生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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違和感

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sideリラ



「お前自分の友達も分からなくなったのか?」



お店を出て早々、ルシアス様がバカにしてくる。


ダリアちゃんを連れてくると言って1人で出て来たからだ。



「急用ができたみたいで裏口から帰っちゃったみたいです。」



急用から仕方ないけどこれから1人かぁ…



「まるで捨て犬だな。」



捨て犬!?



「な、なんですか!!捨てられてませんから!」



そもそも犬じゃないし!!



「ピーピー鳴くな。」



鳴いてない!!人が落ち込んでるって時に!



「あのー、早く行きません?」



キジャさんは呆れた様子でルシアス様に言った。



「それもそうだな。おい、犬っころ。いい子で待ってろよ。待てなかったら…」



ルシアス様は意地悪く笑って私に顔を近づけた。




「な…なんですか?」




無駄に顔がいいのが腹立つ!



「お前を丸刈りにする。」



そう言うとルシアス様は私のおでこをツンと人差し指で突いた。




「だからいい子で待ってろよ。」



ルシアス様が楽しそうに私を丸刈りにするイメージしか湧かない。



「………はい。」



悔しいけど、この人はやりかねない。



丸刈りなんて絶対嫌!!



*********************


sideルシアス



「デートならいい店知ってますよ。」



店に入る時、キジャが小声で囁いて来た。



何がデートだ。



「犬の散歩だ、そんなんじゃねぇよ。」




店に入り奥へ進めば…




「いらっしゃいませ。…!ルシアス様、キジャ様。」



俺らを見た瞬間、店の男は跪いた。



「少々聞きたいことがある。」


 
この男、キジャの言葉に少し動揺したな。




「はい、もちろんです。」



何かやましい事でもあるのか?



「顔を上げてよく見ろ。」



俺はポケットから例の鍛冶屋の似顔絵を出した。




「コイツを見たことがあるか?」



男は似顔絵をじっくりと見つめて答えた。




「いいえ、存じ上げません。」




まぁ、そうだよな。



鍛冶屋の入る店じゃない。



「分かった。仕事中に悪かったな。」



俺らは聞きたいことだけ聞いて店を出た。



店を出ると…



「!」



小さい犬が俺を待ってる。



「聞き分けがよくなったな、犬っころ。」




頭を撫でてやるとまたピーピー何か言っていた。




それを見たキジャが呆れて口を開いた。




「ここじゃアレなんで、歩きません?」



そうだな、ここじゃあアレだな。




「俺たちが行ったとこは全部ハズレでしたね。他のメンバーが当たりを引いてればいいですけど。」




最後のは完全に無駄だったな。




「それはまた明日になれば分かることだ。」


一応、よっぽどな緊急事態以外は明日報告になってる。




「ですね。じゃあ、お邪魔虫は帰ります、お疲れ様でした。」



「あぁ、おつかれ。」


俺の言葉を聞いたらキジャは猛スピードで何処かへ消えた。




「あ、あれ?キジャさん!?」




そうか、人間には見えないよな。




「アイツは帰った。それよりお前もう餌の時間だろ?何食うんだ?」




痩せてるからもう少し食わせた方がいいな。




「餌って!はパスタの予定でした!」



パスタか…




「どこのパスタだ?」



とりあえずそこで食わせるか。



「ラリッタバーサンのパスタですよ!」



ラリッタバーサン?


ラリったばーさん?



「どこだ、そんな不穏な店聞いたことねぇよ。」




コイツ意味分かって言ってんのか??



「不穏だなんて失礼な!!ラリッタバーサンのパスタはこの街1番です!それに知る人ぞ知る隠れ家みたいなとこなんですよ!特別に教えてあげます!」



嫌な予感しかしない。




~30分後~



「フェーッフェッフェ!!フェーっとチーネ!!フェーッフェッフェフェーッフェッフェー!!!」



その予感は的中した。



「アハハッ!!ルシアス様!あのおばあちゃん可愛い動きしてますよ!」



名の通りの店だった。




本当にラリったばーさんがパスタを作ってる。



それより何より俺を困惑させたのは…




「う…うまい……だと??」



そのラリったばーさんの作ったパスタが今まで食った中で1番おいしいってことだった。



「ね!美味しいでしょ!ルシアス様!」



キラキラした目しやがって。




「あぁ…うまい。」



俺の言葉を聞いてばーさんは満足げに笑った。



**************************


「ルシアス様!ご馳走様です!」




リラは満足そうに俺の隣を歩いていた。




「飼い犬の餌やりは飼い主の基本だからな。」



リラがいなかったらきっとこの店を知ることはなかっただろう。



「だから!私犬じゃありません!」



ピーピー鳴いてうるさいが今日くらいは褒めてやらないとな。




「今日は偉かったぞ。ご主人様こんな美味しい店を紹介するなんてな。」


「もう!ルシアス様!!」



ピーピーと文句を言うその姿が可愛い。



……もちろん、犬として、だよな?




「もうここで結構です!ここからは1人で帰ります!」




あぁ、そうか。


ここからなら近いからな。



アイツの別邸は。



このまま黙って帰すのは腹が立つ。




そもそもこの女は俺が可愛がるって決めた女だ。



簡単に帰す訳にはいかねぇな……。




「そうだな、犬は犬小屋で寝ないとな。」



今は帰したフリをして、犬っころで少し遊んでやるか。



**************************

sideリラ


「ふふ♪」



ルシアス様、よほどあのお店のパスタが気に入ったのか今日は3回もおかわりしてた。




美味しいものを食べて機嫌もよかったし今日はいつもみたいにいじめられなかった。




「~♪」



楽しかったなぁ…。



ダリアちゃんのことが心配でもあるけどね。




飛び出していく程の急用ってなんだろう?



明日聞いてみようかな。



明日と言えば、またあのお店に行かなくちゃ!



ライアス様のお誕生日は明後日だもん!



這ってでも行って名前を入れてもらわないとね。



「クゥーン」



可愛い泣き声が真後ろから聞こえた。



びっくりして振り返ったら…



「ナイト!!!」




私の大好きな漆黒の狼がいる。




「ナイト!また会えたね!!」




会いたかったんだよ!ずっと!




私は嬉しさのあまりナイトにギュッと抱きついた。




ナイト、いい匂いがする。



何だろう、この匂い。



石鹸?みたいな匂いだ。



もしかして最近シャンプーしたのかな??




「おぉ…。」


私が抱きしめていたけど、ナイトはお構いなしに体勢を低くした。



これは前回の通りなら、背に乗っていいって合図だ。




「ナイト、今日はあまり遠くに連れて行かないでね。」



もしもライアス様が帰ってたら心配するから。


それに、ライアス様から寂しいと言われたばかりだしね。




私はそう言いながらそっと、ナイトの背に跨った。




本当に、今回は遠くには連れて行かれませんように!


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