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君影 ルナ

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一章

二十三 サジタリアス

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 一方その頃、一人行動をするサジタリアスはというと。

「ちっ……」

 馬に乗って道を駆けていた。……舌打ちをしながら。




 話の発端はその前日のことだった。自分、カプリコーン、パイシーズ、アクエリアスの四人で、船を降りてからの動き方を決めていた時。どうせ皆馬車に乗って暇するだけだろうと思い込み、自分は戦術の本を読みながら話し合いに参加していた。

「……、……!」
「……?」
「……。」

 そんなに揉めることも話し合うこともないと思ってのその行動。それが裏目に出てしまうとは、この時は思わなかった。

「……!」
「……ス、サジタリアス!」
「ん?なんだ?」
「じゃんけんするよー。最初はグー! じゃんけんポン!」

 急にじゃんけんをすると言われて自分は咄嗟にグーを出してしまった。きっと三人はそれを狙ったのだろうことが分かったが、それを理解した時にはもう時すでに遅し。

 三人はパーを出し、カプリコーンに至ってはニヤニヤと笑っていた。何か悪い予感がする。

「サジタリアスの負けー。じゃあよろしくね。」
「……何が?」

「先に城に帰って、マロンの部屋を用意するように指示を出しておく。あと、俺達が着く日の食事にクロワッサンを出してもらうようにシェフに言っておいて。」
「……は?」
「あ、あと帰りがけに通る街にいる皆にもこの諸々マロンのことを軽く話しておいてー?」
「……仕事が多い。」

「サジタリアスがじゃんけんに負けたのが悪いのよ。それに本を読んでいて話もほとんど聞いていなかったのでしょう?」
「ぐっ……」

 そんなに重大な話し合い面倒の押し付け合いだとは思わなかったんだ! とは言えなかった。ただの言い訳になってしまう。

「サジタリアス、よろしくお願いしますね。小生らは馬車でのんびり城に帰りますから。」

 パイシーズにもとどめを刺され、自分は無意識のうちに頷いていた。






 という経緯があり、渋々馬を走らせる。途中、ヴァーゴとリオがいる街も通ったので二人に会い、『ポラリス候補になり得るかもしれない人物を見つけた。だから島国組は一度城に戻って、件の人物に属性鑑定を受けさせる』と伝えておいた。

 その話を聞いた二人がマロンを見に行くのか、はたまた城に先に戻るのかは分からないが、自分の知ったことではないだろう。

 自分は自分のやるべきことを成さなければ。じゃんけんに負けたのだから。
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