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14章 目覚め
90 最終話
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「ん……」
朝日が顔に当たり目が覚める。あの後も幾分か眠り、夜もしっかり眠ったのに……まだ眠い。
昨日の疲れが取れていないのか、ここ何日間かあまり眠れなかったつけが回ってきたのかなんなのか。うーん、分からない。
今日からまた学校が始まるのに、このままでいいのだろうか。
「ふぁ……」
しかし布団の中はぬくぬくなので是非とも起きたくないところだ。暖房がついているとはいえ布団の中以上の天国はないだろう。もう少しごろごろしていようかな……
「おーい、藍さんやーい。飯出来んぞー。降りてこーい。」
ドンドンと部屋の扉が叩かれる。声からして茜さんのようだ。
うう、もうそんな時間か……
「はーい……」
のそのそと布団から這い出る。少し寒いけど仕方ない。制服のシャツとスカートに着替えて一階に降りる。
まず洗面所に行き、洗顔をば。
タオルで拭った後ふと鏡に映る自分を見る。白髪灰色目の姿で今日から登校しなければいけないことに少し憂鬱になる。
「……あ、早く行かないと。」
気落ちしている場合ではない。朝ご飯食べないと。ぱたぱたとリビングへと向かう。
「あれ、藍さんはその姿で学校行くんですか?」
味噌汁を飲んでいたら竜胆さんにそう聞かれる。目線を少しずらせばなんとか話せるということに昨日気がついたのでそのようにしてなんとか会話を続ける。
「う、ウィッグはテラス団の人に持っていかれてそのまま紛失しました。カラコンも然りです。まあ、カラコンは替えがありますけど、ウィッグの替えはありません。なので仕方なくこのまま行こうかと。」
「そうでしたか。私もどこかにカラコン紛失しましたし……(替えはありますけど)私も素で学校に行きましょう。しかしカラコンを付けないとなるとやはり眼鏡を持って歩かないといけないですよね……」
「あ、そういえば前眼鏡を掛けていましたね。目が悪いんですか?」
「近くの小さい文字を見る時は必要ですね。普段の生活は裸眼でもいいんですけど。」
へえ……あの綺麗な青い目をいつでも見られるようになるのか。少し楽しみかも。気持ちが上向きになる。
「え、そうなると俺だけ隠してることになるんじゃね?」
茜さんははっと気がついたようにそう話す。まあ、確かにそうなるかもね。
「そうだね。茜も外せば?」
「えー、でもなー、今の俺がカラコン取ったら色味が派手になりすぎるんだよなあ……。」
金髪に黄緑色目だものね。確かに派手かもしれないけど……
「それ言ったら私はどうなるんですか。白髪灰色目ですよ?」
派手以上に派手だよね。それもどうにも出来ない派手派手。染めることも出来ないから隠すしか出来ないタイプの派手。……何回派手って言ったかな。
茜さんの髪は染めているものだと聞いたことあったような気がするし、地毛に戻せば少しは派手さは消えると思うけどなあ。
「ま、俺はもう少し黒目のままでいいかな。」
本人がいいならそのままでもいいと思います。
部屋に戻ってブレザーを着る。ブレザーの色も白だから私の髪色と被っている。
「……このままの姿で雪に埋もれたら多分発見されないよね。」
雪の中でかくれんぼする時はいいかもしれないけれども、かくれんぼをするつもりもない。この髪色と目の色がプラスに働くことは特になさそうだ。
「わあ! あいさん、その髪色、制服に似合う!」
玄関に行くと桃さんはキラキラと目を輝かせていた。
「そ、そうですか?」
真っ直ぐな桃さんの言葉に少し照れる。
音霧の皆さんはこの色味を怖がることもなく、むしろ綺麗だと言ってくれる。そのことに嬉しさを感じる。
コートを着て靴を履き、外に出ると皆さんが待っていてくれた。
「遅くなってすみません。」
