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その少年、はじめてのおつかい
しおりを挟むユヅル少年とベルが降り立った場所からは、異様な光景が広がっていた
赤黒い空、とげとげの地面、そして極めつけには、いないのだ
人間が
その世界に居る者たちは皆、自分とは違った見た目をしていて、
尖った耳、白目と黒目が逆、鋭い爪、そしてなんか、珍しいものを見るように自分を見てくる
ユヅル少年は目を下に向けながら
「……死ぬかと思った。てかここ地獄…?」
隣にいるベルに問いかける
「安心しなさいユヅルちゃん、ここじゃ生きてる者の方が少ないわ♡
アンタも仲間になる?」
そんなのごめんだ
なんて肩を震わす
それよりも、周りの目が痛い
無数の視線がグサグサと刺さってくる
そんな視線など気にしてないように、ベルは口を開く
「それじゃ、ユヅルちゃん。
早速お使いよ♡」
…………
「はぁ!?やだよ、なんで俺がーー」
文句を垂れようとした、その瞬間
「つべこべ言わないの。」
パチン、と指を鳴らされる
口に出そうとした言葉は、全て喉にしまい込まれる
「四丁目の角の役所から罪人の懺悔を貰ってきてちょうだい。
紙袋一つよ。ベルのお使いって言えばわかるから。」
「なんだよそれ、ってか四丁目ってどこだよ!」
「そこの十字路を右に行って真っ直ぐよ。だぁいじょうぶ♡困ったら叫べばいいのよ。誰かしら来るわ。」
「ベルは一緒に来ないの……?」
「やぁよアタシ、あそこ嫌いなの。文句ばっか言われるから。みんな、真面目すぎるのよぉ……」
ベルは眉を下げて、嫌だという気持ちを全面に押し出してくる
このままでは埒が明かないと、渋々歩みを進める
「えっと、ここを曲がって……真っ直ぐ…」
歩みを進める度に道が、蟻地獄のように足を沈めていく
道行く悪魔たちが
「人間だ……人間の子供がいるぞ。」
「小さいわァ!かわいい!」
なんて、話をしている
俺は小さくない!
ユヅル少年は心の中で反撃する
しばらく真っ直ぐ進んでいると、それらしき建物が見えてきた
……外装は剥がれ、鉄骨が剥き出しである
外に並ぶ人たちは皆、泣いている
もうほんと、どうしようもないくらい泣いている
ユヅル少年はうげぇ、と顔を顰めて
Uターンした
一歩を踏み出した瞬間、右足が道に沈み込んだ
さっきのが優しく感じるほどに
引き抜こうと足を引っ張るほど、沈んでいく
ヤバい、と直感的に感じ
「ごめんって!行くから!!」
その言葉を聞いて道は満足したのか、足を沈めることをやめた
ひと安心して、役所に向き直って歩みを始める
ついに役所の目の前まで来た
並ぶ人たちは自分の存在なんか気にしてないように泣き続けている
それを無視して扉を開ける
ギィ、と音を立てて
ゆっくり扉が開く
立て付け悪いなぁ、なんて思いながらも中へと入っていく
順番待ちのベンチには、これまた泣き続ける人たち
左右に視線を向けて、受付を探す
あった
小走りで駆け寄る
「(でっか。)」
そう、受付のカウンターはデカかった
成長期を迎える前の少年には到底届かない高さ
辛うじて手は乗せられる
よし、
全力でつま先立ちをして、カウンターにいるであろう悪魔にアピールをする
「すみませんが、順番待ちをしてくださらないと困ります。」
頭上から声が掛かり、顔をあげると、眼鏡をかけた悪魔がこちらを見ていた
「でも、あの、ベルのおつかいで……」
口から出た声はなんとも情けなくて
震える足を必死で押さえつけながら悪魔の顔を見る
「ベル……あぁ、そうですか。
あなたも不幸な人ですね、まだ小さいのに。」
小さいは余計だ
そう思ってると、悪魔はくるりと振り返り、歩き始めた
「待って、どこ行くの……」
「あなた、ベルのおつかいなんでしょう?
取りに行くんです、罪人の懺悔を。」
紙袋一つですよね
と、続けて
「俺も行く、ついてく。」
こんな辛気臭いところ、いられたもんじゃない
悪魔は少し考えたあと
「良いでしょう、着いてきなさい。」
俺の手を引いて再び歩み始めた
「はい、どうぞ。壊れやすいので気を付けて持っていってくださいね。」
手渡された紙袋からは、小さな声でごめんなさい、あんなことしなければ良かった、なんて声が聞こえる
聞かなかったことにしよう
結局玄関先まで見送ってくれた悪魔に
「ありがとうございます。」
なるべく深くお辞儀をする
「ええ、素直な子は嫌いじゃありません。ベルの小間使いが嫌になったらここに来てもいいですよ。」
と、頭を撫でられた
多分二度と来ることはないと思う、そう思いながら
もう一度お辞儀をして扉に手をかける
「(やっぱ、立て付け悪いなぁ。)」
「あぁそうだ、私の名刺です。」
ユヅル少年は 名刺を ゲットした!
名刺には 名前が 書いてある!
「クロエ……さん。」
「はい、クロエですよ。」
「クロエさん、ありがとうございました。」
「ええ、またいつか。」
クロエさんに手を振って、踵を返す
「……あれ」
足を止めて考える
「ベル、どっちに曲がるって言ってたんだっけ」
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