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第12章 旭日中学剣術部の恋愛事情 後編
ラブ・トレ・ミッション!⑨~知らされた真実、揺れた鼓動と届かぬ想い~
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「月詠くんだっけ? 君、まさかこんなお姉さんを口説こうとしてたわけじゃないわよね?」
春香はそう言って微笑むと、月詠の顔をのぞきこんだ。
「でもこの脈の速さ……びっくりしちゃったわ。顔色が真っ青だったから、本当に心配したのよ?」
「い、いえ……全然。おばさんなんて、とんでもないです。美人ですし、すごく若く見えますし。」
月詠が真剣な表情でそう答えると、春香はくすりと笑って言った。
「月詠くんって、女の子に慣れてるタイプね? もしかして、かなりのプレイボーイなんじゃない?」
「そんなことないですよ。ただ、姉妹が二人いて慣れてるだけで……。むしろ、全部持っていかれてますから、モテたことなんてないです。」
月詠は照れくさそうに言ったあと、少しだけ視線をそらしながら続けた。
「それに、春香さんのこと、てっきり二十四歳くらいかと……。綺麗でスタイルも良くて……正直、思春期の俺にはちょっと刺激強すぎます。」
そう言って目を伏せると、目の前には春香の胸元がちらりと視界に入ってしまい、思わず顔を赤らめる月詠。
春香はその様子を見て、冗談めかして口をとがらせた。
「ほら、やっぱり口説いてるじゃない。二十七歳の私を……って、あ、年齢バラしちゃった。」
慌てて口元に指を当てると、声をひそめて続けた。
「ここでは、患者とプライベートの話は禁止って決まってるの。ナイショにしてね。」
「はい……わかりました。」
ようやく落ち着いてきた月詠を見て、春香はふと問いかけた。
「でも、月詠くん。どうしてそんなに顔色悪くなってたの? 何か、心配事でも?」
その言葉に、月詠は少し俯いて、小さく答えた。
「……主将が、今年の大会に出られないって聞いて。それがショックで……。」
春香はそっと表情を和らげる。
「そう……彼が出られないのは、つらいわよね。でも、それだけあなたたちが今年、頼られてるってことじゃない?」
月詠は静かに頷いたが、どこかまだ沈んだ表情のままだった。
「……俺、自分がもっと強ければって思ったんです。四月のあのとき、俺が……もう少しちゃんとしていれば……。」
振り返るように、ぽつりと口に出す月詠。春香はその言葉を最後まで遮らずに聞いていた。
「ねえ、月詠くん。過去のことを悔やむ気持ちはわかるけど……今をどう動かすかの方が、大事なんじゃないかな?」
春香はそっと、優しく続けた。
「主将が出られなくても、あなたたちが受け継いでいけばいいのよ。その努力はきっと、結果以上の何かを残してくれるはずだから。」
その言葉に、月詠の表情がふっと緩んだ。
――そのとき、春香の端末が小さくアラームを鳴らした。
「……ごめんね、月詠くん。急患が入っちゃった。私はこれで行かなきゃだけど、君はもう少しここで休んでて。無理はしちゃダメよ?」
「はい……ありがとうございました。」
月詠は軽く頭を下げ、ベッドの上でそっと目を閉じた。
春香はもう一度、彼の顔を見て微笑む。
「頑張ってね。試合、応援してるわ。」
その背中がドアの向こうへ消えていく。
そのとき――春香はふと、あることを思い出していた。
(あの子にも姉妹がいるって言っていたわ。姉さんと義兄さんみたいなことにはならないで欲しい。もうあんな悲劇が二度と起こらないで欲しい。)
悲しみの影が一瞬、春香の瞳をかすめる。
けれど、次の瞬間にはその表情を引き締め、彼女は処置室へと足早に消えていった。
ベッドの上の月詠は、まだどこか遠くを見つめるような顔で、ぽつりと心の中で呟く。
