大中小、呆れるほどにナイフばっかだね」
「合うのがナイフばっかりなんだよな、でも斬りゃ大体倒せるし。他も刃物と槍系?までなら使えない事もない」
「近距離物理攻撃メイン、やや中距離投げ物ってわけ。そう」
「お前は?」
「…………」
「いや言えよ」
「……中~遠距離ストロー銃と、魔法で炎系。まあまあ全域攻撃はできる」
「へー。ってなると……あれ、けっこう攻撃範囲被ってないんじゃないか?」
「……そうかもね」
「かもじゃなくてそうだろ、案外いけるか?」
「……悔しいけど、そうかもね」

 青年はため息をついて立ち上がった。

「分かったよ、期間限定で組もうか。他に適任もいないし、間が悪かったと諦める事にするよ」
「何だよその言い方。俺だって乗り気じゃないからな?」

 その時、王都の城壁の縁に薄く朝日が光った。夜が明け始めたのだ。

「知ってるって。…………ライズ」
「ん?」

 青年はフードをしっかりと被ったままだが、アレンにチョコレートスキンの手を差し出した。

「ライズ=クルストゥムって呼んで。……期間限定でよろしく」
「……おう!」

 アレンは強くその手を握った。



 *****



魔菓子スイーツレポート


No.007 タルティクラウン(TartyCrown)
タルト系・主に洞窟内部
Lvラベル90 Calカロリー:150 Bx糖度:100

 タルト系は、弱いが嫌らしい魔菓子ワースト10に入る菓子ジャンル。ほぼ全てが、タルトに短い足の生えた特徴的な形をしている。一番弱い種、タルトプールの名が示す通り、洞窟など暗い中冒険者の後ろに忍び寄っては「膝カックン」と呼ばれる秘技で冒険者を後ろに転ばせ、ジャムやクリームといった自らのフィリングのプールに沈めて走り去るという高度な技術を持つ。問題はタルトなので浅く、冒険者が溺れ死ぬ前に普通に立って復帰できる事、そしてタルト生地自体が脆く、簡単に壊せる事。しかし音を立てずに動き回るタルティクラウン(タルトが王冠型でやや深いのが特徴)程にもなると、冒険者パーティの後ろから一人ずつ冒険者を連れ去り、気づかぬうちに分断するという恐怖を与えることができる。クラウンだろうが相変わらず脆いが、たとえ簡単に倒せようとも分断されるのはパーティにとって脅威なのだ。
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