121 / 127
番外編(続)
8 ねつ?
しおりを挟む
椿side
「けけけ……」
勝ち誇ったように笑う柊木が意識のないあーちゃんを抱える。山吹は面白くなさそうに不貞腐れていた。
そういう俺も少し眉間の皺を増やし、鞄の持ち手をギリっと握りしめる。はて、このようなものには言い出しっぺの法則というものがあるのではなかっただろうか。それなのに何故俺にその役が回ってこないのだ。解せぬ。
俺だって普段から重い本を何冊も持ち運んでいるから腕力には自信があるというのに。
「ちょ、椿顔怖えぞ!」
「……いつも通りだが?」
「いーや、絶対怖ぇ!」
「……何故かは分かっているだろう。」
「まーな。だが譲らん。」
「……。」
そう言って一人でケラケラ笑う柊木と、ジト目で柊木を見つめる俺と山吹。この図が寮に着くまで続いたのだった。
「おーい、藤ー。帰ってるんだろー?」
寮に帰ってきて早々、酸漿を呼び出す柊木。何かあったのだろうか。俺と山吹はよく分からないというような表情のままリビングへ入ると、酸漿はソファでのんびりしていた。
「何さー。」
「藍の体温がどんどん上がっていくように感じてな。」
「あらら、風邪?」
「さあ? だが今の今まで元気にしていたからどんなもんかと思ってな。」
「ふーん。で、なんで俺に聞くの?」
「たまに保健室に行って応急処置の方法とか習ってるんだろ? 見てやってくれよ。」
「いや俺医者じゃないし。それならたっちゃん先生に見せた方が良くない? 多分まだ帰ってないと思うし。」
「うっ……」
酸漿のその提案に、柊木は顔を歪ませて言葉も詰まらせる。ちなみに俺と山吹はピタリと体が固まる。酸漿の言うたっちゃん先生とはもしかしなくてもあの保健医だよな……。
あの人、テンションが高くて苦手なんだよなぁ……だがあーちゃんの体調の方が心配だからな……でもなぁ……
俺の頭の中では葛藤が続く。あの保健医から離れて自室で籠っているか、それとも苦手な人が近くにいるとしてもあーちゃんの元にいるか。
うーむ、悩ましい。
結局後者を選んだ俺はリビングで待つ。
「藍ちゃん大丈夫かな?」
酸漿が保健医を呼ぶと、その人はすぐ駆けつけてくれた。ちなみに今診察中だ。多分ただの風邪だろうが、やはり心配にはなる。それは皆同じようだった。早く結果を聞きたいとそわそわする。
その時ガチャリと廊下に続く扉が開き、保健医が入ってきた。桃と酸漿以外の三人は少し緊張したように体が固まる。
さて、何と言われるだろうか……
「けけけ……」
勝ち誇ったように笑う柊木が意識のないあーちゃんを抱える。山吹は面白くなさそうに不貞腐れていた。
そういう俺も少し眉間の皺を増やし、鞄の持ち手をギリっと握りしめる。はて、このようなものには言い出しっぺの法則というものがあるのではなかっただろうか。それなのに何故俺にその役が回ってこないのだ。解せぬ。
俺だって普段から重い本を何冊も持ち運んでいるから腕力には自信があるというのに。
「ちょ、椿顔怖えぞ!」
「……いつも通りだが?」
「いーや、絶対怖ぇ!」
「……何故かは分かっているだろう。」
「まーな。だが譲らん。」
「……。」
そう言って一人でケラケラ笑う柊木と、ジト目で柊木を見つめる俺と山吹。この図が寮に着くまで続いたのだった。
「おーい、藤ー。帰ってるんだろー?」
寮に帰ってきて早々、酸漿を呼び出す柊木。何かあったのだろうか。俺と山吹はよく分からないというような表情のままリビングへ入ると、酸漿はソファでのんびりしていた。
「何さー。」
「藍の体温がどんどん上がっていくように感じてな。」
「あらら、風邪?」
「さあ? だが今の今まで元気にしていたからどんなもんかと思ってな。」
「ふーん。で、なんで俺に聞くの?」
「たまに保健室に行って応急処置の方法とか習ってるんだろ? 見てやってくれよ。」
「いや俺医者じゃないし。それならたっちゃん先生に見せた方が良くない? 多分まだ帰ってないと思うし。」
「うっ……」
酸漿のその提案に、柊木は顔を歪ませて言葉も詰まらせる。ちなみに俺と山吹はピタリと体が固まる。酸漿の言うたっちゃん先生とはもしかしなくてもあの保健医だよな……。
あの人、テンションが高くて苦手なんだよなぁ……だがあーちゃんの体調の方が心配だからな……でもなぁ……
俺の頭の中では葛藤が続く。あの保健医から離れて自室で籠っているか、それとも苦手な人が近くにいるとしてもあーちゃんの元にいるか。
うーむ、悩ましい。
結局後者を選んだ俺はリビングで待つ。
「藍ちゃん大丈夫かな?」
酸漿が保健医を呼ぶと、その人はすぐ駆けつけてくれた。ちなみに今診察中だ。多分ただの風邪だろうが、やはり心配にはなる。それは皆同じようだった。早く結果を聞きたいとそわそわする。
その時ガチャリと廊下に続く扉が開き、保健医が入ってきた。桃と酸漿以外の三人は少し緊張したように体が固まる。
さて、何と言われるだろうか……
0
あなたにおすすめの小説
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる