ほら、ホラーだよ

根津美也

文字の大きさ
20 / 77

20.イシ、ステルナ

しおりを挟む
 そして次の日の夜中。果たしてぼくは昨日と同じような胸苦しさに目覚めた。意識がさめているのに手足が全く動かない。きたー、金縛り。こんな時火事になったらどうするんだろう?  全く迷惑きわまりない、と思いつつ、ぼくは呪文を唱えた。
「何か言いたいことがあるのですか?」

 するとまるで水の中で聞いているようなコポコポという雑音にまじって、聞き取りにくい言葉の断片のようなものが聞こえてきた。
「…ズコーッ…イシ…ズコーッ…イシ…」
 え? イシ?
「…イシ…ズコーッ…ステナイデ…」
「いし? すてないで?」
「…イシ…ステナイデ…ズコーッ」
 なんだ? イシって。人の名前かなんか?つまり、この人はイシとかいう人にふられてそれが悲しくて自殺でもして、それで迷って今も捨てないでと恨み言を言いたいがために幽霊になって出てきたのかな。
「チガウ…イシ…ステナイデ…ズコーッ」
 え? 違うって? じゃあ、医師、見捨てないでかな? つまり、不治の病で、お医者さんに見離されて死んだんだけれど、見捨てないでほしかった、助かりたかった、と、こういうことかな。
「チガウ…イシ…ズコーッ…イシ…ステルナ!」
 イシ、ステルナ!・・・はて?・・・意思、捨てるな!かな? これってぼくに対するメッセージかな。ぼくがあんまり意思が弱いので、激励にきた…とすると、この人はぼくの守護霊様かなにか?
「ズコーッ…ザ・ザ・ザ・ザ・ザ・ザ」
 雑音が、突然映らなくなったテレビみたいな音にかわった。いつの間にか金縛りは解けていた。それじゃ「意思、捨てるな!」は当たりかなと思ってあたりを見回した。すると、布団の上のやや上空にもやっとした灯りが浮かんでいるのが見えた。
「すまんのう、うちのぼうずは頭が悪くて」
 いつのまにか座敷オヤジもあらわれて、もやっとした灯りに向かってそんなことを言っている。
 頭が悪いってぼくのこと?
「イシとは石のことじゃよ。なんで素直に、石を捨てるな、と解釈してやらんのじゃ」
 えー?石を捨てるなだって?そんなことを言いに出てきたの? 人を金縛りにまでして!
 それに石を捨てるなって言ったって、ぼく石なんか持ってないし、何が言いたいんだよ。
「イシ・・・ステナイデ・・・イシ・・・ステルナ」
 そいつは気を取り直したらしく、またイシ、ステナイデを繰り返した。
 だから、その石ってなんだよ。
 すると座敷オヤジが見かねて通訳を買って出た。
「なんでも、この家のどこかに石がしまってあるそうじゃ。それを捨てないでくれということらしい。ほれ、ママが 納戸や物置の整理を始めたろう。それで心配になって出てきたみたいじゃ」
「じゃあ、その石はどこにある石なの?」
「オシイレ・・・ズコーッ・・・ハコノナカ・・・」
 オシイレって言ったってたくさんあるよ。
「ヘヤ・・・オシイレ・・・ズコーッ・・・」
 さっきは座敷オヤジがぼくのことを頭が悪いと言ったけど、頭が悪いのはこいつの方じゃないの? もうちょっとマシな説明ができないのだろうか。と、ぼくは言いかけて、ひらめいたものがあった。
お手伝いさんが言っていたあれ!
『これは捨てられませんね。ずっと大事に持ってなきゃね。はい、だから、この押入れの隅のほうにね。ええと掃除機』
「八畳の部屋の押し入れの中!」
 するとそいつは灯りを明滅させて、当たり!というようなリアクションを見せた。
「そうか、行ってみよう!」と座敷オヤジ。
 ちょっと待って、行ってみようって、これから? 今何時だと思ってるの?
「草木も眠る丑三つ時。頃合な時間じゃ」
「頃合って、普通、良い子の小学生は寝ている時間じゃないか」
「我らにとっては活動しやすい時間なんじゃ。すまんが一緒に来てくれ」
 ぼくはぼくの意思をステさせられた。また押し切られてしまった。

 隣の8畳の部屋は、お手伝いさんが押し入れのものをいったん外に出したもんだから、一層の混乱を極めていた。
 しかし、かの幽霊さんは我々を先導し、迷わず押し入れの一番おくにポツンとおいてある箱を示した。箱といってもあまり上等な箱ではなかった。古びた木の箱で、それには古色蒼然とした真田紐がかけられていた。さいわい、昨日お手伝いさんが一度開けたためか、紐は蝶結びになって解きやすかった。
 あけてみると、何のことはない、漬物石のようなものが一つ、ころんと入っていた。
 ぼくはいかにも希少価値のありそうな怪しげな石を想像していたので拍子が抜けた。
「なにこれ?」
「メジルシヨ・・・ズコーッ」
「メジルシ?」
 その時、聞き覚えのあるきつい声がした。
「そこにいるの誰?!」
 おばさんだった。ぼくは内心、笑ってしまった。なぜなら、おばさんは頭に鉢巻を締めて、そこに懐中電灯をさし、金属バットを持って現れたからだった。


・・・・・・・・・・・・・・・

余談

 カタカナが多くて、読みづらかったことと思います。それに、なんだ?この片言と雑音は?と思われたかも知れません。

 私が持っているスピリチュアルの知識によると、霊能力のある人に、霊が初めてコンタクトをとるときは結構片言のようなんです。それはこの世とコンタクトを取るのが不慣れなためと言葉の問題があるらしいのです。

 それを、カタカナで表現してみました。



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

【完結】カラフルな妖精たち

ひなこ
児童書・童話
星野愛虹(ほしの・あにー)は小学五年女子。絵を描くのが大好き。ある日、絵を描いていると色の妖精・彩(サイ)の一人、レッドに出会う。レッドはガスの火を変化させて見せる。サイは自分の色と同じ物質をあやつり、人の心にまで影響できる力を持つ。さらにそのサイを自由に使えるのが、愛虹たち”色使い”だ。  最近、学校では水曜日だけ現れるという「赤の魔女」が恐れられていた。が、実はサイの仲間で凶悪な「ノワール」が関わっていた。ノワールは、人間の心の隙間に入り込むことを狙っている。彼を封印するには、必要な色のサイたちをうまく集めなくてはいけない。愛虹の所有するサイは、目下、赤と白。それでは足りず、さらに光のカギもないといけない。一体どこにあるの?仲間を探し、サイを探し。   これは愛虹と仲間たちが、たくさんの色をめぐって奮闘する冒険物語。児童向け、コミカルタッチの色彩ファンタジーです。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

野良犬ぽちの冒険

KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる? ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。 だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、 気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。 やさしい人もいれば、こわい人もいる。 あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。 それでも、ぽちは 思っている。 ──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。 すこし さみしくて、すこし あたたかい、 のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

処理中です...