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第14話 心を溶かす、一杯のスープ
黄金色の瞳が、湯気の立つ器に釘付けになっている。
その視線から敵意が消え、純粋な好奇心と、抗いがたい食欲の色が浮かんでいるのを、私ははっきりと見て取った。
(いける……!)
私はゆっくりとした動作で、器の中からまず、ボーンブロススープを木の椀によそった。
こぽこぽ、と温かい音を立てて注がれる、黄金色の液体。凝縮された肉と野菜の旨味が詰まった香りが、さらに強くフェンリルの鼻腔をくすぐる。
私はその椀を、そっと地面に置いた。
自分とフェンリルとの中間地点に。
「どうぞ。まずは、温かいスープからいかがですか」
私はにっこりと微笑みかけ、それ以上は動かず、ただ静かに待った。
ヴィンセント様が固唾をのんで見守っている気配が背後から伝わってくる。
フェンリルは、しばらくの間、警戒を解かなかった。置かれた椀と、私の顔を交互に見比べ、じっと動かない。
しかし、その鼻はひくひくと動き続け、尻尾の先が、ほんの少しだけ揺れている。
やがて、抗いがたい匂いの誘惑に負けたのだろう。
巨大な銀色の獣は、ゆっくりと慎重な足取りで岩場から降りてきた。一歩、また一歩と、その足取りにためらいが滲んでいる。
そして、ついに椀の前まで来ると、まずは匂いを嗅ぐように鼻先を近づけた。
ふんふん、と数回匂いを確かめた後、おそるおそる、その大きな舌を伸ばし、スープをぺろり、と一舐めした。
その瞬間。
フェンリルの黄金色の瞳が、驚きに見開かれた。
フェンリルは、それまでの警戒心が嘘のように夢中になって椀の中のスープを飲み始めた。
ぺろぺろぺろ……!
静かな森に美味しそうな音だけが響き渡る。
あっという間にスープを飲み干してしまったフェンリルは、名残惜しそうに椀をぺろぺろと舐めると、今度は期待に満ちた目で、私の手元にある残りの器をじっと見つめてきた。
その瞳は、もう全然怖くない。
まるで、「おかわりはまだか?」とねだる、大きな犬のようだった。
あまりの変わりように、後ろで見ていたヴィンセント様が「……信じられん」と呆然と呟くのが聞こえる。
私は嬉しくなって、今度は鶏レバーのパテと、鶏肉のおじやをそれぞれ別々の皿に盛り付け、そっと差し出した。
フェンリルは、今度はもう全くためらわなかった。
ものすごい勢いで、けれど少しもがっつくことなく、どこか気品さえ感じさせる動きで、全ての料理を綺麗に平らげていく。
そして、全てを食べ終えると、満足そうにふぅ、と一つ大きな息をついた。
その黄金色の瞳には、力が戻り、毛並みにも心なしか艶が蘇ったように見える。
食事が終わると、フェンリルはゆっくりと私の方に近づいてきた。
「エリアーナ、危ない!」
ヴィンセント様が鋭い声を上げる。
しかし、私は不思議と怖くなかった。
私の目の前まで来たフェンリルは、その巨大な頭を、私の肩にすり、と優しく擦り付けてきたのだ。
まるで「美味しかったぞ」「ありがとう」と言ってくれているように。
私は驚きながらも、そっと手を伸ばし、その美しい銀色の毛並みを優しく撫でた。
柔らかくて、温かい。
「よかった……。また、作ってきますね」
私がそう囁くと、フェンリルは嬉しそうに、クゥン、と甘えるような声で喉を鳴らした。
最強と謳われる聖獣が、完全に心を許してくれた瞬間だった。
その視線から敵意が消え、純粋な好奇心と、抗いがたい食欲の色が浮かんでいるのを、私ははっきりと見て取った。
(いける……!)
私はゆっくりとした動作で、器の中からまず、ボーンブロススープを木の椀によそった。
こぽこぽ、と温かい音を立てて注がれる、黄金色の液体。凝縮された肉と野菜の旨味が詰まった香りが、さらに強くフェンリルの鼻腔をくすぐる。
私はその椀を、そっと地面に置いた。
自分とフェンリルとの中間地点に。
「どうぞ。まずは、温かいスープからいかがですか」
私はにっこりと微笑みかけ、それ以上は動かず、ただ静かに待った。
ヴィンセント様が固唾をのんで見守っている気配が背後から伝わってくる。
フェンリルは、しばらくの間、警戒を解かなかった。置かれた椀と、私の顔を交互に見比べ、じっと動かない。
しかし、その鼻はひくひくと動き続け、尻尾の先が、ほんの少しだけ揺れている。
やがて、抗いがたい匂いの誘惑に負けたのだろう。
巨大な銀色の獣は、ゆっくりと慎重な足取りで岩場から降りてきた。一歩、また一歩と、その足取りにためらいが滲んでいる。
そして、ついに椀の前まで来ると、まずは匂いを嗅ぐように鼻先を近づけた。
ふんふん、と数回匂いを確かめた後、おそるおそる、その大きな舌を伸ばし、スープをぺろり、と一舐めした。
その瞬間。
フェンリルの黄金色の瞳が、驚きに見開かれた。
フェンリルは、それまでの警戒心が嘘のように夢中になって椀の中のスープを飲み始めた。
ぺろぺろぺろ……!
静かな森に美味しそうな音だけが響き渡る。
あっという間にスープを飲み干してしまったフェンリルは、名残惜しそうに椀をぺろぺろと舐めると、今度は期待に満ちた目で、私の手元にある残りの器をじっと見つめてきた。
その瞳は、もう全然怖くない。
まるで、「おかわりはまだか?」とねだる、大きな犬のようだった。
あまりの変わりように、後ろで見ていたヴィンセント様が「……信じられん」と呆然と呟くのが聞こえる。
私は嬉しくなって、今度は鶏レバーのパテと、鶏肉のおじやをそれぞれ別々の皿に盛り付け、そっと差し出した。
フェンリルは、今度はもう全くためらわなかった。
ものすごい勢いで、けれど少しもがっつくことなく、どこか気品さえ感じさせる動きで、全ての料理を綺麗に平らげていく。
そして、全てを食べ終えると、満足そうにふぅ、と一つ大きな息をついた。
その黄金色の瞳には、力が戻り、毛並みにも心なしか艶が蘇ったように見える。
食事が終わると、フェンリルはゆっくりと私の方に近づいてきた。
「エリアーナ、危ない!」
ヴィンセント様が鋭い声を上げる。
しかし、私は不思議と怖くなかった。
私の目の前まで来たフェンリルは、その巨大な頭を、私の肩にすり、と優しく擦り付けてきたのだ。
まるで「美味しかったぞ」「ありがとう」と言ってくれているように。
私は驚きながらも、そっと手を伸ばし、その美しい銀色の毛並みを優しく撫でた。
柔らかくて、温かい。
「よかった……。また、作ってきますね」
私がそう囁くと、フェンリルは嬉しそうに、クゥン、と甘えるような声で喉を鳴らした。
最強と謳われる聖獣が、完全に心を許してくれた瞬間だった。
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