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9章 文化祭二日目
53 竜胆side
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ここでうだうだしていても時間だけがただただ過ぎていくだけ。ならば行動してしまえばいい。クラスの人には事情を説明して、それから考えよう。
ということで藍さんを再び抱き上げ、A組へと向かう。茜は桃達の様子を見に行き、空木さんは私達と一緒にA組へ。
「ここはどこ?」
「ここは花城学園、学校です。」
「がっこう! あいしってるよ! おべんきょするところでしょ!」
「そうです。」
「藍ちゃん良く知ってるねー。」
藤はそう言って藍さんの頭を撫でる。少し探るような撫で方に見えるのは気のせいだろうか。
あ、もしかして傷を治そうと……?
「あいもおべんきょしたいなー。」
「藍ちゃんはお勉強したいんだね。」
「うん! あのねあのね、ていねいなはなしかたをしないとおこられるの。だからね、おべんきょする!」
「怒られる? 誰に?」
空木さんはそう問う。しかし私はなんとなく見当がついていた。多分だがあのヒステリックに叫ぶ母親らしき人物だろう。
「……あれ、だれだろう?」
しかし藍さんは首を傾げ、その後私を見る。私なら知っているだろうと思ったのだろうか。
「誰でしょうね?」
確証もないし、わざわざ伝えることでもない。ならば黙っていよう。
ようやくクラスに戻ってきた。教室に入ると……
「遅ーい! うちのクラスの目玉が揃って来ないんだも、ん……ん?」
クラスメイトの……天部さん、だっけか。その人がぷりぷりと怒りながら私達に詰め寄った。はいいが、やはり小さい藍さんを見て首を傾げる。
「この子は……?」
「あー、ええと……」
今まで隠してきた(だろう)藍さんの本当の姿。ウィッグで白髪を隠し、カラコンで灰色の目を隠し……。
その努力を私達が壊してもいいのだろうか。そう考え、言葉が続かない。
「もしかして……誘か」
「違います!」
何故私が犯罪者扱いをされなければならないのだ。
「あれ、それに花蘇芳さんは?」
コロッと話題が変わる。いつも一緒にいるはずの藍さんがいないことに疑問を抱いたらしい。まあ、そうなるよね。
「はーい!」
「……ん?」
自分の名前を呼ばれていい返事をする藍さん。
「……んん? 花蘇芳さーん?」
「はーい!」
ニッコニコでまた返事をする。これは言うしかないか。
「……例のエートス捕獲の際、件のエートスが藍さんに能力を使ったんです。それで藍さんが幼子に……」
「なるほど。」
放送を聞いていたからか理解が早い。ありがたいことだ。
「……待って、カラコン入れたまま小さくなったの? 目痛くない? それに髪の色は……?」
どうにか躱せないだろうか。藍さんは隠したいのではないかと思う。私達にも隠していたくらいだし。
「竜胆、躱すことは難しいんじゃないかな?」
「うーん……」
「俺達の裸眼を見ても怖がられなかったでしょ? 大丈夫だよ。」
「そうですねぇ……」
「二人とも、何コソコソ話してるの? 花蘇芳さん大丈夫なの?」
逃げられない、か。
怖がられたとしても、今までと何ら変わりない。ならば覚悟を決めて。
「……これが素です。怖がられるので隠していました。」
「……え?」
「ちなみに私の青い目も素です。」
「…………え?」
「俺の目も素だよー。」
「………………ゑ?」
私達もそうだと言えば恐怖の対象が多くなるので、周りから藍さんへと向けられる恐怖心も分散されるだろう。
「……だからか!」
「何が?」
天部さんは少し考え込んだ後、何故か納得した。なんのことだろう。というか怖がらないのか?
「この三人の色とりどりなカラコンがやけに自然だなあと思ってたんだよ。裸眼なら自然なのも頷ける。」
「まあね。」
「じゃあ花蘇芳さんの髪色も素なの?」
「どうなんでしょう……私達も今日初めて知りましたから。」
とは言ったが、多分生まれつきだろう。藍さんはきっと……
「へえ、よく隠し通せたね。ひとつ屋根の下で。」
「そうですね。」
音霧には嘘看破の能力持ち──それも制限なしのアプリオリのエートス──がいるのに、それを掻い潜ったのか……。
あれ、椿の能力って常に使われているんじゃなかったっけ。ならば藍さんの黒髪が地毛ではないことくらい見破れるはずだけど……んん?
