××の十二星座

君影 ルナ

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一章

六十六

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 げろげろげー……

 パイシーズ先生は優しく教えてくれたけど、アリーズがスパルタ過ぎる。授業もさることながら、宿題と称して出された課題の多さに私は机にでろんと突っ伏す。

 モウ、コレイジョウ、アタマニ、ナニモ、イレタクナイ。

「マロン、一休みするかい?」

 ついさっき帰ってきたカプリコーンが見兼ねて紅茶を淹れてくれた。同じくついさっき帰ってきたヴァーゴは私の隣に座って背中をポンポンと撫でて宥めてくれる。うう、その優しさが沁みる……

「ま、マロン。ここが踏ん張りどころだよ。」
「うぅー……頑張る……しかないー……」

 二人に優しくされ、少しやる気が出た。カプリコーンが淹れてくれた紅茶を一口飲み……

「おいしっ……」

 ふわっと華やかなお茶の香りが口の中に広がる。これは私が今まで飲んできた紅茶の中でもトップレベルの美味しさだ──と言ってもここに来てから初めて飲んだでしょう、だなんて意見は聞かない振り聞かない振り──。

「カプリコーンの紅茶は、す、すごく美味しくて、十二星座の皆もこぞって飲みたがるんだ。」

 へぇ、この紅茶はこの世界のトップに立つ皆が飲みたがる程美味しいものなんだね。それはすごいや。

「あはは、光栄だよね。」

 あー、カプリコーンの爽やかな笑顔に癒される……。顔を見た十二星座メンバーの中でカプリコーンは一番爽やかな王子様って感じ。まあ、顔を見る前までは笑い上戸のイメージしかなかったんだけど。

「ま、マロン……そろそろ再開しないと終わらないよ。」
「ご、ごめん。やる。」

 ヴァーゴに急かされたので宿題を進めることにする。しかし集中出来ずにチラッと何度か隣にいるヴァーゴを見つめてしまう。

 ヴァーゴの第一印象ってオドオドしている怪力っていうイメージだったから、ムッキムキな外見を想像していたんだけど……意外と細長い感じ。

 それに見た目は今のところ一番キラキラしてなくて安心するかも。後ろの髪はサジタリアスと同じくらいの長さ──肩には付かない程度──で、前髪は目が隠れる程まで伸びているからね。それになんて言ったって猫背。オドオドしている様子がここから窺える。

 それでも、ちらっと見えている鼻や口の形が綺麗だから前髪を上げたらきっと……

 そこまで考えて内心頭を振る。これ以上キラキラが増えると私の心と目が辛くなってくるからね、ヴァーゴはそのままで全然良いと思う! うん!

「ま、マロン、集中して。」
「ごっ、ごめんなさぁいっ!」

 集中していないことがヴァーゴには筒抜けだったらしい。ヴァーゴを怒らせたら多分物理的に攻撃される。そんな被害妄想を広げた私は考えることを放棄して急いで宿題に専念することにした。
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