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第14章 大会直前の練習試合、相手チームは美人なお姉さんだらけです
視えざる戦場、声を読めば勝ちが見える
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「それでは、始め!」
主審の掛け声とともに、仮想空間に転送された日下部と江波。
視界の先はすでに、霧がかすむ銀灰のフィールドに変わっていた。
江波は静かに間合いを測ると、鋭く一歩踏み込む。
(この霧……視界は二メートルもない。音と気配が命取りになるな)
日下部は冷静に頭を回し、相手の出方を見ていた。すると――
「濃霧水冷斬!」
霧の中を切り裂くような冷気が、風に紛れて襲いかかる。
一瞬遅れて見えた斬撃の軌跡に、日下部は身をひねりながら回避した。
(見えない攻撃……だが、音はした。剣の軌道を読めば――)
「領内防御、止水共鳴風林拳!」
気配を反転させるように構え、カウンター技を打つ。
空気の揺れが交差し、互いの技がぶつかった瞬間、衝撃波が霧をかき乱す。
その後――完全に視界が奪われた。
(まずい……お互いの気配も見えなくなった)
だが、次の瞬間、静寂を破る声が響く。
「濃霧破傷月!」
まるで月が霧を割って現れるような、鋭い斬撃。
音で察知した日下部は後退しようとするが、反応が一瞬遅れ、肩口をかすめられた。
「っ……!」
痛みが走り、バーチャルとはいえ衝撃が脳を刺激する。
(……一撃は浅い。まだいける)
「濃霧満月裂傷斬!」
江波はさらに声を上げて、傷口に狙いを定めるように突撃してくる。
日下部は、その一瞬の“声”と“気配”を読み――待っていた。
(かかった!)
「……ごめん、断罪空圧斬り!」
息を殺して構えていた日下部が、霧を裂くように突進。
視線の誘導と痛みの演技を交えた逆カウンターだった。
反応が遅れた江波は、回避しきれずに懐を突かれる形となった。
そして――
「ぎゃっ!」
江波の小さな悲鳴が響いた。
剣が完全に命中したのではない。だが、動きが完全に止まり、江波はしゃがみ込む。
(しまった……距離が近すぎた!)
日下部が剣を引こうとしたその瞬間、目の前で江波が両手で大事なところを押さえ、真っ赤な顔で小さく唸っていた。
霧がまだ濃く、観客席からは見えていない。だが、当人同士には十分に“事故”の様相だった。
「……君、それ、わざと?」
「ち、ちがいます!」
日下部が即座に首を横に振ると、江波は軽くため息をついて、わずかに笑った。
「……まあ、これも戦いのうち、かな?」
そして、静かにこう言った。
「でも……これっきりにしなよ。ご褒美、ということで。」
彼女はそっと日下部の顔に手を添え、軽く抱き寄せる。
剣とは無縁の、でも確かな体温がそこにあった。
「……うわぁぁぁぁ!」
日下部の叫び声が霧の中に響く。
外ではその声を聞いた恭弥たちが、まさか――と、顔を見合わせた。
が、霧の中で江波が降参を宣言。
審判の声が響く。
「勝者、旭日中学――日下部!」
やがて霧が晴れ、ぼんやりと見えるふたりのシルエットが、まるで抱き合っているかのように映る。
だがその時、試合終了に伴い、現実世界への転送が行われ、真相は闇の中へと包まれた。
現実に戻った日下部は、無言でその場に立ち尽くしていた。放心したような顔で。
――一方、江波は顧問・荻原の前で静かに頭を下げていた。
「これまで、ご指導ありがとうございました。」
それは、引退を意味する一礼だった。
彼女は悔しさよりも、どこか清々しい表情を浮かべていた。
離れたところでそれを見つめる日下部は、言葉にならない気持ちを抱えながら、ただ彼女の背中を見つめていた。
江波は仲間たちに挨拶を終えると、もう一度だけ日下部の前に立つ。
「そんな顔、しないで。……でもね、君が最後の相手で良かった。また、どこかで会いましょう。」
そう告げて背を向けた江波の目から、大粒の涙がこぼれた。
誰もいない通路で、ひとりきりになった彼女はつぶやく。
「……あれ、私、どうしたんだろ……。負けたら、こうなるってわかってたのに……。
