生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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誘拐

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sideリラ


いきなり現れたと思えば私を離さないルシアス様。



ルシアス様は本当にいじめっ子だ。



私を後ろから抱きしめていたと思えば、今は赤ちゃんみたいに、脇の下を持ち上げられてる。



それより…



「ダリアちゃん、遅いなぁ…。」




ピアスのこと聞きに行っただけなのに。



「あ、いたいた。団長ー。」



ん?この声どこかで聞いたことあるような……



「なんだ?」



あ!分かった!前ピアス越しで聞いたんだ!



「急にいなくならないでくださいよ、って、何やってんですか?」



もちろん、常人ならそう聞く。



「可愛がってやってんだよ。」



違います、あなたなら分かりますよね??


ルシアス様を困らせるほどの実力がある方なら分かりますよね??



「可愛がる?あぁ、お得意の拷問かけるってことですね。先締めとくんで貸してください。」



拷問!!!?



「いや!嫌です!ルシアス様!あんまりです!!」



私が聞き分けないからってこの人に拷問を頼むなんて!



「お、おい//////」


私は全力でルシアス様に抱きついた。




「ごめんなさい!謝ります!!」




拷問なんて絶対嫌!



この間、爪剥がすとかなんとか言ってたし!




「こらこら、団長困ってるだろ。」



私が全力で抱きついても簡単に引っぺがされた。




私を引っぺがした人はかなりのイケメンで、茶髪で緑色の目をしていた。




「人間か。今吐けば何もしない。」



私は猫のように後ろの服を掴まれて吊るされてプルプルしていた。



「おい、やめろ。これは俺の犬だ。いじめんな。」



ルシアス様が珍しく私を助けてくれた。



「ったく、返せ。」



ルシアス様は私をお姫様抱っこしてくれた。



「犬?この子人間ですけど。」



なんて的確な指摘…



「頭の中は犬みたいなもんだ。」

「あー、それは限りなく犬ですね。」




もう!この2人なんなの!



類は友を呼ぶってほんとね!



あ。友達…!



「おろしてください!ダリアちゃんが戻ってこないんです!」
 


私はルシアス様に遊ばれている暇ないんです!!



「ダリア?誰だ?」



ルシアス様は不思議そうに聞く。



「私の友達です!戻ってこないので呼んできます!」



だから….


「降ろしてください!!」



もう!!本当に!!



「わかった、呼んでこい。」



ルシアス様はそう言うと私を離してくれた。



パッと離すんじゃなくて、私が足をくじかないように態勢を低くして降ろしてくれる。


根は優しいんだから意地悪なんかしなきゃいいのに。



**********************

sideダリア


「いらっしゃいませ。」



店に入れば昨日と同じ人がいた。



私はこの人の笑い方が嫌いだった。



私みたいな見られる仕事をするなら簡単に見抜ける。



冷たい視線だ。



早く出てリラちゃんとご飯でも食べに行こう。



「あの、これと同じものを落としたと思うんですけど見覚えはありますか?」



私は持ってきたピアスを見せた。




そのピアスを見て男はまた嘘っぽい笑みを浮かべる。


「はい、昨日落とされたのでお預かりしておりました。」



あぁ、よかった。



やっぱりここで落としてたんだ。



「少々お待ち下さい、持ってまいります。」



早くこの店を出たい。



昨日から思うけど、この店は居心地が悪い。



自分が場違いだってことは当然だけど、なんかここの店の雰囲気が好きじゃない。


そんなことを考えていたら奥の部屋から男が私のピアスを持ってきてくれた。



ピアスはご丁寧なことに、ちゃんとしたケースに入ってる。




さすが金持ちの店。




「こちらでお間違いはありませんか?」



間違いも何もこんなところでピアス落とすのは私くらいよ。



「はい、ありがとうございます。」



お礼を言ってそのケースに手を伸ばすと…




「っ!!!!!!」



声も出ず身体が硬直するほどの電流が私に流れてきた。




私は一瞬にして気絶してしまい、縛られていた。




気絶とは言っても私はヴァンパイア。



きっと倒れていたのは物の数分。


それより、どうしよう…本当に…どうしよう…!!!




私は縛られて今カウンターの裏に寝かされていた。



あの男もカウンターの内側にいて、私に銃を突きつけながら接客していた。



ここなら外からも店内からも見えない、完全な死角だ。



「いらっしゃいませ。」


このままだとリラちゃんもこうなる!!


「あ…あの…ついさっき、金色の髪の女性が来たと思うんですけど…。」


なんとかして逃げないと……



「あぁ、その方からあなたに伝言を頼まれているのですが。」



はぁ!?何!?コイツ、絶対こういうことするの初めてじゃない。



「急用ができたから先に戻るとのことでした。」



なんとか隙を見て蹴って逃げたいけど、銃がこっちを向いてる以上何もできない。


「で、でも、私はずっと入り口にいました!」



リラちゃんも怪しがってる。


これならなんとか助かるかも…


「あぁ、そうそう。かなり急いでおられたので特別に裏口を開けました。裏の通りは人通りが少ないのでヴァンパイアの方は速く動けるんですよ。」




なんと巧妙に作られた言い訳だろう…



これじゃあ絶対信じちゃう……



どうしよう…!!!




「そうですか…ありがとうございます。」



リラちゃんは完全には納得していないみたい。



「あ、すっかり忘れていました。昨日ご購入されたペンですが今お持ちですか?」



私は嫌な予感がした。




「いいえ、今は持ってません。」




まさか…リラちゃんまで誘拐する気じゃ…




「では、お手数ですがまた明日こちらへ持ってきていただけませんか?ご友人を勝手に帰してしまったお詫びに、あのペンにお名前を入れたいんです。」



こんなこと言われたら絶対来るに決まってる!



リラちゃん絶対来ちゃダメだよ!!


「そんな!お詫びだなんて……でも、お言葉に甘えてもいいですか?」




ダメ!!絶対ダメだって!!



「はい、こちらとしてもそうさせていただきたいです。」




リラちゃん逃げて!コイツ本当にヤバい奴だよ!!



「ありがとうございます、よろしくお願いしますね。また明日これくらいの時間に来ます!」



リラちゃん!!本当にだめなんだってば! 



何か伝える方法は?


逃げる方法は?


どうしよう、怖くて何も浮かばない!



「はい、お待ちしております。」




リラちゃんが店を出ていく音が聞こえた。




私は無様にも震え上がる。



「本当に、人間はバカだ、簡単に信じやがって。」




男は化けの皮を剥がし、私を見下ろして笑った。




「女が1日で一気に2人も消えたら怪しまれるからな、あの女はまた明日連れて来てやるよ。」


男はニヤリと笑い…



「今回は良い獲物が手に入った。お前とさっきの珍しい容姿の人間。…いくらで売れるだろうな??」





あぁ、コイツは本当にやばい。



これはただの誘拐なんかじゃない。



人身売買だ!!

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