××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
31 / 113
一章

十八

しおりを挟む
 さてさて、それから二日後。私達が乗っていた船はようやく港に着いた。

 え、日にちが急に飛んだって? いやいや、船の中での私はのんびりだらだらしていただけなので省略!

 まさか無一文の私がこんなに大きな船に乗っているとはあいつらも思いもよらなかっただろうからね、船の中では安全に過ごせたよ。最初の二日くらいは閉鎖された空間だからと気を張っていたけど、最終日なんてもう本当だらだらぐだぐだ……

 くろわっさんも美味しかったし、今まで生きてきた中で一番安心出来たかもしれない。それは言い過ぎかな?

「着いたわね。」
「着きましたね。」
「じゃあ手筈通りに。ジー、よろしくね。」
「……はぁ。面倒くさい。」

 ジーは面倒くさいと言いながら一人でどこかに行ってしまった。手筈通り、と言うくらいなのだから、この四人は船の中で何かを決めていたのだろうか。

 まあ、私は全くと言って良い程ノータッチなので、何が起きているか分からない。根掘り葉掘り聞く気もない。そちらのじじょーってものもあるだろうし。

「ぷぷ、ジーはじゃんけん弱いもんねー。あはは」
「五月蝿いっ!」

 リコの笑い声の後、遠くからジーの叫び声が聞こえてきた。え、まさかリコの声、聞こえてたの? すごい地獄耳というか何というか……。

「さあ、マロン。ジーのことは忘れて、のんびり馬車に乗って目的地まで行こうか。」
「はーい。」

 タダで船にも馬車にも乗せてもらうのだから、とにかく四人に言われた通り行動する。もう既にこの四人に対しての警戒心は消え去っていた。この二日三日一緒に過ごしてみて、私をいきなり殺しては来ないだろうとある一種の信頼みたいなものが出来たのだ。だからこそ言われた通りに行動する。

 馬車なんて初めて乗るなぁ、とワクワクしながら乗り込む。どうやらなかなかの広さのようだ。多分四人で乗っても余裕がある程だろう。もちろん、気配を探っただけだが。座り心地もとても良い。こりゃあ最高だ!

 馬車がカッポカッポと動き出した。おお、振動はあまり無いのね。感動ものだ。

「あーあ、馬車の中って座っているだけだから暇なのよね。シーズ、何か面白い話は無いかしら?」
「リアス、無茶振りすぎないかい? シーズってそういう面白いことは言えなそうでしょう?」
「あらリコ、偏見は駄目よ。もしかしたらシーズは面白い話が出来る人かもしれないじゃない。」

 リアスとリコが何やら言い合いをしているようだ。私はこちらに矛先が向かないように大人しくしておく。空気を読んで、ってやつだ。

「まぁまぁ、二人とも。小生が面白いはな」

 ドォン……


 シーズが話している途中で、外から爆発音が聞こえた。殺気は感じないけれども、襲撃だろうか。馬車も止まる。

 私は気を引き締めて戦闘に備えることにした。
しおりを挟む

処理中です...