恋も剣も本気です!青春剣士たちのラブ・グラディエーション ~気が付くとは~れむ状態!?~

てんちょう

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第16章 つかの間の休息と激戦の女子トーナメント

異変!鋼の微笑、その奥に宿る弱さ――綻びゆく“絶対女王”と連覇への道

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全国大会2日目。会場を後にした聖奈と咲は、まざまざと“全国”という壁の高さを実感していた。

特に、聖奈の心は静かに、けれど確実に蝕まれていた。

(私、負けるかもしれない……いや……このままじゃ、きっと追い抜かれる……。)

去年の王者としての肩書き。知らず知らずのうちに、それに寄りかかっていたのかもしれない。

榎宮朱璃のあの一撃。異次元の速度。会場の空気ごと切り裂くような存在感。それを見た瞬間、胸の奥が凍りついた。

(私、ここまできて、何をしてたの……? あの朱璃さんは”初めて見る”のに……どうして、あんなにも完成されてるの……?)
(もし、私がいまのまま変われなかったら……私は、あの光に呑まれるだけ……!)

聖奈はそのまま夜の練習場へ足を運び、誰もいない空間でひたすら朱星光月焔を振り続けた。荒く、そして必死に。

ただ、自分の弱さを斬り捨てるように。

(私がこれまで信じていた努力は、通用しないの? 私は、あんな強さに勝てるの……?)

焦燥と不安が、黒い霧のように胸の内を渦巻いていく。

咲はそんな聖奈の姿を、遠くから見つめていた。

(聖奈……。)

聖奈がこの一年間、どれほど努力を積み重ねてきたか、咲には分かっていた。いや、誰よりも知っていた。

(でも、私は……私は怪我を理由にして、聖奈との真剣勝負から逃げてきた。もし、私が少しでも、もっと本気で挑んでいれば……聖奈は“後ろから迫る恐怖”に気づけたかもしれない。そうすれば、こんなに追い詰められることもなかった……私が、聖奈の“ライバル”であり続けるべきだったんだ……。)

聖奈の焦りと孤独に咲は何もできず、ただその場に立ち尽くしていた。

翌日――3回戦。

姫香、茜、月華が快勝し、咲も堂々たる勝利で繋いだ。

そして、大将戦。

「始め!」

主審の合図と共に、聖奈の前に出雲中の大将が迫る。

だが――

(身体が……重い……動かない……。)

明らかに昨日のオーバーワークが響いていた。

頭では分かっている。次の動きも、先の展開も見えている。

なのに、身体が追いつかない。

先にポイントを取られ、何とか取り返すも、その後は拮抗したまま。

試合時間は妙に長く感じられた。

(どうして……あんなにも動けないの……? 私、ここまで積み上げてきたはずなのに……⁉)

目の前の相手は、3年生。

この試合が“最後”であることを知っているからこそ、その執念が刃となって襲ってくる。

(私も、負けられない……!)

ボロボロの身体を奮い立たせ、聖奈は相手が見せた一瞬の隙を、刹那の集中で斬り裂いた。

「一本! 勝者、旭日中学・綾野!」

勝ちはした。

でも、その代償は大きかった。

駆け寄った恭弥が、心配そうに声をかける。

「聖奈、大丈夫!? どこか怪我してないか!?」

「きゃっ……! くすぐったいよ、恭弥……大丈夫。ほんとに。相手が全力だっただけだから。」

聖奈は笑ってごまかした。

でも咲は、その微笑みが“限界のサイン”であることを見抜いていた。

「……聖奈、もう無理しないで。身体、重いでしょ? みんなには誤魔化せても、私には分かるの。」

「……そう見えちゃった? でも私は大丈夫よ。……次は、もっと動けるようにするから。」

咲は真っすぐに聖奈を見つめた。

「ちゃんと、休んで。今はそれが、あなたの一番の“勝ち方”よ。」

聖奈はわずかに目を見開き、そして小さくうなずいた。

「ありがとう、咲……。」

その声音には、弱音も言い訳もなかった。

聖奈はいつものように、静かに、毅然と、強がりを貫いていた。

(でも、私は知ってる。あなたの強さの裏にある、不安も、恐怖も……)

咲は静かに歩き出した。

向かった先は、姫香たちのもとだった。

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