(看護長さん……優しくて、綺麗で、素敵な人だったな……)
けれどその想いの奥には――凍夜の負傷に揺れる焦燥と、消えない覚悟が、確かにあった。
春香はそう言って微笑むと、月詠の顔をのぞきこんだ。
「でもこの脈の速さ……びっくりしちゃったわ。顔色が真っ青だったから、本当に心配したのよ?」
「い、いえ……全然。おばさんなんて、とんでもないです。美人ですし、すごく若く見えますし。」
月詠が真剣な表情でそう答えると、春香はくすりと笑って言った。
「月詠くんって、女の子に慣れてるタイプね? もしかして、かなりのプレイボーイなんじゃない?」
「そんなことないですよ。ただ、姉妹が二人いて慣れてるだけで……。むしろ、全部持っていかれてますから、モテたことなんてないです。」
月詠は照れくさそうに言ったあと、少しだけ視線をそらしながら続けた。
「それに、春香さんのこと、てっきり二十四歳くらいかと……。綺麗でスタイルも良くて……正直、思春期の俺にはちょっと刺激強すぎます。」
そう言って目を伏せると、目の前には春香の胸元がちらりと視界に入ってしまい、思わず顔を赤らめる月詠。
春香はその様子を見て、冗談めかして口をとがらせた。
「ほら、やっぱり口説いてるじゃない。二十七歳の私を……って、あ、年齢バラしちゃった。」
慌てて口元に指を当てると、声をひそめて続けた。
「ここでは、患者とプライベートの話は禁止って決まってるの。ナイショにしてね。」
「はい……わかりました。」
ようやく落ち着いてきた月詠を見て、春香はふと問いかけた。
「でも、月詠くん。どうしてそんなに顔色悪くなってたの? 何か、心配事でも?」
その言葉に、月詠は少し俯いて、小さく答えた。
「……主将が、今年の大会に出られないって聞いて。それがショックで……。」
春香はそっと表情を和らげる。
「そう……彼が出られないのは、つらいわよね。でも、それだけあなたたちが今年、頼られてるってことじゃない?」
月詠は静かに頷いたが、どこかまだ沈んだ表情のままだった。
「……俺、自分がもっと強ければって思ったんです。四月のあのとき、俺が……もう少しちゃんとしていれば……。」
振り返るように、ぽつりと口に出す月詠。春香はその言葉を最後まで遮らずに聞いていた。
「ねえ、月詠くん。過去のことを悔やむ気持ちはわかるけど……今をどう動かすかの方が、大事なんじゃないかな?」
春香はそっと、優しく続けた。
「主将が出られなくても、あなたたちが受け継いでいけばいいのよ。その努力はきっと、結果以上の何かを残してくれるはずだから。」
その言葉に、月詠の表情がふっと緩んだ。
――そのとき、春香の端末が小さくアラームを鳴らした。
「……ごめんね、月詠くん。急患が入っちゃった。私はこれで行かなきゃだけど、君はもう少しここで休んでて。無理はしちゃダメよ?」
「はい……ありがとうございました。」
月詠は軽く頭を下げ、ベッドの上でそっと目を閉じた。
春香はもう一度、彼の顔を見て微笑む。
「頑張ってね。試合、応援してるわ。」
その背中がドアの向こうへ消えていく。
そのとき――春香はふと、あることを思い出していた。
(あの子にも姉妹がいるって言っていたわ。姉さんと義兄さんみたいなことにはならないで欲しい。もうあんな悲劇が二度と起こらないで欲しい。)
悲しみの影が一瞬、春香の瞳をかすめる。
けれど、次の瞬間にはその表情を引き締め、彼女は処置室へと足早に消えていった。
ベッドの上の月詠は、まだどこか遠くを見つめるような顔で、ぽつりと心の中で呟く。
(看護長さん……優しくて、綺麗で、素敵な人だったな……)
けれどその想いの奥には――凍夜の負傷に揺れる焦燥と、消えない覚悟が、確かにあった。
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