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番外編
よし、刈ろう!
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「髪の毛伸びてきたな……」
そう呟いて自分の白い髪を摘む。最近暑くなってきたので髪を切りたい所ではあるが、この色を他人に見せたくないと今までマスターに切ってもらっていた。だが今ここにマスターはいない。それに忙しいだろうから今すぐ切ってもらうことは出来ないだろう。
自分で切ろうとした時もあったが、そこまで器用ではないのでガタガタになってしまう。それならどうするか……
「よし、刈ろう。」
思い立ったが吉日、今から髪を刈ろうと決めた。
「今お風呂場使う方いませんよね?」
リビングで寛いでいた竜胆さんに一応聞いてみてから作業に移ろうと思う。
「多分いないと思いますが……」
「あ、あとバリカンってどこにあります?」
髪を刈るならやっぱりバリカンでしょう! 自分では持っていないけれども、きっと寮にならある……と思いたい。
「……は? バリカン? ありますけど……藍さん、一体何に使おうと思ってたんです?」
「自分の髪を刈ろうと思って。」
「…………は!?」
そこまで驚くことだろうか。いつもの穏やかな竜胆さんは鳴りを潜め、ただひたすらに目を見開いて驚いていた。あと声が大きい。
「ゆ、ゆ、ゆ……」
「ゆ?」
「許しませんっ! お母さんは許しませんよ!」
どうしよう、何故か分からないけれども竜胆さんは混乱しているらしい。あんなに地雷だったはずのお母さん発言を自らするなんて。
「竜胆さん、少し休まれた方が……」
「もう少し自分の髪の毛を大事にしてあげてくださいよ!」
「えー?」
そこー?
「えー、じゃありませんよ! 仮にもあなたは女の子でしょう!?」
「だってこの髪色嫌いなんですもの。どうせなら刈り上げて坊主にしていた方が周りに溶け込めるかと思いまし……」
「許しませんっ!」
竜胆さんは叫ぶ。えー? そこまで必死になることかなぁ?
「おーおー、珍しくりんが五月蝿え。」
その時、そっとリビングに入ってきた茜さんは耳を塞いで五月蝿え五月蝿えと騒ぐ。この際茜さんにこの(五月蝿い)竜胆さんを押し付けて、私は髪を刈ろう。
「茜さん、バリカンどこにあります?」
「却下。」
「えー。まだ何も言っていないのに。」
「この状況がおかしかったから未来を見たが、丸刈りになんてさせねぇからな。」
「えー。じゃあどうしろと言うんです?」
今までなら自分で切ってもウィッグで隠せたからガタガタでも良かったけど、今は白髪が露わになっている。さすがにガタガタのまま生活はしたくない。だから丸刈りにしようと思ったのだが……そう言われたらどうすれば?
「俺が切ってやるから刈るのはやめろ。」
「それが良いですね。茜なら酷くはならないでしょうし。」
いつも通りの竜胆さんが戻ってきたのはいいけど、そんな、茜さんの手を煩わせなくても……
「おーい、さっさと髪切るぞ。早く来い。」
「およよ?」
迷っている間に茜さんに背中を押され、二人でお風呂場へ向かった。
「おぉー!」
綺麗に肩の辺りで切り揃えられた自分の髪の毛を鏡越しに眺める。それを見て、茜さんは意外と器用なんだなぁ……と感心する。
「ほれ、こんなもんでいいだろ。」
「ありがとうございます!」
「ん。」
お礼を言うと茜さんにぽふぽふと頭を撫でられた。
「これで丸坊主にしなくてもいいだろ?」
「はい! ……なんだか少しだけ自分の髪が好きになれそうです。」
「それは何より。だがお前の髪は綺麗なんだからもっと自信持てな。」
「それは……善処します。」
「ん。」
もう一度ぽふぽふと頭を撫でられた。私は目を細めてそれを享受するのだった。
そう呟いて自分の白い髪を摘む。最近暑くなってきたので髪を切りたい所ではあるが、この色を他人に見せたくないと今までマスターに切ってもらっていた。だが今ここにマスターはいない。それに忙しいだろうから今すぐ切ってもらうことは出来ないだろう。
自分で切ろうとした時もあったが、そこまで器用ではないのでガタガタになってしまう。それならどうするか……
「よし、刈ろう。」
思い立ったが吉日、今から髪を刈ろうと決めた。
「今お風呂場使う方いませんよね?」
リビングで寛いでいた竜胆さんに一応聞いてみてから作業に移ろうと思う。
「多分いないと思いますが……」
「あ、あとバリカンってどこにあります?」
髪を刈るならやっぱりバリカンでしょう! 自分では持っていないけれども、きっと寮にならある……と思いたい。
「……は? バリカン? ありますけど……藍さん、一体何に使おうと思ってたんです?」
「自分の髪を刈ろうと思って。」
「…………は!?」
そこまで驚くことだろうか。いつもの穏やかな竜胆さんは鳴りを潜め、ただひたすらに目を見開いて驚いていた。あと声が大きい。
「ゆ、ゆ、ゆ……」
「ゆ?」
「許しませんっ! お母さんは許しませんよ!」
どうしよう、何故か分からないけれども竜胆さんは混乱しているらしい。あんなに地雷だったはずのお母さん発言を自らするなんて。
「竜胆さん、少し休まれた方が……」
「もう少し自分の髪の毛を大事にしてあげてくださいよ!」
「えー?」
そこー?
「えー、じゃありませんよ! 仮にもあなたは女の子でしょう!?」
「だってこの髪色嫌いなんですもの。どうせなら刈り上げて坊主にしていた方が周りに溶け込めるかと思いまし……」
「許しませんっ!」
竜胆さんは叫ぶ。えー? そこまで必死になることかなぁ?
「おーおー、珍しくりんが五月蝿え。」
その時、そっとリビングに入ってきた茜さんは耳を塞いで五月蝿え五月蝿えと騒ぐ。この際茜さんにこの(五月蝿い)竜胆さんを押し付けて、私は髪を刈ろう。
「茜さん、バリカンどこにあります?」
「却下。」
「えー。まだ何も言っていないのに。」
「この状況がおかしかったから未来を見たが、丸刈りになんてさせねぇからな。」
「えー。じゃあどうしろと言うんです?」
今までなら自分で切ってもウィッグで隠せたからガタガタでも良かったけど、今は白髪が露わになっている。さすがにガタガタのまま生活はしたくない。だから丸刈りにしようと思ったのだが……そう言われたらどうすれば?
「俺が切ってやるから刈るのはやめろ。」
「それが良いですね。茜なら酷くはならないでしょうし。」
いつも通りの竜胆さんが戻ってきたのはいいけど、そんな、茜さんの手を煩わせなくても……
「おーい、さっさと髪切るぞ。早く来い。」
「およよ?」
迷っている間に茜さんに背中を押され、二人でお風呂場へ向かった。
「おぉー!」
綺麗に肩の辺りで切り揃えられた自分の髪の毛を鏡越しに眺める。それを見て、茜さんは意外と器用なんだなぁ……と感心する。
「ほれ、こんなもんでいいだろ。」
「ありがとうございます!」
「ん。」
お礼を言うと茜さんにぽふぽふと頭を撫でられた。
「これで丸坊主にしなくてもいいだろ?」
「はい! ……なんだか少しだけ自分の髪が好きになれそうです。」
「それは何より。だがお前の髪は綺麗なんだからもっと自信持てな。」
「それは……善処します。」
「ん。」
もう一度ぽふぽふと頭を撫でられた。私は目を細めてそれを享受するのだった。
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