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一章
八十九 客観side
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さて、この状況を説明するには、時を少し遡る必要があるだろう。
そもそもの前提としてこの日一日中、女性陣四人はずっと誰かに監視されていた。それも、気配を消すようにして。
まあ、それでも四人とも殺気にも見紛うような微力の気配には気付いていたので、それぞれが警戒し、だからこそ実害もなかった。
四人のうち誰に向けられたものなのか。それすらも分からないまま動くのは危険だ、と判断して泳がせたのだ。
そしてそれは城に戻り一人行動し始めた時にマロンは理解することになる。ああ、アレは私についてきたのか、と。
この前私に向けられた暗殺者は結局どこから来たのか、前回と同じ人からの命か、私を狙う理由は何か、エトセトラエトセトラ……。
そんなことを色々考えながらマロンは今日一日を楽しそうに振り返っていたのだ。そんな裏の思考をおくびにも出さずに。
そして城に戻り表の思考が暗い方向へと向かった瞬間、ついてきた暗殺者が音もなくマロンに近付き刃物を突き刺した、
──ザシュッ……
と思われたが。
「ガハッ……」
口から血を吐き出したのはその暗殺者の方だったのだ。
マロンは何事も無かったかのようにその瞬間右方向にずれて暗殺者の刃を避けた上で、隠し持っていた小さなナイフを後ろ手に持ち暗殺者の腹に一撃入れたのだから。
「もー、急に切りかかって来ないで欲しいなー? だって、」
加減、間違っちゃうから。
そう言いながらマロンは反時計回りに後ろを向く。そう、誰にも見せず隠していた左目が良く見えるように。
暗がりの中、暗殺者からはマロンのその左目だけが異様に光っているように見えたらしい。息を飲んだ。
「ひゅっ……おま、え……『紅月の悪魔』か……」
「あれ、なんか耳馴染みある呼び名だなぁ~。ってかそんなに私有名なの?」
にーっと笑いながら暗殺者へ殺気を突き刺すマロン。人が変わったようなその表情に、雰囲気に、暗殺者は動けなくなってしまった。
殺気に当てられて体が竦んだ、といえば分かりやすいだろうか。暗殺者ともあろう者が、だ。その異様さは明らかだった。
「暗殺者、の世界……で、お前、を……知らないやつ、は、いない……」
腹からダラダラと血を流しながら、息も途切れさせながら、そう暗殺者は言う。
「そもそも暗殺者って有名になっちゃ駄目じゃない?」
「っ……それ程、お前の腕は……確か、だって……ことだろ……」
「えー? 私、もうそっちの世界に戻る気もないし、もう何も殺さないって決めたし、一般人として生きてくって決めたし? 紅月の悪魔はもう死にましたーってことで良いんじゃない?」
「くっ……戻って報、告……しな……いと……」
「あ、それやめてねー? また私力加減間違って深く刺しちゃう~」
「っ……」
ブスリと一層深くナイフを突き刺しながら軽口を叩くマロン。思わずその痛みと殺気に暗殺者も一瞬息を止める。ああ、運が悪かった。そう嘆いても遅かったのだ。
『紅月の悪魔』
それは暗殺者の業界ではとてもとても有名。知らない奴はモグリと言われるほど。
それ相応の実力を持ち、幾人もの命を奪って来たのもそれだったのだ。
そもそもの前提としてこの日一日中、女性陣四人はずっと誰かに監視されていた。それも、気配を消すようにして。
まあ、それでも四人とも殺気にも見紛うような微力の気配には気付いていたので、それぞれが警戒し、だからこそ実害もなかった。
四人のうち誰に向けられたものなのか。それすらも分からないまま動くのは危険だ、と判断して泳がせたのだ。
そしてそれは城に戻り一人行動し始めた時にマロンは理解することになる。ああ、アレは私についてきたのか、と。
この前私に向けられた暗殺者は結局どこから来たのか、前回と同じ人からの命か、私を狙う理由は何か、エトセトラエトセトラ……。
そんなことを色々考えながらマロンは今日一日を楽しそうに振り返っていたのだ。そんな裏の思考をおくびにも出さずに。
そして城に戻り表の思考が暗い方向へと向かった瞬間、ついてきた暗殺者が音もなくマロンに近付き刃物を突き刺した、
──ザシュッ……
と思われたが。
「ガハッ……」
口から血を吐き出したのはその暗殺者の方だったのだ。
マロンは何事も無かったかのようにその瞬間右方向にずれて暗殺者の刃を避けた上で、隠し持っていた小さなナイフを後ろ手に持ち暗殺者の腹に一撃入れたのだから。
「もー、急に切りかかって来ないで欲しいなー? だって、」
加減、間違っちゃうから。
そう言いながらマロンは反時計回りに後ろを向く。そう、誰にも見せず隠していた左目が良く見えるように。
暗がりの中、暗殺者からはマロンのその左目だけが異様に光っているように見えたらしい。息を飲んだ。
「ひゅっ……おま、え……『紅月の悪魔』か……」
「あれ、なんか耳馴染みある呼び名だなぁ~。ってかそんなに私有名なの?」
にーっと笑いながら暗殺者へ殺気を突き刺すマロン。人が変わったようなその表情に、雰囲気に、暗殺者は動けなくなってしまった。
殺気に当てられて体が竦んだ、といえば分かりやすいだろうか。暗殺者ともあろう者が、だ。その異様さは明らかだった。
「暗殺者、の世界……で、お前、を……知らないやつ、は、いない……」
腹からダラダラと血を流しながら、息も途切れさせながら、そう暗殺者は言う。
「そもそも暗殺者って有名になっちゃ駄目じゃない?」
「っ……それ程、お前の腕は……確か、だって……ことだろ……」
「えー? 私、もうそっちの世界に戻る気もないし、もう何も殺さないって決めたし、一般人として生きてくって決めたし? 紅月の悪魔はもう死にましたーってことで良いんじゃない?」
「くっ……戻って報、告……しな……いと……」
「あ、それやめてねー? また私力加減間違って深く刺しちゃう~」
「っ……」
ブスリと一層深くナイフを突き刺しながら軽口を叩くマロン。思わずその痛みと殺気に暗殺者も一瞬息を止める。ああ、運が悪かった。そう嘆いても遅かったのだ。
『紅月の悪魔』
それは暗殺者の業界ではとてもとても有名。知らない奴はモグリと言われるほど。
それ相応の実力を持ち、幾人もの命を奪って来たのもそれだったのだ。
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