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13章 テラス団
81 椿side
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柊木が先頭になり、皆それに倣って走る。ああ、建物が見えてきた。
「ここか……」
や、やっと着いた……。俺はマスクをしている分、余計に息が切れる。外そうかな。いや……それは……
考えに考え抜いて、結局妥協案としてマスクをずらして息をすることにした。外で外すのはやはり抵抗がある。誰の目があるか分からないから。
「よし、入るぞ。」
「いいよー!」
桃はもう既に両手に一本ずつ木刀を持って構えている。あれって一本だけよりも二本持っていた方が馬鹿力がより発揮されるのだろうか。後で聞いてみよう。聞けるなら、だが。
「行くぞ!!」
扉を開けると大きな玄関が。もしここで戦闘となってもどうにかなりそうな広さだ。玄関は狭くしてその分部屋を大きくすればいいのに、とこの状況に合わない感想を抱いてしまった。
どうでもいいことを考えていると何人もの人があちこちから出てきた。
「お前達は何者だ!」
柊木が大声で聞く。何かしらの情報を得たいとのことだろう。
「俺達はテラス団だ!」
「何!?」
「嘘マジかよ!」
柊木と酸漿がその返事に驚く。なんだっけ、それ。桃と俺は頭にハテナを浮かべる。
「おい、こいつら多分だが全員エートスだ。」
「ええ!?」
厄介だな……。相手の能力も分からない状態だから対策も立てようが無いし、こちら側で攻撃に適している能力を持つエートスは桃だけ。
……これはもしかしたら俺の出番もあるかもしれん。そうならなければいいが……
「お前達の能力は把握済みだ! 未来視に治癒、身体能力強化、嘘看破。その情報を元にこっちのメンツは構成されているからな! お前達に勝ち目はない!」
……情報収集能力はまあまあといった所か。
「さあ! 倒してしまえ!!」
「くっ……!」
相手は確かに相当強い。柊木やあの桃までもが怪我を負い、酸漿が皆の手当に奔走する。俺も殴られたところが痛い。どうしよう、このままだとあーちゃんと山吹が……
そうなるくらいならば『能力』を使うか……? でも……これは……
『ば、化け物……!』
あちらこちらに傷を作って倒れている母親は、痛みを堪えながらも俺のことを恐れた。元々化け物扱いを受けていたが、そんなのが霞むくらい恐れ戦いていた。俺の能力に。
あれは俺がやったのか? と最初は理解出来ていなかった。
母親に恐れられた俺。化け物な俺。
音霧にいてもどこか自分だけが違う気がしていた。偽りの俺しか皆は知らない。本当の俺を知られたくない。この能力を知ってしまえば、皆も俺のことを……
「うっ……」
桃の苦しそうな声が聞こえる。考えている時間はないみたいだ。嫌われる覚悟を決める、か。
「……すまんな。」
嘘をついていて。嘘看破のエートスだと皆に言いふらしていた俺自身が嘘つきなんだ。本当は。
聞こえるか聞こえないかの音量だったが、近くにいた酸漿には聞こえていたみたいで。
「ちょっと、何に謝ってんの?」
「……あとは俺が。皆、立つなよ。」
「は?」
覚悟は決めた。
俺は立ち上がり、目を閉じて意識を集中する。これ、加減が難しいんだよな。死にはしないが動けなくなる程度に加減して……
「ぐはあっ!」
「!?」
周りにいた敵全員が一斉に倒れる音がした。よし、これで通れる。
すっと目を開けると皆驚いているようだった。あの柊木でさえ何が起こっているか理解出来ていないらしい。
未来視、花学の時にもう使ってしまっていたしな。多分だがあーちゃん達がいる部屋に入る場面を見たのだろうし、アポステリオリの制限故に今は未来視を使えないのだろう。
「椿……?」
状況を理解していないのだろう。まだ俺を恐れている様子はない。だがそれも時間の問題だ。
幸せな時間は終わりだ。これからは化け物として孤独に生きていくとしよう。今までの幸せな時間を思い出しながら。
誰にも言っていない事実。
龍彦さんしか知らない事実。
俺の能力は嘘看破なんかではない。今まで能力を使えと言われたらその人の顔色などを見て判断していただけなのだ。それが偶然にも当たっていただけの事。
本当に嘘看破の能力持ちだったら良かったのに、と何度思ったことか。
「……悪い。」
この能力、俺は大嫌いだった。大嫌いだから隠していた。でも、今はそんなこと言ってられない。責められるのはあーちゃんを助け出してからだ。
一人だけは意識が保つように加減した。そいつに聞きたいことがあったからな。それの胸倉を掴む。
「……あーちゃ……花蘇芳 藍はどこだ。教えないのなら死にはしない程度に痛めつけるが?」
「ひっ! ち、地下だ! 右手側の廊下を真っ直ぐ行った先にある階段から行ける!!」
「……そうか。」
情報提供ありがとう。そして手刀で意識を刈り取る。追ってこられても面倒くさいからな。皆寝てろ。
「……行くぞ。」
「あ、ああ。」
