それは呪いか祝福か

川獺

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覚悟(R-18)

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 ザァザァと熱いシャワーが降り注ぐ。
 向かい合った健斗のずぶ濡れの癖毛に手を伸ばして指先で遊ぶと唇が静かに重なった。シャワーの熱を冷ます様な温度の無い唇を甘く食み、もっとと囁けば舌が絡み合う。漏れ出す吐息がバスルームに木霊してシャワーの音と共に鼓膜に響き渡る。
 後ろ手にシャワーの栓を捻って止めるとより一層食らい付かれると錯覚する程のキスに変わった。ちゅぷ、と舌先が触れ合い、それを飲み込む様に掬い上げられて互いの唾液が絡み合う。
「ん……ふ」
 蕩けてしまう程の口付けひとつで腰が砕けそうになるのを見計らった様に健斗が名残惜しそうに唇を解放しそのまま腰を抱かれて密着する。身に纏うものひとつない素肌はやはり温度は無くて、浴びていたシャワーの熱気だけが伝う。
「キスだけで足りる?」
「足りない……今の内にもっと健斗が欲しい」
 はしたないとは思いつつ、灯った欲望のままに下肢を擦り付ける。性器は僅かに兆しを見せており既に芯を持っていた。
 すると腰を抱き撫でていた健斗の手が臀部に添えられて揉み込む様に手付きが変わる。より密着して幾度もキスを交わし、下肢を擦り付け合えば徐々に性器が頸を擡げた。
 互いにその気であると分かれば話は早かった。俺が誘う様に腰を揺らして、先走りの助けを借りてぬるりと擦れる陰茎同士は徐々に膨れ上がり、揉みしだかれる臀部は気持ちいいがやはり物足りなさを感じている。
「健斗……」
「大丈夫、わかってる」
 臀部の割れ目に沿って健斗の指が肌を撫でていく。その指先が後孔に触れると期待が隠し切れずそこがひくりと脈動した。
 健斗がバスルームに置いてあったローションの蓋を開けて手に出しそのぬめりを頼りにそれを丁寧に塗り付けて、そっと中指が侵入して来る。もうすっかり慣れてしまった異物感に熱い溜息を零してもっとと誘い込む。
「ッ、ぁ、健斗……」
「もう少し、待って」
 馴染んだ頃にもう一本の指を挿し入れ、腹側にある前立腺を明確に二本の指先で捏ね回されるとびくりと過剰な程に全身を震わせた。
 そうしている間に健斗の腹筋を撫でながら下肢へと手を辿らせ、起ち上がった擦れ合う性器を撫で、そして震える手でゆるゆると扱き始める。
 くちゅちくちゅりと淫猥な水音がバスルームに響き渡り、二人の熱い吐息が漏れ出した。
 気付けば三本に増えていた後孔を解す指は縦横無尽に動き回って明確な意図をもって拡げていく。俺が扱いていた性器は既に完全に反り立ち、既に臨戦態勢と言える状態だった。
「くるむ、後ろ向いて」
 その言葉を合図に後孔から指が引き抜かれ、健斗に背を向ける様にしてバスルームの壁に手をつく。
 とろとろに解されたひく付く後孔にひたりと健斗が性器を宛がい力を籠めるとそのままずぷずぷと入ってくるのが分かる。
「ぁ……!アあ……ァ、ッ」
「は、ァ……くるむのナカ、相変わらずすごいね」
 ゆっくりと挿入されコツリと結腸弁に先が当たるとゆるゆると馴染ませる様に健斗の性器が中を掻き回し始める。それだけでも快楽が襲い背筋を反らせて身を捩った。
 健斗が俺の腰を掴み、程良く慣れた頃合いを見定めてトントンと奥をノックするかの動きで腰を振り始めるとぶるりと背筋に快感が走った。
「ッぁ……アン、ぁぁ!ァぁ!ンン、ァ!っ」
「包、気持ちいい……ッ?」
「あっ、けんと、もっとぉ」
 完全に蕩け切った顔ではふはふと熱い吐息を零しもっと強請る俺に、強くグラインドを繰り返し突き上げて来る。そうしている内に緩み出した結腸弁にぐりぐりと先端を押し付けるとぐぽりとさらに奥へと飲み込まれ、俺の全身が大きく震えてぴしゃりとバスルームの壁に白濁が散った。
「ァ―――!!!!……ァあ……あ、ぁアん……ッん、ア……ぁ」
 皮膚同士が勢い付けてぶつかり合いパンパンと音が鳴る。健斗が達したばかりの俺の性器を掴み、亀頭を撫で回して刺激し始めると大きく首を振り快楽に抗おうと腰が逃げそうになるが、構わず強く挿出を繰り返す健斗が背中に何度もキスを落とす。
「あ……イく、ァぁ!イ、あぁ!ア……、ァン……ぁ!っ」
「くるむ……ッ」
 執拗に亀頭を責められて、結腸を突き上げて快感という快感を責め抜くと俺の鈴口から透明の液体が断続的に放たれ、その反動でこれ以上無い程に締め付けると健斗が中に精液を吐き出し、それを擦り付ける様に本能のまま腰が揺らぐ。
 そっと顔に健斗の手が添えられて後ろを向かされると労わるかのごとく頬を擦り合わせて首筋にキスを落とされる。
 絶え絶えな二人分の呼吸がバスルームに反響して余韻を感じさせるがまだ足りなくて、もっと健斗を感じていたくて腰を揺らす。まだ中に居る健斗の性器が脈打つのが伝わった。
「はぁ、っ……ア、ッ!けんと……ぉ!」
 バスルームに止め処ない嬌声と吐息が響き渡り、後孔の奥までぐぽりと性器を叩き込まれ塞がらない口端からは唾液が雫となって零れ落ちる。ずっとゾクゾクと背筋を電流が駆け巡る様な快楽が止まず壁に爪を立てた。
「ッッ、くるむ、気持ちいいの?」
「ぐ、っ……ぁア!いい、もっとぉ……!」
「ふ、ッもう少しだけ」
 耳を舐りながら囁かれてまたゾクリと背筋が震え腰が疼く。もう何度達したか数える余裕もない、すっかり咥え込む事に抵抗の無くなった肉体は浅ましく腰が揺れ動く。どんな激しい挿出にも感じる身体は一体いつ達しているのかも分からず前後不覚に陥る。
「ひ、ぁあ!イく……!!も、イってる、……ッ!」
「くるむ、かわいい」
「ハ、っ……は、ァ」
 肌のぶつかり合う音が響く中、背が仰け反り叩き込まれる快楽に酔い痴れ絶頂を迎えるとこれ以上無い程奥を貫かれ再び中に熱い迸りを感じた。