「大丈夫大丈夫。……それにしても私服ではその姿をこれまでも見てきたけど、制服だとまた雰囲気が違くなるね。いいと思うよ。」
桃さんと藤さんにそう言ってもらえると少し自信がつく……ような気がする。ふっと笑顔が零れた。
「……あーちゃん、同じ。」
つーくんは自分の髪をひとつまみし、ふにゃ、と笑った。
「うん、同じ。」
二人ともこれが生まれつきの髪の色。染めることも出来ない髪の色。私は一人ではないのだと嬉しくなる。
「ほれ、さっさと行くぞ。」
「藍さん、行きましょう。」
茜さんと竜胆さんは私に手を差し伸べる。こ、これはどうすれば……
と考えていると両手を取られる。右手に茜さん、左手に竜胆さんと。
……え、このまま行くの? ちょっとどころでなく恥ずかしいかなー? 顔が熱くなるのが自分でも分かった。
しかしそのまま二人は歩き出す。両手を繋がれたままなので私も釣られて歩き出すことに。
ぶんぶんと両手を降ってみるが、二人の手が離れていくことは無かった。うむむ、二人とも力強い。
「それにしても藍ちゃん、表情が変わったよね。」
「そうですか?」
藤さんにそう指摘されてキョトンとしてしまう。実感はないなあ……
「だよな。花学に来た時は誰も信じないんだー、とでも言いそうな感じだったじゃんか。」
「あー、なるほど、確かにそうですね。なんせそれまで人と関わっててよかったことがありませんでしたから。」
なんたって白髪灰色目だしエートスだから虐めの対象になりやすかったものね。異質な存在として。
「そうですか……。でも今はとてもいい笑顔ですよね。」
竜胆さんにいい笑顔と言われると自信がつくなあ。
「ふふ、でも私が変われたのは音霧の皆さんがいてくださったからですよ。だって私の名前は傍にいてくれる『あなた』に左右される花言葉を持っているんですから!」
目を閉じるといちごちゃんとのやり取りを思い出す。
『あ、そうだ! 昨日から聞こうと思ってたんだけどさ、藍ちゃんの名前は花の名前から取ってるの?』
『どうだろう……本当の親を知らないから、なんとも……』
『そうなのね。確かアイの花言葉は……
『あなた次第』
end
朝日が顔に当たり目が覚める。あの後も幾分か眠り、夜もしっかり眠ったのに……まだ眠い。
昨日の疲れが取れていないのか、ここ何日間かあまり眠れなかったつけが回ってきたのかなんなのか。うーん、分からない。
今日からまた学校が始まるのに、このままでいいのだろうか。
「ふぁ……」
しかし布団の中はぬくぬくなので是非とも起きたくないところだ。暖房がついているとはいえ布団の中以上の天国はないだろう。もう少しごろごろしていようかな……
「おーい、藍さんやーい。飯出来んぞー。降りてこーい。」
ドンドンと部屋の扉が叩かれる。声からして茜さんのようだ。
うう、もうそんな時間か……
「はーい……」
のそのそと布団から這い出る。少し寒いけど仕方ない。制服のシャツとスカートに着替えて一階に降りる。
まず洗面所に行き、洗顔をば。
タオルで拭った後ふと鏡に映る自分を見る。白髪灰色目の姿で今日から登校しなければいけないことに少し憂鬱になる。
「……あ、早く行かないと。」
気落ちしている場合ではない。朝ご飯食べないと。ぱたぱたとリビングへと向かう。
「あれ、藍さんはその姿で学校行くんですか?」
味噌汁を飲んでいたら竜胆さんにそう聞かれる。目線を少しずらせばなんとか話せるということに昨日気がついたのでそのようにしてなんとか会話を続ける。
「う、ウィッグはテラス団の人に持っていかれてそのまま紛失しました。カラコンも然りです。まあ、カラコンは替えがありますけど、ウィッグの替えはありません。なので仕方なくこのまま行こうかと。」
「そうでしたか。私もどこかにカラコン紛失しましたし……(替えはありますけど)私も素で学校に行きましょう。しかしカラコンを付けないとなるとやはり眼鏡を持って歩かないといけないですよね……」
「あ、そういえば前眼鏡を掛けていましたね。目が悪いんですか?」
