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四月
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「では自己紹介をお願いします。」
榊先生の横に立つと、クラスメイトに紹介される。私といえばずっと真顔プラス無言でいた。しかし自己紹介しなければならないらしい。仕方なく口を開く。
「……花蘇芳 藍です。」
ぺこりとお辞儀をする。名前だけの簡素な自己紹介。よろしくとは言わない。誰ともよろしく出来ないから。
「……では、花蘇芳さんは山吹の後ろの、あの空いている席に座ってください。」
山吹さんとはどなたさんかは分からなかったが、一つ窓側の一番後ろの席が空いていた。その前の席が山吹さんか、な……あれ、昨日寮にいた人じゃない?
あの人は一応笑顔を浮かべてはいるけど、目が笑っていない。こう、周りを見定めているかのような感じで怖い。よし、関わらないでおこう。
カタリと席に着いたのを見計らったように授業が始まる。
ああ、休み時間中ずっと見られている。鬱陶しいったらありゃしない。緊張しっぱなしでいい加減疲れてきた。動物園の動物もこんな気持ちなのかな……
「花蘇芳ちゃん、大丈夫?」
どこかに逃げようかと三回程考えた辺りで声がかかる。
「酸漿さん……大丈夫です。」
話しかけてきたのは唯一私を怖がらない酸漿さんだった。今日もふわふわと笑っている。
「そう? やっぱり転入生なんて珍しいどころじゃないからね、しばらくの間頑張れ。」
「あはは……」
愛想笑いしてなんとかその場を乗り切る。
酸漿さんは何故私を遠ざけないのだろうか。昨日からずっと疑問に思っていた。
もしかしたら一番何を考えているか分からないかもしれない。だから酸漿さんの笑顔を見るとなんとなく怖く感じてしまうのだ。
あと一時間頑張ればお昼休みだから、屋上に逃げよう。よし、決めた。
「あー無理。」
お昼休みになり、屋上で一人ぼーっとする。
見られるだけでここまで体力を削がれるとは思ってもみなかった。もう午後の授業に出る気力も体力もない。
ぺたり、右向きに横たわる。このまましばらく横になって体力を回復させようと思ってね。
風がふわりと吹く。ああ、この風が疲れを吹き飛ばしてくれたらいいのに、なんてありえない想像をしながら時間を過ごしたのだった。
榊先生の横に立つと、クラスメイトに紹介される。私といえばずっと真顔プラス無言でいた。しかし自己紹介しなければならないらしい。仕方なく口を開く。
「……花蘇芳 藍です。」
ぺこりとお辞儀をする。名前だけの簡素な自己紹介。よろしくとは言わない。誰ともよろしく出来ないから。
「……では、花蘇芳さんは山吹の後ろの、あの空いている席に座ってください。」
山吹さんとはどなたさんかは分からなかったが、一つ窓側の一番後ろの席が空いていた。その前の席が山吹さんか、な……あれ、昨日寮にいた人じゃない?
あの人は一応笑顔を浮かべてはいるけど、目が笑っていない。こう、周りを見定めているかのような感じで怖い。よし、関わらないでおこう。
カタリと席に着いたのを見計らったように授業が始まる。
ああ、休み時間中ずっと見られている。鬱陶しいったらありゃしない。緊張しっぱなしでいい加減疲れてきた。動物園の動物もこんな気持ちなのかな……
「花蘇芳ちゃん、大丈夫?」
どこかに逃げようかと三回程考えた辺りで声がかかる。
「酸漿さん……大丈夫です。」
話しかけてきたのは唯一私を怖がらない酸漿さんだった。今日もふわふわと笑っている。
「そう? やっぱり転入生なんて珍しいどころじゃないからね、しばらくの間頑張れ。」
「あはは……」
愛想笑いしてなんとかその場を乗り切る。
酸漿さんは何故私を遠ざけないのだろうか。昨日からずっと疑問に思っていた。
もしかしたら一番何を考えているか分からないかもしれない。だから酸漿さんの笑顔を見るとなんとなく怖く感じてしまうのだ。
あと一時間頑張ればお昼休みだから、屋上に逃げよう。よし、決めた。
「あー無理。」
お昼休みになり、屋上で一人ぼーっとする。
見られるだけでここまで体力を削がれるとは思ってもみなかった。もう午後の授業に出る気力も体力もない。
ぺたり、右向きに横たわる。このまましばらく横になって体力を回復させようと思ってね。
風がふわりと吹く。ああ、この風が疲れを吹き飛ばしてくれたらいいのに、なんてありえない想像をしながら時間を過ごしたのだった。
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