 疲れ果てた身体を鎮める様に二人でベッドに転がり、向かい合うと健斗に抱き寄せられすっぽりと腕の中に仕舞われる。それが何だか心地良くてそのまま好きにさせた。
「このまま二人でどろどろに溶けちゃえばいいのにね」
「なんだよ急に」
「覚悟決めたのにやっぱ包が恋しくて?」
「そんなの俺だって……」
 額がそっとぶつかる。鼻先が擦れて、どちらともなく口付けて、やっぱり名残惜しいと心が叫ぶ。でも健斗が呪いを振り撒く所なんて見たくない。相反する気持ちが苦しくて胸がツンと痛む。
 本当にこのまま二人で溶けてしまえたらどれだけ良いだろう。悲しみも苦しみも無くひとつになって……でもそれは叶う事の無い夢物語だ。
「ねぇ、包。俺の事愛してる?」
「……愛してるよ」
「……そっか、ありがとう」
 ぎゅう、と健斗の腕に力が籠る。今思えばこいつだって滅茶苦茶つらい筈で、苦しいのも俺だけじゃない。恋人と離れて下さいと言われてはいそうですか、なんて簡単に頷ける訳がない。なのに健斗は俺を想ってあっさりと受け入れた。本当に馬鹿な奴だ。
「明日、あずま神社に来いだとよ」
「うん。でももうちょっとだけ包と居たかったなぁ」
「先に覚悟決めたのお前だろ馬鹿」
「まぁね……俺さ、包と出会えて幸せだった」
「俺だって……」
 不意に健斗が小さく鼻を啜るのが聞こえた。背中に腕を回して撫でてやるとハハッという笑い声で返されるがその声は震えている。
「俺と出会ってくれて、愛してくれてありがとう」
「……おう」
「来世ではさ、しわしわのおじいちゃんになるまで二人で幸せになろ?」
「今世でなりたかったっつーの」
「それはほんとゴメンって」
 言葉を交わせば交わすほど、止まったと思った涙が溢れて来る。健斗も珍しく泣いている様だった。本当なら馬鹿みたいに笑って二人で泣きたかったなと思ってももう俺達に未来という二文字は無くて、そう思うとまた目尻から雫が零れた。
 泣いても笑っても明日でこの束の間の幸せも終わりを告げる。なら最後位こうして求め合っても罰は当たらないだろう。涙を拭ってもう一度唇を重ねた。
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