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14章 目覚め
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「……で、あーちゃん。さっきの数秒の光はあーちゃんか?」
つーくんは安心したような表情から一変、探るような表情に。
ああ、やっぱりそこ気になるよね。
「……多分そう、かな。」
先程のことを思い出す──
竜胆さんの意識を探っていた私は一度目を開け、深呼吸をした。
『見つからない……』
がむしゃらに探してみたが、いまいちコツが掴めない。本当にこれで上手くいくのかも全く分からない。
『分からないけど、可能性がゼロではないならやらないと。』
少しの可能性にでも掛けたいと思う程私の心は疲弊してきている。このままずっと待っているなんて出来ない。
でもそもそも意識ってどれよ。それが分かれば能力使って浮き上がらせることも出来るのだが……。
『もう一度……』
探せ、探せ、探せ。目を閉じて口を閉じて意識を集中させろ。
数分集中していると、奥底に微かに青い靄を感じた。なんとなくこれだと理解した私はそれを引き上げようと能力を使う──
能力を使おうとした瞬間、文化祭の時に藤さんが出したものと同じような光が数秒続き、その光に従って青い靄を引き上げたのだった。
「あの光の力を借りて竜胆さんの意識を浮き上がらせたことで、竜胆さんは目を覚ました、んだと思う。」
「……そうか。藤の時の光は一瞬だけだったが、あーちゃんのは数秒だったっていうのは……あーちゃんがアプリオリのエートスだったからだろうか。」
「うーん、それは分からない。そもそも何故光るといつも以上の力を出せるのかも分からないし。」
「……確かに。」
「おい、今光らせたのは藍か?」
「茜さん。……はい、多分ですけど私です。」
ぱたぱたと小走りで売店に行ってた組が戻ってきた。
「なんかあの光のおかげで気分が上がったよ!」
「そうそう。なんか俺も気分がほわーって明るくなった。」
「だな。少し気分が軽くなったのは確かだ。」
「……ん。」
皆さんそうなのね……。
藤さんが光らせた時は対象以外の人にも治癒の効果があったし、今回も同様なのだろう。
意識がない人は目覚め、意識がある人は気分が上がる。という感じかな?
光について皆で語っていると、ガラガラと病室の扉か開いた。
「お、彼女さんと……お友達さんですかな? 山吹さんはもう大丈夫ですよ。少しの間は安静にした方がいいかもしれないけれども、もう帰ってもらっても問題ありませんよ。」
「ありがとうございます。お世話になりました。」
「はい。では私はこれで。」
全員で深々とお礼すると、一言返したお医者さんは急ぎ気味で隣の病室に入っていった。相当忙しいのだろうことが伺えた。
「よし、帰るか!」
茜さんの声を合図に、皆動き出した。
お昼ご飯を病室で食べてから帰り支度も諸々もして、寮に戻ってきた。ちなみにお昼ご飯は鮭おにぎりでした。美味しかったです。
帰り道も竜胆さんのことを視界になるべく入れないようにして──見ればきっとまた思い出してしまうだろうから──なんとか帰ってきたわけで。
なんかどっと疲れた気がする。心身共に。
ソファにぽへっと座り、目を閉じる。ああ、このまま少し昼寝でもしてしまおうか……
「茜ー、私のカラコン目から取りました?」
「取るわけねえだろ。兄弟だとしてもそんなことしたくねえからな?」
「そうですか。ではどこかで落としてきたんですかね。殴られた時でしょうか。」
「そこら辺だろうな。」
竜胆さんの声を聞いただけで体がピクリと反応する。気にしない気にしない。
他に意識を集中させようと、ついていたテレビに耳を集中させる。どうやらニュースらしいことは分かった。
『全国が白い光に包まれた現象はテラス現象と呼ばれていて、エートスが普段以上の力を出すことが出来る奇跡のような現象でして。
しかし普通ならエートスがいる地域の中の狭い範囲で作用するわけですが、今回全国にテラス現象が広がったということは、相当強い力を持ったエートスによるものだと思われます。
いやあ、私も生きている間にテラス現象に出会えるとは思わなかったので僥倖ですよ。ハハハ……!』
あれ、これってもしかして私が光らせたものの話? 光ったのは全国だったの? 随分規模が大きいこと……。思わず他人事のような感想が出てしまった。
もっとエートス関連の情報があるのかと気になって目を開ける。そこには昨日病院のテレビに映っていた人とはまた違ったエートスの専門家らしき人物が嬉々として話していた。
この人はエートスに肯定的なのね。専門家にも色々違いがあるんだなあ。
「テラス現象、か……」
テラス、と聞いてまず思い浮かんだのはテラス団。もしかしてテラス現象から名前を取ったのかな。
奇跡のような現象、ね。
「だからいつも以上の力が出るのか……」
今回、とても集中して集中して集中した先でテラス現象が起こったわけだから、普段は使えないな。あまりにも気力を使うから。
今だって──テラス現象だけが原因ではないが──とても疲れているもの。テレビを見るのも程々にして仮眠を取ろうかなと思わせるくらいだからね。
そう考えると余計に眠くなってきたかも。自室に戻るのも面倒くさくなってきたなあ……ここで少し眠ってしまおうか……
ソファの上で横たわり、猫が丸くなるような感じで縮こまる。なるべく邪魔にならないように……
ふっと意識は闇の中へと落ちていった。
─────
次回、いよいよ最終回!
