『あなた次第』 【本編は完結】

君影 ルナ

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番外編(続)

8 ねつ?

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椿side

「けけけ……」

 勝ち誇ったように笑う柊木が意識のないあーちゃんを抱える。山吹は面白くなさそうに不貞腐れていた。

 そういう俺も少し眉間の皺を増やし、鞄の持ち手をギリっと握りしめる。はて、このようなものには言い出しっぺの法則というものがあるのではなかっただろうか。それなのに何故俺にその役が回ってこないのだ。解せぬ。

 俺だって普段から重い本を何冊も持ち運んでいるから腕力には自信があるというのに。

「ちょ、椿顔怖えぞ!」
「……いつも通りだが?」
「いーや、絶対怖ぇ!」
「……何故かは分かっているだろう。」
「まーな。だが譲らん。」
「……。」

 そう言って一人でケラケラ笑う柊木と、ジト目で柊木を見つめる俺と山吹。この図が寮に着くまで続いたのだった。














「おーい、藤ー。帰ってるんだろー?」

 寮に帰ってきて早々、酸漿を呼び出す柊木。何かあったのだろうか。俺と山吹はよく分からないというような表情のままリビングへ入ると、酸漿はソファでのんびりしていた。

「何さー。」
「藍の体温がどんどん上がっていくように感じてな。」
「あらら、風邪?」
「さあ? だが今の今まで元気にしていたからどんなもんかと思ってな。」
「ふーん。で、なんで俺に聞くの?」
「たまに保健室に行って応急処置の方法とか習ってるんだろ? 見てやってくれよ。」
「いや俺医者じゃないし。それならたっちゃん先生に見せた方が良くない? 多分まだ帰ってないと思うし。」
「うっ……」

 酸漿のその提案に、柊木は顔を歪ませて言葉も詰まらせる。ちなみに俺と山吹はピタリと体が固まる。酸漿の言うたっちゃん先生とはもしかしなくてもあの保健医だよな……。

 あの人、テンションが高くて苦手なんだよなぁ……だがあーちゃんの体調の方が心配だからな……でもなぁ……

 俺の頭の中では葛藤が続く。あの保健医から離れて自室で籠っているか、それとも苦手な人あの保健医が近くにいるとしてもあーちゃんの元にいるか。

 うーむ、悩ましい。














 結局後者を選んだ俺はリビングで待つ。

「藍ちゃん大丈夫かな?」

 酸漿が保健医を呼ぶと、その人はすぐ駆けつけてくれた。ちなみに今診察中だ。多分ただの風邪だろうが、やはり心配にはなる。それは皆同じようだった。早く結果を聞きたいとそわそわする。

 その時ガチャリと廊下に続く扉が開き、保健医が入ってきた。桃と酸漿以外の三人は少し緊張したように体が固まる。

 さて、何と言われるだろうか……
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