24 / 36
二章 六月のほたるい
23
しおりを挟む
カヨside
「シスイ様っ!?」
シスイ様は何かを感じ取り、急に走り出した。私はそれにワンテンポ遅れて後を追う。
「~~!!」
「~!?」
「~~!」
シスイ様を追っていくと、複数人の荒げた声がだんだんハッキリと聞こえてきた。シスイ様はこの声を辿ったのだろう。
空き教室の前に立ったシスイ様は制服のポケットを漁りながら教室の中の様子を窺っていた。
……あ、え、えと、シスイ様がその教室内にコッソリ仕込んだのはポケットの中身。多分、ボイスレコーダーだったと思う。一瞬しか見えなかったけど。何故持っているかなんて聞いてはいけないのだろうか?
「アンタウザいのよ!」
「気に食わないから消えてよ!」
「麦ちゃんは人の気持ち分かんないもんねぇ~?」
「さとみ、ちゃん……」
「馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 気持ち悪いんだけど。」
「ねぇ、もう徹底的に排除しよ? 椅子を使って殴打とか良くね?」
ああ……なるほど。そういうこと。教室の中でのやり取りから、何が起こっているかを推測する。複数人が一人を寄ってたかって責め立てているのだろう。実に胸糞悪い。クシャリと顔が歪んだのが自分でも分かった。
と、教室内のやり取りに気を取られていた私は、シスイ様の行動に音を立てずに驚いてしまった。
「先生ー! こっちで喧嘩がー! 早く来てー! そうそう! こっちこっち!」
シスイ様はいつもよりワントーン低い声で叫んだ。その瞬間私の腕を掴んで隣にある空き教室に駆け込んだ。
「やばっ!」
「逃げよ!」
責めていたものと同じ声が焦ったように逃げろ逃げろとお互い呼びかける。バタバタと駆ける足音が複数聞こえ、それが止んでからシスイ様は隣の教室へと入る。
「……大丈夫ですか?」
「あ、えと……」
複数人に責められていた女生徒──確か麦と呼ばれていたっけ──は、いきなり現れたシスイ様に驚いているらしい。パクパクと口を動かすものの、音は出ない。
「お怪我はありませんか?」
シスイ様は笑顔でその麦さん(仮)にスッと手を差し伸べる。
「シスイ様っ!?」
シスイ様は何かを感じ取り、急に走り出した。私はそれにワンテンポ遅れて後を追う。
「~~!!」
「~!?」
「~~!」
シスイ様を追っていくと、複数人の荒げた声がだんだんハッキリと聞こえてきた。シスイ様はこの声を辿ったのだろう。
空き教室の前に立ったシスイ様は制服のポケットを漁りながら教室の中の様子を窺っていた。
……あ、え、えと、シスイ様がその教室内にコッソリ仕込んだのはポケットの中身。多分、ボイスレコーダーだったと思う。一瞬しか見えなかったけど。何故持っているかなんて聞いてはいけないのだろうか?
「アンタウザいのよ!」
「気に食わないから消えてよ!」
「麦ちゃんは人の気持ち分かんないもんねぇ~?」
「さとみ、ちゃん……」
「馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 気持ち悪いんだけど。」
「ねぇ、もう徹底的に排除しよ? 椅子を使って殴打とか良くね?」
ああ……なるほど。そういうこと。教室の中でのやり取りから、何が起こっているかを推測する。複数人が一人を寄ってたかって責め立てているのだろう。実に胸糞悪い。クシャリと顔が歪んだのが自分でも分かった。
と、教室内のやり取りに気を取られていた私は、シスイ様の行動に音を立てずに驚いてしまった。
「先生ー! こっちで喧嘩がー! 早く来てー! そうそう! こっちこっち!」
シスイ様はいつもよりワントーン低い声で叫んだ。その瞬間私の腕を掴んで隣にある空き教室に駆け込んだ。
「やばっ!」
「逃げよ!」
責めていたものと同じ声が焦ったように逃げろ逃げろとお互い呼びかける。バタバタと駆ける足音が複数聞こえ、それが止んでからシスイ様は隣の教室へと入る。
「……大丈夫ですか?」
「あ、えと……」
複数人に責められていた女生徒──確か麦と呼ばれていたっけ──は、いきなり現れたシスイ様に驚いているらしい。パクパクと口を動かすものの、音は出ない。
「お怪我はありませんか?」
シスイ様は笑顔でその麦さん(仮)にスッと手を差し伸べる。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる