××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
95 / 125
一章

八十二

しおりを挟む
「お、カプリコーンちゃんじゃん! おっはー!」

 あ、やっぱりAさん……じゃなくてポラリス様はそのテンションが素ですか。そうですか。

「ポラリス様、ご機嫌麗しゅう。」

 上の立場のお人に対してだからだろう、カプリコーンはいつも以上に振る舞いも、言葉遣いも、さらに雰囲気もキッチリカッチリしていた。

 わあ、笑い上戸じゃないかっこいいカプリコーンなんて珍しい。そんな不敬とも取られるようなことを私は呑気に脳内で考えていた。

「あーもー、そんな畏まらなくて良いって何度も言ってるよね?」
「は、はあ……」

「あー! ここにいたのかポラリス! 仕事放ってどこに行くつもりだゴルァ!」
「うわー五月蝿いのが来ちゃったー……」

 うわー、また新しく知らない人がこっちにやって来た。銀色の目だから目の前のポラリス様の代の十二星座様なのだろうことは推測出来た。

 が、圧倒的に人相が悪い。この私でさえも少し震えてしまいそうな程、といえば何となく分かりやすいかもしれない。

「おいゴルァポラリス! お前が仕事を溜めるからこっちに皺寄せ来るって分かってやってんのかゴルァ!」

 Aさ……ポラリス様はあんなにガン飛ばされていてもどこ吹く風。ゴルァ様(仮)はそんな様子のポラリス様を見てさらに怒りを爆発させていた。

 なんだろう、展開が早くてついていけない感じ……。そう意識を彼方に飛ばしていると、

「……マロン、取り敢えずここから抜け出そう。」

 我らのカプリコーンがボソリと私に提案する。それに音もなく頷き答え、ソロソロと離脱することにしたのだった。

 その後のポラリス様? どうなったんだろうね?








「ほわー……あの人が今のポラリス様なのかー……」
「良い人なんだよ。仕事をほっぽって遊びに行こうとする人だけど……」

 カプリコーンは顔を引き攣らせながらも、現ポラリス様のフォローをする。自由な人の元に仕える人は大変だなぁ、だなんて明後日なことを考えるしか私には出来なかった。

「あらマロン。遅いわよ。」
「アクエリアスちゃん、そんな言わなくても良いじゃな~い。ポラリス様に捕まってたの、貴女も見ていたでしょ?」
「……あの方、悪い方ではないのだけれど……ね。」

 逃げた先には、アクエリアスとスコーピオが。いつの間に、と聞く前に二人はことの次第を暴露してくれた。

「あなたがポラリス様に捕まっている間にコッソリ出て来れて良かったわ。あの方話も長いし、ずっとあのテンションだから、こちらはなかなか体力を削られるものね……」

「でもカプリコーンはアタシ達と違って優しいわよね~、マロンを助けるためにあのポラリス様へ特攻するなんて。」
「あはは、何のことかなー?」

 スコーピオの言葉を笑い飛ばすカプリコーン。まるで誤魔化すようなそれに、私は驚いてしまった。私を助けるため……?

「カプリコーン……ありがと」

 ちょん、とカプリコーンの服の裾を掴んでお礼を言う。すると、

「さ、ささささて、全員揃ったことだし、街に行きますか!」

 あからさまに話を逸らそうとするカプリコーン。まあ、異論はないのでそれに従ってゾロゾロと街に向かうことにした。





 街に行くことにばかり気が向いていたから、お礼を言った時カプリコーンの耳が赤くなっていたことに私は気付けなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

→📚️賛否分かれる面白いショートストーリー(1分以内で読了限定)

ノアキ光
大衆娯楽
(▶アプリ無しでも読めます。 目次の下から読めます) 見ていただきありがとうございます。 1分前後で読めるショートストーリーを投稿しています。 不思議なことに賛否分かれる作品で、意外なオチのラストです。 ジャンルはほとんど現代で、ほのぼの、感動、恋愛、日常、サスペンス、意外なオチ、皮肉、オカルト、ヒネリのある展開などです。 日ごとに違うジャンルを書いていきますので、そのときごとに、何が出るか楽しみにしていただければ嬉しいです。 (作品のもくじの並びは、上から順番に下っています。最新話は下になります。読んだところでしおりを挟めば、一番下までスクロールする手間が省けます) また、好みのジャンルだけ読みたい方は、各タイトル横にジャンル名を入れますので、参考にしていただければ、と思います。 短いながら、よくできた作品のみ投稿していきますので、よろしくお願いします。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...