つーくんは安心したような表情から一変、探るような表情に。
ああ、やっぱりそこ気になるよね。
「……多分そう、かな。」
先程のことを思い出す──
竜胆さんの意識を探っていた私は一度目を開け、深呼吸をした。
『見つからない……』
がむしゃらに探してみたが、いまいちコツが掴めない。本当にこれで上手くいくのかも全く分からない。
『分からないけど、可能性がゼロではないならやらないと。』
少しの可能性にでも掛けたいと思う程私の心は疲弊してきている。このままずっと待っているなんて出来ない。
でもそもそも意識ってどれよ。それが分かれば能力使って浮き上がらせることも出来るのだが……。
『もう一度……』
探せ、探せ、探せ。目を閉じて口を閉じて意識を集中させろ。
数分集中していると、奥底に微かに青い靄を感じた。なんとなくこれだと理解した私はそれを引き上げようと能力を使う──
能力を使おうとした瞬間、文化祭の時に藤さんが出したものと同じような光が数秒続き、その光に従って青い靄を引き上げたのだった。
「あの光の力を借りて竜胆さんの意識を浮き上がらせたことで、竜胆さんは目を覚ました、んだと思う。」
「……そうか。藤の時の光は一瞬だけだったが、あーちゃんのは数秒だったっていうのは……あーちゃんがアプリオリのエートスだったからだろうか。」
「うーん、それは分からない。そもそも何故光るといつも以上の力を出せるのかも分からないし。」
「……確かに。」
「おい、今光らせたのは藍か?」
「茜さん。……はい、多分ですけど私です。」
ぱたぱたと小走りで売店に行ってた組が戻ってきた。
「なんかあの光のおかげで気分が上がったよ!」
「そうそう。なんか俺も気分がほわーって明るくなった。」
「だな。少し気分が軽くなったのは確かだ。」
「……ん。」
皆さんそうなのね……。
藤さんが光らせた時は対象以外の人にも治癒の効果があったし、今回も同様なのだろう。
意識がない人は目覚め、意識がある人は気分が上がる。という感じかな?
光について皆で語っていると、ガラガラと病室の扉か開いた。
「お、彼女さんと……お友達さんですかな? 山吹さんはもう大丈夫ですよ。少しの間は安静にした方がいいかもしれないけれども、もう帰ってもらっても問題ありませんよ。」
「ありがとうございます。お世話になりました。」
「はい。では私はこれで。」
全員で深々とお礼すると、一言返したお医者さんは急ぎ気味で隣の病室に入っていった。相当忙しいのだろうことが伺えた。
「よし、帰るか!」
茜さんの声を合図に、皆動き出した。
お昼ご飯を病室で食べてから帰り支度も諸々もして、寮に戻ってきた。ちなみにお昼ご飯は鮭おにぎりでした。美味しかったです。
帰り道も竜胆さんのことを視界になるべく入れないようにして──見ればきっとまた思い出してしまうだろうから──なんとか帰ってきたわけで。
なんかどっと疲れた気がする。心身共に。
ソファにぽへっと座り、目を閉じる。ああ、このまま少し昼寝でもしてしまおうか……
「茜ー、私のカラコン目から取りました?」
「取るわけねえだろ。兄弟だとしてもそんなことしたくねえからな?」
「そうですか。ではどこかで落としてきたんですかね。殴られた時でしょうか。」
「そこら辺だろうな。」
竜胆さんの声を聞いただけで体がピクリと反応する。気にしない気にしない。
他に意識を集中させようと、ついていたテレビに耳を集中させる。どうやらニュースらしいことは分かった。
『全国が白い光に包まれた現象はテラス現象と呼ばれていて、エートスが普段以上の力を出すことが出来る奇跡のような現象でして。
しかし普通ならエートスがいる地域の中の狭い範囲で作用するわけですが、今回全国にテラス現象が広がったということは、相当強い力を持ったエートスによるものだと思われます。
いやあ、私も生きている間にテラス現象に出会えるとは思わなかったので僥倖ですよ。ハハハ……!』
あれ、これってもしかして私が光らせたものの話? 光ったのは全国だったの? 随分規模が大きいこと……。思わず他人事のような感想が出てしまった。
もっとエートス関連の情報があるのかと気になって目を開ける。そこには昨日病院のテレビに映っていた人とはまた違ったエートスの専門家らしき人物が嬉々として話していた。
この人はエートスに肯定的なのね。専門家にも色々違いがあるんだなあ。
「テラス現象、か……」
テラス、と聞いてまず思い浮かんだのはテラス団。もしかしてテラス現象から名前を取ったのかな。
奇跡のような現象、ね。
「だからいつも以上の力が出るのか……」
今回、とても集中して集中して集中した先でテラス現象が起こったわけだから、普段は使えないな。あまりにも気力を使うから。
今だって──テラス現象だけが原因ではないが──とても疲れているもの。テレビを見るのも程々にして仮眠を取ろうかなと思わせるくらいだからね。
そう考えると余計に眠くなってきたかも。自室に戻るのも面倒くさくなってきたなあ……ここで少し眠ってしまおうか……
ソファの上で横たわり、猫が丸くなるような感じで縮こまる。なるべく邪魔にならないように……
ふっと意識は闇の中へと落ちていった。
─────
次回、いよいよ最終回!
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