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さん スッキリする話

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 この話の主人公の名前はR。実に物静かな人間でした。

 そんなRには関わり合いたくない人間がいました。それが兄のCでした。

 いつもCは自分の思い通りにならないと周りに怒り散らし、自分は悪くないと威張っていました。

 そうなると周りから煙たがられるのも当たり前というもので、しかし自分本位なCはそれに気付きません。

 そんなCと絶対関わり合いたくないと言いつつも、毎日のようにRは関わり合いになっていました。

 CはRの家に居候していたからです。

 Rは横暴なCに歯向かう勇気もなく、虐げられる毎日を過ごしていました。家主なのに。

 まさにシンデレラに出てくる主人公と継母のような関係ですね。

「おい、何故俺様の夕飯がねぇんだ!」
「……兄さんが夕飯要らないと言ったのでしょう?」
「そんなの知るか! 俺様の分も早く出せ!」

 理不尽なことで怒鳴り散らし暴力を振るうCに、Rは内心恐怖と共に辟易していました。


 RはCにいい加減出ていって欲しいと思っていました。















 そんなRにも転機が訪れます。あれだけ働くのを渋っていたCが働き始めると言うのです。

 Rは最初『どうせすぐ辞めるだろう』と諦めていましたが、しかし意外にも続いているようでした。働き始めてからもう半年は経ちましたから。

「俺様がいないとあの職場は回らねえからな! 本当、どうしようもねえやつらだ!」

 まあ、職場での愚痴を漏らすようになったのでRは鬱陶しいな、とは思っていましたが。






「ねえ、R。営業課のCって人知ってる?」
「え、Cですか……?」

 Rはいつも通り仕事をしていると、同期の人にそう聞かれます。Cと言う名前を聞いてまさか兄だとは思いもよらなかったRは、同じ会社だったのか、とその時酷く狼狽しました。

「そうそう! 半年くらい前かな、新しく入った人らしいんだけど、すごく横暴だから周りの人達が辟易しているって話だよ。」
「へ、へえ……」

 Cの性格はそう変わることはないので、Rに対するのと同じように周りにも迷惑を掛けているようでした。

 自分の横柄さを自覚もしなければ直そうと思うこともない。まあ、横柄なのだから直すだなんて考えは一ミリもないのだろうが。

 こちらが諦めるしかないのだろう、と溜息を一つ零す。

「もっと言えば人に仕事を押し付けて、自分は仕事をせずに悠々としているらしくてね。」
「え……?」
「態度を改めないなら早々に切り捨てるって噂されてるよ。」

 ああ。兄が迷惑をお掛けしてすみません。そんな気持ちを持ちながらRは大きな溜息を一つつきました。

「そんな人はいつかバチが当たるだろうね!」
「そうですね……」

 バチ、か。やっぱり……


 それからRは一人考え込むのでした。
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