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さん (2)

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「あーもー! なんで俺様がこんなに不幸な目に遭ってんだ!」

 あれから何日もして、今日は休みの日。Rの家でCはいつも以上にイライラしていたようで、周りに当たり散らしていました。

 皿も幾つか割れてしまい、Rは溜息をつきます。あれ、お気に入りだったのに、と。

 Rは一応自分に火の粉が飛んで来ないように下手に出て質問してあげます。

「兄さん、どうされましたか?」
「ああ!? なんだか分かんねえが仕事辞めろって言われたんだよ! あんなに貢献してやったのに!」

 同期の人から実態を聞いていたRは『当たり前だろう』と思っていましたが、Cにそのまま伝えると絶対自分に向かって今度は当たり散らすと分かっているので、その部分は閉口します。

「そうなんですか……。ですがきっと今の仕事よりも合う仕事が見つかりますよ、きっと。」
「そうだよな! 俺様にはもったいない仕事場だったんだよな! 俺様はもっとビッグになれる!」

 自分の都合の良いように解釈したらしいCに、Rは提案します。

「今日は気分転換に食事にでも行きませんか? 奢りますよ。」

 これで少しは機嫌を直してもらって、これ以上のお皿の被害を抑えたかった。だからこその提案です。

「ああ! これからの俺様の成功を祝して外食だあ!」

 機嫌が直ったCを見て、Rは『オメデタイ頭だなあ』とつい思ってしまいました。

 Cは今までもこれからも周りに害でしかないのに。周りの人間も顧みないCに成功などありはしない。そんな風にRは考えていました。

















「かーっ、美味かった美味かった!」

 お腹をさすって満腹を表現するC。それに対してRはいつも通り物静かに隣を歩きます。

「あ、少し寄るところがあるので、先に帰っていてください。」
「はあ? ……まあいいか。分かった。」

 そう言ってCとRは別れて別々の方向へ歩き始めました。

















 Rは用事を済ませて家に帰ると、家の電話に不在着信が入っていました。

 この時間になんだろう、とその番号に電話を掛けると、警察でした。

「もしもし。」
『──警察署の者ですが、Rさんでしょうか。』
「あ、はい。」


『実は──』


「え……?」

 その電話は、Cが死んだというものでした。自殺か他殺かは分からないのだそう。

 何せCが死んだのは今日──というよりついさっき──夕飯を食べた場所の最寄駅で、そこは無人駅でありました。

 さらに言えば監視カメラの死角になるような場所からの飛び込みだったようですから、すぐにはどちらか分からないようです。



 これでもう周りの人間に迷惑を掛けることはないとRは一瞬思ってしまいましたが、しかしそれ以上に何故そんなことに……と動揺してしまいました。

 何せあの横暴なCだったのです。自殺なんてするような人でもありません。


 これは……『バチ』だったのでしょうか。
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