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番外編(続)
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藤side
「同類? は? 何言ってんだ? 俺とりんは明らかに違ぇだろ。」
竜胆のその言葉に対して真顔で言い返した茜。ああ、それくらいにしてあげないとほら、竜胆涙目になって……え、まじか。泣きそうになってるじゃん。竜胆には悪いけどウケる。竜胆っていつでも笑っているだけのイメージだったからね。でも笑顔以外の表情が出てきたことで人間らしさが垣間見得て良いんじゃないかな? 知らんけど。あはは。
「だって考えてもみろや。好き好き攻撃を一方的に仕掛けるりんと、そっと傍に行くだけに留めておく俺。藍にかかるストレス具合が随分違ぇだろ。」
「……。」
ドヤ顔で言い切ったそこの茜さんや、そろそろ本格的にやめてあげな? 自分の行動が裏目に出ていただなんて考えたらそりゃあ傷つくでしょ。特に今まで完璧人間だと言われてきて、そのことにプライドもあるだろう竜胆だからね、余計に傷ついちゃうんじゃない?
「てことでりんは少しの間藍から離れてた方が良いんじゃね?」
「……無理。」
竜胆は顔を真っ青にしながらふるふると震えていた。まあ、好きな人とは一緒にいたいって気持ち、分からんでもないけどね。
俺は恋愛の意味で好きな人はまだいないけど、音霧メンバーは皆友達として好きだからね。そんな皆とは一緒にいたいと思うよ。
「まあまあ、皆落ち着いて。竜胆、離れるって言っても寮は同じだからそこまで深刻にならなくて良いと思うよ?」
「でも……」
「……あーちゃんが元気になる方が大切じゃないか?」
「っ……! ……分かった。僕が我慢する。」
椿の一声で竜胆が我慢を決めた。おお、あんなに渋ってたのに。藍ちゃんの体調の方が心配なんだろうね。まあ、俺も心配ではあるけれども。
あれ、そういえばまた竜胆の一人称が僕に変わってたよね。もしかして僕って言ってる時の方が素なのかな? だとしたら嬉しいよねー。俺達の前で少しは気を抜けているってことでしょ?
「ふふ……」
「おい藤、何一人で笑ってんだよ。怖。」
「いいじゃん別に。」
茜にドン引きされたけど、まあいい。それくらいで傷つく俺ではないのだから。
「……あ、あのぅ……」
あらら、あのたっちゃん先生が俺達の空気に呑まれていつものように振る舞えてないらしい。おずおずと手を挙げるたっちゃん先生の姿を見て俺は珍しいこともあるもんだ、と驚いた。いつもなら『エートスが近くにいる! きゃっ、最高!』なんて言いかねないのに。
たっちゃん先生の存在を忘れかけてたのは……ごめん。心の中で謝っておく。
「どしたのたっちゃん先生。」
「この場にいたいのは山々だけれども、そろそろ帰らないといけないから……」
「ああ、そうだったね。たっちゃん先生は学外から来てるんだっけ。」
「そうなのよ。だからそろそろ帰るわね。本当はもう少しこの場を堪能してから帰りたいのだけれどね。」
「あはは、」
珍しく大人しいと思ったけど、やっぱりたっちゃん先生はたっちゃん先生だった。そのことに安堵して笑いが出てきた。
「同類? は? 何言ってんだ? 俺とりんは明らかに違ぇだろ。」
竜胆のその言葉に対して真顔で言い返した茜。ああ、それくらいにしてあげないとほら、竜胆涙目になって……え、まじか。泣きそうになってるじゃん。竜胆には悪いけどウケる。竜胆っていつでも笑っているだけのイメージだったからね。でも笑顔以外の表情が出てきたことで人間らしさが垣間見得て良いんじゃないかな? 知らんけど。あはは。
「だって考えてもみろや。好き好き攻撃を一方的に仕掛けるりんと、そっと傍に行くだけに留めておく俺。藍にかかるストレス具合が随分違ぇだろ。」
「……。」
ドヤ顔で言い切ったそこの茜さんや、そろそろ本格的にやめてあげな? 自分の行動が裏目に出ていただなんて考えたらそりゃあ傷つくでしょ。特に今まで完璧人間だと言われてきて、そのことにプライドもあるだろう竜胆だからね、余計に傷ついちゃうんじゃない?
「てことでりんは少しの間藍から離れてた方が良いんじゃね?」
「……無理。」
竜胆は顔を真っ青にしながらふるふると震えていた。まあ、好きな人とは一緒にいたいって気持ち、分からんでもないけどね。
俺は恋愛の意味で好きな人はまだいないけど、音霧メンバーは皆友達として好きだからね。そんな皆とは一緒にいたいと思うよ。
「まあまあ、皆落ち着いて。竜胆、離れるって言っても寮は同じだからそこまで深刻にならなくて良いと思うよ?」
「でも……」
「……あーちゃんが元気になる方が大切じゃないか?」
「っ……! ……分かった。僕が我慢する。」
椿の一声で竜胆が我慢を決めた。おお、あんなに渋ってたのに。藍ちゃんの体調の方が心配なんだろうね。まあ、俺も心配ではあるけれども。
あれ、そういえばまた竜胆の一人称が僕に変わってたよね。もしかして僕って言ってる時の方が素なのかな? だとしたら嬉しいよねー。俺達の前で少しは気を抜けているってことでしょ?
「ふふ……」
「おい藤、何一人で笑ってんだよ。怖。」
「いいじゃん別に。」
茜にドン引きされたけど、まあいい。それくらいで傷つく俺ではないのだから。
「……あ、あのぅ……」
あらら、あのたっちゃん先生が俺達の空気に呑まれていつものように振る舞えてないらしい。おずおずと手を挙げるたっちゃん先生の姿を見て俺は珍しいこともあるもんだ、と驚いた。いつもなら『エートスが近くにいる! きゃっ、最高!』なんて言いかねないのに。
たっちゃん先生の存在を忘れかけてたのは……ごめん。心の中で謝っておく。
「どしたのたっちゃん先生。」
「この場にいたいのは山々だけれども、そろそろ帰らないといけないから……」
「ああ、そうだったね。たっちゃん先生は学外から来てるんだっけ。」
「そうなのよ。だからそろそろ帰るわね。本当はもう少しこの場を堪能してから帰りたいのだけれどね。」
「あはは、」
珍しく大人しいと思ったけど、やっぱりたっちゃん先生はたっちゃん先生だった。そのことに安堵して笑いが出てきた。
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