××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
32 / 113
一章

十九

しおりを挟む
「あら、随分早かったわね。」
「そうですね。」
「ジー、仕事早すぎない? もう少し時間かかると思ったのに。」

 ……あれ? あれれ? 気を引き締めたのは私だけ?

 三人にも爆発音が聞こえていたはずなのに、呑気に座ったままお喋り続行。え、だって爆発音だよ!? 危機的状況じゃない!? 何で呑気にお喋りしてるの!?

 私の混乱に誰も答えてくれる人はおらず、その前に第三者の声が聞こえてきた。

「ハハハ! 俺様の爆弾は高性能だからな! 周りに被害を出さずに音だけを響かせるという優れものだ! ハハハ! どうだ、ひれ伏したか!」
「リオ、五月蝿い。」
「ヴァーゴ、五月蝿いとは何だ!」
「そ、そういうところが五月蝿いんだよ。」

 馬車の外から二人分の声が聞こえてきた。リオ、ヴァーゴ……どこかで聞いたことのあるような無いような特徴的な名前。ええと、何だったかなー……

 と、記憶を辿っていると馬車の扉がバタンと音を立てて開いた。

「ここにポラリス候補がいると聞いた! 誰だ! お前がそムグッ!」
「リオ、そ、そろそろ黙って。」
「んー! むー!」

 五月蝿い人とおどおどした人の声がする。先程のリオとヴァーゴと呼ばれた二人組だろうことが容易に理解出来た。

「あちゃー、マロンにばれちゃったかな?」
「でもマロンさんはまだピンと来ていないようですよ。首を傾げていますし。」
「ガッツリ名前出たのに気付かないというのもまあ、凄いわよね。」

 会ったことがなくても名前は聞いたことがあるということは、リオサンとヴァーゴサンは相当有名人……? でも『これだ!』と確信を持てるような人物は思い当たらないかな。

 ……よし、考えることを放棄しよう! それが最善策であるような気がする! そうだそうだ!

「ん、んーんー、むーんーん!」
「リオ、う、五月蝿い。」

 そんな風に考え込んでいる間もずっとリオサン? はジタバタしているみたいだけど、ヴァーゴサン? がそれを押さえ込んでいるみたいだ。そんな気配を感じる。

 いやいやいや、暴れている人を押さえ込み続けるって、ヴァーゴサンってどんな力があるのさ! 筋力? それとも何か関節技か……?

 ヴァーゴサン? はおどおどした喋り口調なのに……。はっ、これがギャップとかいうやつか!

「おーい、マロンさんやーい。」
「はっ! どうしたのリコ。」
「どうしたのって……あれ、もしかして気が付いてないの?」
「何が?」

 私は何かに気が付いていないらしい。なんだ、何に気が付いていないんだ?

 もう一度考えてみたが、やっぱり何に気が付いていないかは分からなかった。
しおりを挟む

処理中です...