××の十二星座

君影 ルナ

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一章

六十三 アリーズ

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 いやいやいや、ちょっと待って。マロンは『今日の晩御飯楽しみ~』くらいの軽い世間話をするかのように言ったよね? 阿保なの? 馬鹿なの? 暗殺者撃退って……

「で、どうすればいい?」
「……その暗殺者の安否は?」
「大丈夫大丈夫、殺してはいないよ。気を失ってるけど。あ、あと縄でぐるぐる巻きにしたけど。」
「う、うん……分かった。」

 確かに十二星座と正面切って戦っても瞬殺されない程の実力者のマロンなら、暗殺者も撃退出来る……のか……?

「……はぁ、今度からは撃退する前に我輩らへ一報を入れてくれ。」
「善処します!」

 そんな良い笑顔で言われても……。ああ、頭が痛くなってきた。こめかみを摩って頭痛をやり過ごす。

 あまりの衝撃発言に、今にも思考を止めたくなるっていうのに、マロンはそうさせてくれないようだ。

 というかそもそも何故我輩が頭を痛めないといけないのだ。そういうくろうにん枠はサジタリアスやヴァーゴが担うべきだろうに。

「……じゃあ我輩に引き渡してくれる?」

 もうマロンには突っ込むまい。そう決めて話を進めることにした。

「ほーい」

 本当軽いノリで返事するなよ……。結構重大な出来事でしょうが。十二星座が狙われるのはまあ良くあることだけれども、一般人のマロンにとってはそうそうない話でしょう?

 本当マロンはどこかズレているというかなんというか……

「……はぁ……」

 溜息が止まらない。ついでに頭も痛い。






暗殺者side

 フッと目が覚めた。暗いジメジメした小部屋で俺は全身ぐるぐる巻きにされ、横たわっていた。

 猿轡も嵌められ、唯一出来ることと言ったら目を使ってここがどこか考えるくらい。ぐるりぐるりと辺りを見回すと、ここは多分牢屋かどこかだろうことだけは推測出来た。

 くそっ、あのひょろっこいターゲット、ただモンじゃねぇ! 依頼者は『簡単な仕事』だなんて言っていたが、こんなの聞いてねぇじゃねぇか!

 俺だって暗殺者として培ってきたプライドもあるし、実際俺は強いと自負している。そんな俺がやすやすと拘束されるだなんて……

 あいつは……今回のターゲットは敵に回したら駄目なやつだ。そう理解した時にはもう手遅れだったのだ。

「あ、目が覚めたようだね?」

 そこまで考えた所で、誰かの声が聞こえた。トーンは明るいはずなのにどこか嘲笑が混じったような、はたまた苛立ちを表しているような、複雑な声色。

 声の主は誰だろうかと俺は視線を声の方へと向ける。鉄格子の向こう側で仁王立ちしていたのは、次代のアリーズ様とキャンサー様だった。声の主はアリーズ様、か。

 そんな二人は無表情で俺を見下ろしていた。ただそれだけなのに、俺はガタガタと体が震えてくる。汗も全身から吹き出る。呼吸も荒くなる。これは……殺気か。十二星座の殺気に当てられただけでこうも震えるものなのか。全然知りたくなかった。

「さぁて、君には色々と吐いてもらわないと。ね、キャンサー。」
「そうだね。ボク達のマロンに危害を加えようとしたんだ。徹底的に潰さないと!」

 十二星座の中の二人がターゲットに対して執着を見せる。それはつまりそういうことなのか?

 ターゲットがポラリス候補筆頭だった?



 ……いやいや、ターゲットは事前に仕入れた情報によると三属性しか扱えないはず。だからポラリス候補にすらなれないはず。

 それなのに……側に置くのは何故?
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