なのに、なんで、こんなに涙が止まらないんだろう……。」
その背中には、剣を置いた少女の、精一杯の想いが滲んでいた。
主審の掛け声とともに、仮想空間に転送された日下部と江波。
視界の先はすでに、霧がかすむ銀灰のフィールドに変わっていた。
江波は静かに間合いを測ると、鋭く一歩踏み込む。
(この霧……視界は二メートルもない。音と気配が命取りになるな)
日下部は冷静に頭を回し、相手の出方を見ていた。すると――
「濃霧水冷斬!」
霧の中を切り裂くような冷気が、風に紛れて襲いかかる。
一瞬遅れて見えた斬撃の軌跡に、日下部は身をひねりながら回避した。
(見えない攻撃……だが、音はした。剣の軌道を読めば――)
「領内防御、止水共鳴風林拳!」
気配を反転させるように構え、カウンター技を打つ。
空気の揺れが交差し、互いの技がぶつかった瞬間、衝撃波が霧をかき乱す。
その後――完全に視界が奪われた。
(まずい……お互いの気配も見えなくなった)
だが、次の瞬間、静寂を破る声が響く。
「濃霧破傷月!」
まるで月が霧を割って現れるような、鋭い斬撃。
音で察知した日下部は後退しようとするが、反応が一瞬遅れ、肩口をかすめられた。
「っ……!」
痛みが走り、バーチャルとはいえ衝撃が脳を刺激する。
(……一撃は浅い。まだいける)
「濃霧満月裂傷斬!」
江波はさらに声を上げて、傷口に狙いを定めるように突撃してくる。
日下部は、その一瞬の“声”と“気配”を読み――待っていた。
(かかった!)
「……ごめん、断罪空圧斬り!」
息を殺して構えていた日下部が、霧を裂くように突進。
視線の誘導と痛みの演技を交えた逆カウンターだった。
反応が遅れた江波は、回避しきれずに懐を突かれる形となった。
そして――
「ぎゃっ!」
江波の小さな悲鳴が響いた。
剣が完全に命中したのではない。だが、動きが完全に止まり、江波はしゃがみ込む。
(しまった……距離が近すぎた!)
日下部が剣を引こうとしたその瞬間、目の前で江波が両手で大事なところを押さえ、真っ赤な顔で小さく唸っていた。
霧がまだ濃く、観客席からは見えていない。だが、当人同士には十分に“事故”の様相だった。
「……君、それ、わざと?」
「ち、ちがいます!」
日下部が即座に首を横に振ると、江波は軽くため息をついて、わずかに笑った。
「……まあ、これも戦いのうち、かな?」
そして、静かにこう言った。
「でも……これっきりにしなよ。ご褒美、ということで。」
彼女はそっと日下部の顔に手を添え、軽く抱き寄せる。
剣とは無縁の、でも確かな体温がそこにあった。
「……うわぁぁぁぁ!」
日下部の叫び声が霧の中に響く。
外ではその声を聞いた恭弥たちが、まさか――と、顔を見合わせた。
が、霧の中で江波が降参を宣言。
審判の声が響く。
「勝者、旭日中学――日下部!」
やがて霧が晴れ、ぼんやりと見えるふたりのシルエットが、まるで抱き合っているかのように映る。
だがその時、試合終了に伴い、現実世界への転送が行われ、真相は闇の中へと包まれた。
現実に戻った日下部は、無言でその場に立ち尽くしていた。放心したような顔で。
――一方、江波は顧問・荻原の前で静かに頭を下げていた。
「これまで、ご指導ありがとうございました。」
それは、引退を意味する一礼だった。
彼女は悔しさよりも、どこか清々しい表情を浮かべていた。
離れたところでそれを見つめる日下部は、言葉にならない気持ちを抱えながら、ただ彼女の背中を見つめていた。
江波は仲間たちに挨拶を終えると、もう一度だけ日下部の前に立つ。
「そんな顔、しないで。……でもね、君が最後の相手で良かった。また、どこかで会いましょう。」
そう告げて背を向けた江波の目から、大粒の涙がこぼれた。
誰もいない通路で、ひとりきりになった彼女はつぶやく。
「……あれ、私、どうしたんだろ……。負けたら、こうなるってわかってたのに……。
なのに、なんで、こんなに涙が止まらないんだろう……。」
その背中には、剣を置いた少女の、精一杯の想いが滲んでいた。
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