「近くの小さい文字を見る時は必要ですね。普段の生活は裸眼でもいいんですけど。」
へえ……あの綺麗な青い目をいつでも見られるようになるのか。少し楽しみかも。気持ちが上向きになる。
「え、そうなると俺だけ隠してることになるんじゃね?」
茜さんははっと気がついたようにそう話す。まあ、確かにそうなるかもね。
「そうだね。茜も外せば?」
「えー、でもなー、今の俺がカラコン取ったら色味が派手になりすぎるんだよなあ……。」
金髪に黄緑色目だものね。確かに派手かもしれないけど……
「それ言ったら私はどうなるんですか。白髪灰色目ですよ?」
派手以上に派手だよね。それもどうにも出来ない派手派手。染めることも出来ないから隠すしか出来ないタイプの派手。……何回派手って言ったかな。
茜さんの髪は染めているものだと聞いたことあったような気がするし、地毛に戻せば少しは派手さは消えると思うけどなあ。
「ま、俺はもう少し黒目のままでいいかな。」
本人がいいならそのままでもいいと思います。
部屋に戻ってブレザーを着る。ブレザーの色も白だから私の髪色と被っている。
「……このままの姿で雪に埋もれたら多分発見されないよね。」
雪の中でかくれんぼする時はいいかもしれないけれども、かくれんぼをするつもりもない。この髪色と目の色がプラスに働くことは特になさそうだ。
「わあ! あいさん、その髪色、制服に似合う!」
玄関に行くと桃さんはキラキラと目を輝かせていた。
「そ、そうですか?」
真っ直ぐな桃さんの言葉に少し照れる。
音霧の皆さんはこの色味を怖がることもなく、むしろ綺麗だと言ってくれる。そのことに嬉しさを感じる。
コートを着て靴を履き、外に出ると皆さんが待っていてくれた。
「遅くなってすみません。」
「大丈夫大丈夫。……それにしても私服ではその姿をこれまでも見てきたけど、制服だとまた雰囲気が違くなるね。いいと思うよ。」
桃さんと藤さんにそう言ってもらえると少し自信がつく……ような気がする。ふっと笑顔が零れた。
「……あーちゃん、同じ。」
つーくんは自分の髪をひとつまみし、ふにゃ、と笑った。
「うん、同じ。」
二人ともこれが生まれつきの髪の色。染めることも出来ない髪の色。私は一人ではないのだと嬉しくなる。
「ほれ、さっさと行くぞ。」
「藍さん、行きましょう。」
茜さんと竜胆さんは私に手を差し伸べる。こ、これはどうすれば……
と考えていると両手を取られる。右手に茜さん、左手に竜胆さんと。
……え、このまま行くの? ちょっとどころでなく恥ずかしいかなー? 顔が熱くなるのが自分でも分かった。
しかしそのまま二人は歩き出す。両手を繋がれたままなので私も釣られて歩き出すことに。
ぶんぶんと両手を降ってみるが、二人の手が離れていくことは無かった。うむむ、二人とも力強い。
「それにしても藍ちゃん、表情が変わったよね。」
「そうですか?」
藤さんにそう指摘されてキョトンとしてしまう。実感はないなあ……
「だよな。花学に来た時は誰も信じないんだー、とでも言いそうな感じだったじゃんか。」
「あー、なるほど、確かにそうですね。なんせそれまで人と関わっててよかったことがありませんでしたから。」
なんたって白髪灰色目だしエートスだから虐めの対象になりやすかったものね。異質な存在として。
「そうですか……。でも今はとてもいい笑顔ですよね。」
竜胆さんにいい笑顔と言われると自信がつくなあ。
「ふふ、でも私が変われたのは音霧の皆さんがいてくださったからですよ。だって私の名前は傍にいてくれる『あなた』に左右される花言葉を持っているんですから!」
目を閉じるといちごちゃんとのやり取りを思い出す。
『あ、そうだ! 昨日から聞こうと思ってたんだけどさ、藍ちゃんの名前は花の名前から取ってるの?』
『どうだろう……本当の親を知らないから、なんとも……』
『そうなのね。確かアイの花言葉は……
『あなた次第』
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