八ツ色物語〜失われたヴァイス属性魔法を駆使して平和を掴み取ってみせる!〜

君影 ルナ

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いっしょう

1-26 新たな出会い

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 大々的に紹介された後は、ランクAの方を中心に挨拶して回ることにした。ちなみに一緒にいたクロユリさんは個別で挨拶する人がいるから、と分かれて行動することになっている。

 そして私はといえば色んな方とお話できたらと歩き回っていると、ランクSの皆さんほどではないにしても街にはなかなかいない程鮮やかな赤髪を靡かせる壮年の男性が目の前に現れた。

「初めまして。私はロート属性のランクA、そしてロート属性を実質統率している寒崎 トオルと申します。あ、付け加えるのなら、寒陽 サクラの叔父でございます。」

 いつもランクSの皆さんといるから感覚がおかしくなるが、そもそもランクAというのは相当なエリートなのだ。それもロート属性を統率しているとなると、相当な実力者だろうことは容易に分かる。失礼のないようにしなくては。

「ご丁寧にありがとうございます、寒崎様。白花 エンレイと申します。」

「エンレイ様、私に敬語は不要でございますよ。」

 そう笑った顔がサクラさんソックリで、さすが美人さんの親戚なだけある、と関心してしまう。そういえば孤児院にいた時に読んだ本に載ってた。寒崎さんは『イケオジ』とか言うアレだ。

 ああ、いや、今は惚けている場合じゃあない。次期総指揮官として真面目でいなければ。

「いえ、カナカ軍の先輩を敬うのは当たり前のことです。私の方こそ敬語は不要です。」

 そう言い切ると、寒崎さんはハァと一つ息を吐いた。まるで仕方ないな、と言うように。

「分かった分かった。次期総指揮官サマの仰せのままに。じゃあエンレイちゃん、公の場でなければそうさせてもらおうか。」

「ありがとうございます。」

「その代わり、俺のことはおじちゃんとでも呼んでくれ。俺も堅苦しいのは苦手でな。それで、できたらエンレイちゃんもいつものような話し方でお願いしたいかな。」

 その言葉と共に繰り出された美形のウィンクを間近で見て、目が焼き切れそうになった。美形って顔から黄色魔法つよいひかりが出ているんじゃ、とアホな結論に達したのは余談だ。

「分かりました。ではよろしくお願いします、寒崎さん。」

「……おじちゃんとは呼んでくれないのかい?」

 私の中では砕けた表現を使ったと思っていたが、寒崎さんはおじちゃんと呼ばれたくて仕方ないらしい。イジイジと両人差し指を弄んで口を尖らせ拗ねた表情を浮かべていた。そんな態度もサマになっているだなんて、美形ってお得だ。

「血も繋がっていないし、見知らぬオッサンを親しげに呼ぶのは抵抗があるかもしれないけど……ほら、俺には子供もいないし、姪はツンデレを拗らせて懐いてくれないから寂しいんだよ……」

 ええ、と……どう反応していいか分からない、かな。でも話の発端は私の『敬わなくていい』なので拒否するのも憚られるし……でもまだ知り合い程度の方を親しげにおじちゃん呼びをするのは抵抗があるし……

 グルグルと葛藤するが、どうも答えは出てこない。どちらの天秤も釣り合った状態で揺れている。

「寒崎さん、俺のおじちゃん呼びで我慢しなさいな~」

「なっ、五月蝿いぞ夜凪! それにおじちゃんだなんて酷いな!? まだそこまで年老いてないぞ!!」

 どう答えたものか、と私が熟考している間に話に入ってきた青年は寒崎さんより若そうな青髪の方だった。

「すんませんね、次期総指揮官殿。このおじちゃん、寂しがりやで!」

 ランクAの、それも実質ロート属性を統率している方に対して軽口を叩きケラケラと笑っているその様子を見て、その青髪の青年も寒崎さんと同等の地位にいるのだろうことが窺えた。