私の中で芽生えた違和感は解決することなく燻るだけだった。
ということで藍さんを再び抱き上げ、A組へと向かう。茜は桃達の様子を見に行き、空木さんは私達と一緒にA組へ。
「ここはどこ?」
「ここは花城学園、学校です。」
「がっこう! あいしってるよ! おべんきょするところでしょ!」
「そうです。」
「藍ちゃん良く知ってるねー。」
藤はそう言って藍さんの頭を撫でる。少し探るような撫で方に見えるのは気のせいだろうか。
あ、もしかして傷を治そうと……?
「あいもおべんきょしたいなー。」
「藍ちゃんはお勉強したいんだね。」
「うん! あのねあのね、ていねいなはなしかたをしないとおこられるの。だからね、おべんきょする!」
「怒られる? 誰に?」
空木さんはそう問う。しかし私はなんとなく見当がついていた。多分だがあのヒステリックに叫ぶ母親らしき人物だろう。
「……あれ、だれだろう?」
しかし藍さんは首を傾げ、その後私を見る。私なら知っているだろうと思ったのだろうか。
「誰でしょうね?」
確証もないし、わざわざ伝えることでもない。ならば黙っていよう。
ようやくクラスに戻ってきた。教室に入ると……
「遅ーい! うちのクラスの目玉が揃って来ないんだも、ん……ん?」
クラスメイトの……天部さん、だっけか。その人がぷりぷりと怒りながら私達に詰め寄った。はいいが、やはり小さい藍さんを見て首を傾げる。
「この子は……?」
「あー、ええと……」
今まで隠してきた(だろう)藍さんの本当の姿。ウィッグで白髪を隠し、カラコンで灰色の目を隠し……。
その努力を私達が壊してもいいのだろうか。そう考え、言葉が続かない。
「もしかして……誘か」
「違います!」
何故私が犯罪者扱いをされなければならないのだ。
「あれ、それに花蘇芳さんは?」
コロッと話題が変わる。いつも一緒にいるはずの藍さんがいないことに疑問を抱いたらしい。まあ、そうなるよね。
「はーい!」
「……ん?」
自分の名前を呼ばれていい返事をする藍さん。
「……んん? 花蘇芳さーん?」
「はーい!」
ニッコニコでまた返事をする。これは言うしかないか。
「……例のエートス捕獲の際、件のエートスが藍さんに能力を使ったんです。それで藍さんが幼子に……」
「なるほど。」
放送を聞いていたからか理解が早い。ありがたいことだ。
「……待って、カラコン入れたまま小さくなったの? 目痛くない? それに髪の色は……?」
どうにか躱せないだろうか。藍さんは隠したいのではないかと思う。私達にも隠していたくらいだし。
「竜胆、躱すことは難しいんじゃないかな?」
「うーん……」
「俺達の裸眼を見ても怖がられなかったでしょ? 大丈夫だよ。」
「そうですねぇ……」
「二人とも、何コソコソ話してるの? 花蘇芳さん大丈夫なの?」
逃げられない、か。
怖がられたとしても、今までと何ら変わりない。ならば覚悟を決めて。
「……これが素です。怖がられるので隠していました。」
「……え?」
「ちなみに私の青い目も素です。」
「…………え?」
「俺の目も素だよー。」
「………………ゑ?」
私達もそうだと言えば恐怖の対象が多くなるので、周りから藍さんへと向けられる恐怖心も分散されるだろう。
「……だからか!」
「何が?」
天部さんは少し考え込んだ後、何故か納得した。なんのことだろう。というか怖がらないのか?
「この三人の色とりどりなカラコンがやけに自然だなあと思ってたんだよ。裸眼なら自然なのも頷ける。」
「まあね。」
「じゃあ花蘇芳さんの髪色も素なの?」
「どうなんでしょう……私達も今日初めて知りましたから。」
とは言ったが、多分生まれつきだろう。藍さんはきっと……
「へえ、よく隠し通せたね。ひとつ屋根の下で。」
「そうですね。」
音霧には嘘看破の能力持ち──それも制限なしのアプリオリのエートス──がいるのに、それを掻い潜ったのか……。
あれ、椿の能力って常に使われているんじゃなかったっけ。ならば藍さんの黒髪が地毛ではないことくらい見破れるはずだけど……んん?
私の中で芽生えた違和感は解決することなく燻るだけだった。
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