俺を先頭にして皆走る。まだ動揺を隠せていないようだが、まあそれでもいい。
俺は『嘘看破』の能力持ちではない。
俺は、俺は……
「ここか……」
や、やっと着いた……。俺はマスクをしている分、余計に息が切れる。外そうかな。いや……それは……
考えに考え抜いて、結局妥協案としてマスクをずらして息をすることにした。外で外すのはやはり抵抗がある。誰の目があるか分からないから。
「よし、入るぞ。」
「いいよー!」
桃はもう既に両手に一本ずつ木刀を持って構えている。あれって一本だけよりも二本持っていた方が馬鹿力がより発揮されるのだろうか。後で聞いてみよう。聞けるなら、だが。
「行くぞ!!」
扉を開けると大きな玄関が。もしここで戦闘となってもどうにかなりそうな広さだ。玄関は狭くしてその分部屋を大きくすればいいのに、とこの状況に合わない感想を抱いてしまった。
どうでもいいことを考えていると何人もの人があちこちから出てきた。
「お前達は何者だ!」
柊木が大声で聞く。何かしらの情報を得たいとのことだろう。
「俺達はテラス団だ!」
「何!?」
「嘘マジかよ!」
柊木と酸漿がその返事に驚く。なんだっけ、それ。桃と俺は頭にハテナを浮かべる。
「おい、こいつら多分だが全員エートスだ。」
「ええ!?」
厄介だな……。相手の能力も分からない状態だから対策も立てようが無いし、こちら側で攻撃に適している能力を持つエートスは桃だけ。
……これはもしかしたら俺の出番もあるかもしれん。そうならなければいいが……
「お前達の能力は把握済みだ! 未来視に治癒、身体能力強化、嘘看破。その情報を元にこっちのメンツは構成されているからな! お前達に勝ち目はない!」
……情報収集能力はまあまあといった所か。
「さあ! 倒してしまえ!!」
「くっ……!」
相手は確かに相当強い。柊木やあの桃までもが怪我を負い、酸漿が皆の手当に奔走する。俺も殴られたところが痛い。どうしよう、このままだとあーちゃんと山吹が……
そうなるくらいならば『能力』を使うか……? でも……これは……
『ば、化け物……!』
あちらこちらに傷を作って倒れている母親は、痛みを堪えながらも俺のことを恐れた。元々化け物扱いを受けていたが、そんなのが霞むくらい恐れ戦いていた。俺の能力に。
あれは俺がやったのか? と最初は理解出来ていなかった。
母親に恐れられた俺。化け物な俺。
音霧にいてもどこか自分だけが違う気がしていた。偽りの俺しか皆は知らない。本当の俺を知られたくない。この能力を知ってしまえば、皆も俺のことを……
「うっ……」
桃の苦しそうな声が聞こえる。考えている時間はないみたいだ。嫌われる覚悟を決める、か。
「……すまんな。」
嘘をついていて。嘘看破のエートスだと皆に言いふらしていた俺自身が嘘つきなんだ。本当は。
聞こえるか聞こえないかの音量だったが、近くにいた酸漿には聞こえていたみたいで。
「ちょっと、何に謝ってんの?」
「……あとは俺が。皆、立つなよ。」
「は?」
覚悟は決めた。
俺は立ち上がり、目を閉じて意識を集中する。これ、加減が難しいんだよな。死にはしないが動けなくなる程度に加減して……
「ぐはあっ!」
「!?」
周りにいた敵全員が一斉に倒れる音がした。よし、これで通れる。
すっと目を開けると皆驚いているようだった。あの柊木でさえ何が起こっているか理解出来ていないらしい。
未来視、花学の時にもう使ってしまっていたしな。多分だがあーちゃん達がいる部屋に入る場面を見たのだろうし、アポステリオリの制限故に今は未来視を使えないのだろう。
「椿……?」
状況を理解していないのだろう。まだ俺を恐れている様子はない。だがそれも時間の問題だ。
幸せな時間は終わりだ。これからは化け物として孤独に生きていくとしよう。今までの幸せな時間を思い出しながら。
誰にも言っていない事実。
龍彦さんしか知らない事実。
俺の能力は嘘看破なんかではない。今まで能力を使えと言われたらその人の顔色などを見て判断していただけなのだ。それが偶然にも当たっていただけの事。
本当に嘘看破の能力持ちだったら良かったのに、と何度思ったことか。
「……悪い。」
この能力、俺は大嫌いだった。大嫌いだから隠していた。でも、今はそんなこと言ってられない。責められるのはあーちゃんを助け出してからだ。
一人だけは意識が保つように加減した。そいつに聞きたいことがあったからな。それの胸倉を掴む。
「……あーちゃ……花蘇芳 藍はどこだ。教えないのなら死にはしない程度に痛めつけるが?」
「ひっ! ち、地下だ! 右手側の廊下を真っ直ぐ行った先にある階段から行ける!!」
「……そうか。」
情報提供ありがとう。そして手刀で意識を刈り取る。追ってこられても面倒くさいからな。皆寝てろ。
「……行くぞ。」
「あ、ああ。」
俺を先頭にして皆走る。まだ動揺を隠せていないようだが、まあそれでもいい。
俺は『嘘看破』の能力持ちではない。
俺は、俺は……
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