「ああ、挨拶が遅れまして申し訳ありません。俺は夜凪 ミライ。ブラオ属性を統率するランクA。ちなみに夜香の分家で、ランの従兄弟ッス!」

 物静かな夜香さんとは真反対の軽い性格なんだな、というのが私の中での第一印象だった。

「白花 エンレイと申します。夜凪様、どうぞよろしくお願いします。」

「あ、俺のことはミライで良いッスよ! このおじいちゃんより年も近いし。」

「あ、ええと、はい。ミライ様。」

「もー、堅い堅い! 俺たちはもう仲間じゃん! 仲良くしようよー」

「こら夜凪!」

「痛っ!?」

 ズイズイッと急に距離を詰めてきたミライ様の頭をズビシッとはたいたのは寒埼さんだった。

「ごめんね、エンレイちゃん。こいつ誰に対しても馴れ馴れしくて。嫌だったらハッキリ言ってくれていいからね。夜凪も強要しない!」

「はぁーい」

「いえ、嫌なんてことはありませんから。むしろこんな私を受け入れてくださるなんて、ありがたいことです。」

 今まで誰からも嫌われてきた私にとって、好意的に接してくれる方は貴重だ。嫌だなんてことはない。勿論正直に言って、だ。

「あらあら、楽しそうね。私も混ぜてくださらないこと?」

 わあ、ぞくぞくと人が集まってきた。今度は黄色髪をたなびかせた妙齢の女性が現れた。

「はじめまして、次期総指揮官様。私はリリア・アカシア。ランクはA、ゲルプ属性を統率している者でございますわ。そしていつも息子のギンヨウがお世話になっております。」

 そう言って礼を取るギンヨウ様。ホホホと優美に笑うサマは、ツユクサさんとはまた違うたおやかさを持っていた。

 というか、私と同年代の子を持つ親とは思えないくらい若くてお綺麗で、その美しさを前にして雷に打たれたような衝撃を受けた。どんなアンチエイジングをされているのだろうか、と。

「白花 エンレイと申します、ギンヨウ様。」

「あらあらあら! 私のことはお母さんと呼んでくれて良いのよ~! ちょうど私可愛い娘が欲しかったの!」

 嬉しそうにそう話すギンヨウさm……いえお母様──脳内での呼び方ですらそれは許されないらしい。ジッと貼り付けた笑顔でこちらを見つめてくるから──に両頬を掴まれ、ウリウリと撫でくり回される。別に嫌でもないのでされるがままでいると、大きな声が聞こえてきた。

「母さん、それくらいで勘弁してあげてよ! エンレイちゃんが可哀想だから!」

 お母様の本当の息子、つまりヨウさんがこちらにやってきて助け舟を出してくれたらしい。それを聞いたお母様は仕方ないわね、と手を話してくれた。まあ、何度でも言うが嫌ではなかったのだけれど。

「あらギンヨウ。もう皆とお喋りはおしまいでいいの?」

「うん。……って言うかここだけの話、ランクSの皆とは会おうと思えばいつでも会えるし、それ以外の人たちはこの機会を最大限使ってランクSに取り入ろうみたいな思惑があけすけで、ちょっと、その……疲れるというか……」

 周りに聞こえないように小声でもたらされた言葉は、どこか疲れたような声色をしていた。なんだか顔もゲッソリしているようにも見える。

「まあまあ、ランクSは大変ね。」

「そうなんだよ~。特に今はランクSが七色……いや、八色揃っているからさ、僕で言うならゲルプ属性の若者を中心に、『少しでも仲良くなって自分の地位向上を!』とか考えているのが丸見えで……」

 ──僕、そういうの抜きで仲良くしてくれる人の方が好印象なんだけどなぁ。

 そう呟いてチラリチラリと私の方に目線を送ってくるヨウさん。ええと、それにはどんな意図があるんだ? どんなに考えてもその理由が分からず、目を泳がせることしか出来なかった。

「あらあらあら、そうなの! ギンヨウ、私は応援するわよ! 絶対射止めなさい!」

「はぁ~い」

 人間関係に関して赤ちゃんの私でも分かるように話して欲しいかな。疎外感に苛まれながらムッと顔をしかめるくらいしか、今の私にできることはなかった。
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