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一章
五十五
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わー、キャンサーとスコーピオもキラキラだったなー。サジタリアスとキャンサーと一緒に廊下を歩きながら、ぽやんとそんなことを考えていた。
キャンサーは憂いを帯びたイケメン、スコーピオは妖艶な美女……。他の皆はどんな人なのだろうと期待が高まっていく──ちなみにこの半月で綺麗な顔面に対する耐性は少しついたと思うので、思考停止することは無くなるだろう──。
「はぁ……そろそろ他の皆も帰ってくる頃か……」
そんな風にふわふわと考えに耽っていると、急にサジタリアスは疲れた様子を隠すことなくそう呟いた。お疲れ様です、と心の中で拝んでおく。サジタリアスは苦労人枠に入るみたいだからね。
「マロン、マロン!」
「はーい?」
「ボクも疲れたなー、ヨシヨシしてー?」
「……?」
キャンサーは何を言ってるんだろう……? 私はキャンサーの言いたいことが分からずにぽけらっと首を傾げる。
「キャンサー、あまりマロンを困らせるな。」
「えー? あ、そうだマロン! 遊びに行こー?」
「はぁ……話を逸らすな阿呆。マロンはまだまだ勉強しなければならないんだ。」
「えーじゃあボクにも教えられることがあれば言ってよね。」
「ふむ……それならマロンの鍛錬に付き合え。色々な人と対戦した方がマロンのためにもなるだろう。」
「はーい。」
キャンサーと対戦か……。どんな戦い方をするか分からないから楽しみかも。ワクワクしながら三人で鍛錬場に……
「まずは勉強だな。」
「「えぇ~!!」」
行かなかった。まずは頭を使え、ということらしい。せっかく体を動かす気分になっているというのに。今のところ鍛錬と言えば基礎体力をとにかくつけるのと魔法を少しだけに留めているが、もしかしたらキャンサーと手合わせ出来るかもしれない!
そんな淡い期待を持ってぶーぶーとキャンサーと私がサジタリアスに抗議するも、
「五月蝿い。」
一蹴される。ついでに睨まれた。睨むのがついでって意味分からないよね。まあ、サジタリアスの睨みにも少し慣れてきたから良いけど。
「もー、サジタリアスが先にそう言ったんじゃないか~。それにボク、最近動き回ってないから体が鈍ってそうで~早く鍛錬したいなぁって思ってぇ~」
「語尾伸ばすな気持ち悪い。」
「本当は嫌だけどサジタリアスに媚びを売ってるだけだよ。」
「尚更気持ち悪い。」
「えー……じゃあマロンがやったらどうだろうね?」
「は?」
キャンサーがニヤリとサジタリアスに向かって笑いかける。その後ブンッと私の方を振り返ったキャンサー。なんだなんだ、これから何が起きる。
「マロン、時には媚び売ることも必要だよ。だからほら、今ボクがやったみたいにサジタリアスへ媚び売ってみて!」
パチンと私に向けてウィンクするキャンサーの言動に、私は動揺してしまった。
「え、ええと……サジタリアス、だめかな?」
キャンサーに言われた通りに発言してみた。サジタリアスはそれを見て『ウッ』と呻き声を上げる。そして数秒考えた後……
「し、し、仕方ない……今日だけだぞ。」
お、お許しが出ましたっ! あのサジタリアスからお許しが出ましたっ! キャンサーとハイタッチした私は『これは使えるぞ』と内心うふふと笑ったのだった。
「やったー! サジタリアスってばチョロい~!」
「聞こえてるぞキャンサー!!」
サジタリアスの怒号が廊下に響き渡る──
キャンサーは憂いを帯びたイケメン、スコーピオは妖艶な美女……。他の皆はどんな人なのだろうと期待が高まっていく──ちなみにこの半月で綺麗な顔面に対する耐性は少しついたと思うので、思考停止することは無くなるだろう──。
「はぁ……そろそろ他の皆も帰ってくる頃か……」
そんな風にふわふわと考えに耽っていると、急にサジタリアスは疲れた様子を隠すことなくそう呟いた。お疲れ様です、と心の中で拝んでおく。サジタリアスは苦労人枠に入るみたいだからね。
「マロン、マロン!」
「はーい?」
「ボクも疲れたなー、ヨシヨシしてー?」
「……?」
キャンサーは何を言ってるんだろう……? 私はキャンサーの言いたいことが分からずにぽけらっと首を傾げる。
「キャンサー、あまりマロンを困らせるな。」
「えー? あ、そうだマロン! 遊びに行こー?」
「はぁ……話を逸らすな阿呆。マロンはまだまだ勉強しなければならないんだ。」
「えーじゃあボクにも教えられることがあれば言ってよね。」
「ふむ……それならマロンの鍛錬に付き合え。色々な人と対戦した方がマロンのためにもなるだろう。」
「はーい。」
キャンサーと対戦か……。どんな戦い方をするか分からないから楽しみかも。ワクワクしながら三人で鍛錬場に……
「まずは勉強だな。」
「「えぇ~!!」」
行かなかった。まずは頭を使え、ということらしい。せっかく体を動かす気分になっているというのに。今のところ鍛錬と言えば基礎体力をとにかくつけるのと魔法を少しだけに留めているが、もしかしたらキャンサーと手合わせ出来るかもしれない!
そんな淡い期待を持ってぶーぶーとキャンサーと私がサジタリアスに抗議するも、
「五月蝿い。」
一蹴される。ついでに睨まれた。睨むのがついでって意味分からないよね。まあ、サジタリアスの睨みにも少し慣れてきたから良いけど。
「もー、サジタリアスが先にそう言ったんじゃないか~。それにボク、最近動き回ってないから体が鈍ってそうで~早く鍛錬したいなぁって思ってぇ~」
「語尾伸ばすな気持ち悪い。」
「本当は嫌だけどサジタリアスに媚びを売ってるだけだよ。」
「尚更気持ち悪い。」
「えー……じゃあマロンがやったらどうだろうね?」
「は?」
キャンサーがニヤリとサジタリアスに向かって笑いかける。その後ブンッと私の方を振り返ったキャンサー。なんだなんだ、これから何が起きる。
「マロン、時には媚び売ることも必要だよ。だからほら、今ボクがやったみたいにサジタリアスへ媚び売ってみて!」
パチンと私に向けてウィンクするキャンサーの言動に、私は動揺してしまった。
「え、ええと……サジタリアス、だめかな?」
キャンサーに言われた通りに発言してみた。サジタリアスはそれを見て『ウッ』と呻き声を上げる。そして数秒考えた後……
「し、し、仕方ない……今日だけだぞ。」
お、お許しが出ましたっ! あのサジタリアスからお許しが出ましたっ! キャンサーとハイタッチした私は『これは使えるぞ』と内心うふふと笑ったのだった。
「やったー! サジタリアスってばチョロい~!」
「聞こえてるぞキャンサー!!」
サジタリアスの怒号が廊下に響き渡る──
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