10 / 11
ハッピーエンドを目指す王子様
しおりを挟む
「カーシャ!!」
彼女が泣いている! 私が慰めねば!
「頑張ったのにぃぃぃいぃ」
「そうね、頑張ったわね」
ふぇぇん と泣く彼女をアデリーナが肩を抱いて慰める。
すぐそこに王子来てるよ?
「きょっ今日だって、不安で不安で仕方がなかった!」
「まあ珍獣みたいな扱いになりかねないものね」
「綺麗になった自分を見てもらえるのだけが楽しみだったのに、お披露目さえ出来ないなんて! 厳しい詰め込み教育も殆ど身に付かず全くの無駄!! 大体肝心の王子様との交流、全くないってなにそれ!!」
「さっき知ったわ。本当になんなのかしらね」
アデリーナがジロリとこちらを睨む。私は王子だぞ。
しかしそう言われてみれば、全く会っていなかった。良く見かけていたから、いや、何度か会おうとしたが、いつも邪魔が入ったんだ。侍女仕事に慣れないエレーナが何かミスをしたり、母上からどうでもいい用事を…………母上か!!
「私は、そりゃ物覚えは悪いけど、一般常識くらいはあります!」
「常識が私と同じかは分からないけれど、良識があるのは認めるわ」
アデリーナのアレは慰めているのか?
段々とヒートアップしてきて、涙は止まったようだ。良かった、んだろうな。
「花嫁の差し替えなんてあり得ます!? 憧れの(しかも最高に贅を尽くした)花嫁さんになれると思って努力してたのに、『妃』は『嫁』じゃないって」
「違うわ。背負うものが全然違うも「いや、同じだよ」」
「殿下?」
こちらをふり仰ぐ彼女。ああ、顔が凄い事に。
ぐしゃぐしゃの顔をそっとハンカチで拭ってから、手を取って乗せる。もっと拭きたいだろうからな。だって凄いから。
侍女に鏡を見せられて、驚愕している。可愛い。
こちらに背中を向けて、ハンカチでゴシゴシ。メイク担当が布でサッと落とし、何かを塗って頷き、二人で軽く拳を合わせる。
何の挨拶? 仲の良さが伝わってくるな。今度グレゴリーとやってみるか。
くるりとこちらを向いた。おお、普通の顔になってる。あ、そうじゃなかった。
彼女に歩み寄って片膝をつく。包み込むように両手を取った。
「カーシャ。大丈夫だよ。君は私のお嫁さんだよ」
少し腫れぼったくなった目を見開く。涙に濡れた瞳が可愛い。
「私は第二王子だし、兄に息子が出来たら臣籍降下する予定なんだ。君の一番の仕事は、私と一緒に居心地の良い家庭を作って、それを周囲に少しずつ還元することだよ」
「王子妃がそれでは国民が困ります!」
アデリーナは良い子だけど、頭が固いんだよな。
「大丈夫だよ。公務の負担を減らす為に、ルカに仕事を多めに振っている」
「なっ」
「ルカは仕事が楽しい時期で、喜んでいるよ。いずれルカの妃になる君の負担も少し増えるけど、能力的には余裕を持って熟せるはずだよ。君には期待している」
アデリーナが何とも微妙な表情になっている。
「仕事を割り振るのは得意だし、私に余裕があると、兄弟の仕事を助ける事も出来る。それで周りにも余裕が出来る。いい事ばかりだよ」
婚約者殿に柔らかさを意識して微笑む。
「毎日朝早くからの妃教育は大変だったろう? ピコピコが無くなる程頑張っていたのは、ちゃんと見ていたよ」
「ピコピコ?」
「困った時は私が助けるよ。一緒に解決していこう?」
彼女の新緑のような瞳を覗き込む。
「私と結婚してくれますか?」
赤くなってコクコク頷く彼女の頬に手を添え、額に口付けを落とした。
彼女が泣いている! 私が慰めねば!
「頑張ったのにぃぃぃいぃ」
「そうね、頑張ったわね」
ふぇぇん と泣く彼女をアデリーナが肩を抱いて慰める。
すぐそこに王子来てるよ?
「きょっ今日だって、不安で不安で仕方がなかった!」
「まあ珍獣みたいな扱いになりかねないものね」
「綺麗になった自分を見てもらえるのだけが楽しみだったのに、お披露目さえ出来ないなんて! 厳しい詰め込み教育も殆ど身に付かず全くの無駄!! 大体肝心の王子様との交流、全くないってなにそれ!!」
「さっき知ったわ。本当になんなのかしらね」
アデリーナがジロリとこちらを睨む。私は王子だぞ。
しかしそう言われてみれば、全く会っていなかった。良く見かけていたから、いや、何度か会おうとしたが、いつも邪魔が入ったんだ。侍女仕事に慣れないエレーナが何かミスをしたり、母上からどうでもいい用事を…………母上か!!
「私は、そりゃ物覚えは悪いけど、一般常識くらいはあります!」
「常識が私と同じかは分からないけれど、良識があるのは認めるわ」
アデリーナのアレは慰めているのか?
段々とヒートアップしてきて、涙は止まったようだ。良かった、んだろうな。
「花嫁の差し替えなんてあり得ます!? 憧れの(しかも最高に贅を尽くした)花嫁さんになれると思って努力してたのに、『妃』は『嫁』じゃないって」
「違うわ。背負うものが全然違うも「いや、同じだよ」」
「殿下?」
こちらをふり仰ぐ彼女。ああ、顔が凄い事に。
ぐしゃぐしゃの顔をそっとハンカチで拭ってから、手を取って乗せる。もっと拭きたいだろうからな。だって凄いから。
侍女に鏡を見せられて、驚愕している。可愛い。
こちらに背中を向けて、ハンカチでゴシゴシ。メイク担当が布でサッと落とし、何かを塗って頷き、二人で軽く拳を合わせる。
何の挨拶? 仲の良さが伝わってくるな。今度グレゴリーとやってみるか。
くるりとこちらを向いた。おお、普通の顔になってる。あ、そうじゃなかった。
彼女に歩み寄って片膝をつく。包み込むように両手を取った。
「カーシャ。大丈夫だよ。君は私のお嫁さんだよ」
少し腫れぼったくなった目を見開く。涙に濡れた瞳が可愛い。
「私は第二王子だし、兄に息子が出来たら臣籍降下する予定なんだ。君の一番の仕事は、私と一緒に居心地の良い家庭を作って、それを周囲に少しずつ還元することだよ」
「王子妃がそれでは国民が困ります!」
アデリーナは良い子だけど、頭が固いんだよな。
「大丈夫だよ。公務の負担を減らす為に、ルカに仕事を多めに振っている」
「なっ」
「ルカは仕事が楽しい時期で、喜んでいるよ。いずれルカの妃になる君の負担も少し増えるけど、能力的には余裕を持って熟せるはずだよ。君には期待している」
アデリーナが何とも微妙な表情になっている。
「仕事を割り振るのは得意だし、私に余裕があると、兄弟の仕事を助ける事も出来る。それで周りにも余裕が出来る。いい事ばかりだよ」
婚約者殿に柔らかさを意識して微笑む。
「毎日朝早くからの妃教育は大変だったろう? ピコピコが無くなる程頑張っていたのは、ちゃんと見ていたよ」
「ピコピコ?」
「困った時は私が助けるよ。一緒に解決していこう?」
彼女の新緑のような瞳を覗き込む。
「私と結婚してくれますか?」
赤くなってコクコク頷く彼女の頬に手を添え、額に口付けを落とした。
0
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さくら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~
sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。
ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。
そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる