生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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不安

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sideリラ

朝、目を覚ますとまだライアス様が私の腕の中にいた。


可愛いからギュッと抱きしめたら…


「リラ…。」


ライアス様を起こしてしまった。


「あ!おはよう!」


ちょっとギュってしすぎたかな?


「おはよう…」


ライアス様は私にさらに抱きついてきた。


珍しく甘えてくれてる。

私はそれに応えるようにライアス様の頭を撫でた。


「ライアス様、もう一回寝る?」


ライアス様が二度寝なんて、想像がつかないけど。

「……………」


あれ?応答がないなぁ…。


私の胸からはライアス様の寝息が聞こえる。


想像がつかないと思ったばかりなのに、ライアス様はすんなり眠ってしまった。


なんかライアス様可愛い!


本当に可愛い!大好き!


私もまだ時間あるしもう一眠りしようかな?


起きた時にまたライアス様の頭撫でてあげよう!



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sideルシアス


気持ち悪い、ベッドに転がっていたい。


「団長、一回戻してきたらいいんじゃないですか?」



俺もそれは考えた。



「戻すもんがねぇんだよ。」


朝から散々やってきた。



「それはそれは。」



いっそ、胃袋ごと取りたい。



「ずっとここにいるのも時間の無駄なので家宅捜査組と合流しますか?」



キジャの言う通り、時間の無駄だ。



「あぁ、そうするか。」



それに、家に行く途中に薬を売ってる店があった。

ついでに買って飲むか。


これじゃあ仕事にならない。



~30分後~


sideキジャ


「いやー、団長。」


途中で寄った店の薬がよく効いたらしく、いつもの団長に戻ってる。



「見てないで手伝え。」



おかげでバリバリ働いてるのはいいけど…


「団長、家丸ごとひっくり返す気ですか?」


床板をベキベキと剥がし、家具は外に放り投げ、壁紙もベリベリ剥がしている。


俺や元々家宅捜査組だったメンバーはやることがなくて困ってる。



「あぁ。その方が早い。」



団長は本当に男気がある。



「じゃあ破壊は団長に任せて、俺と他のメンバーは団長が破壊したそれらを調べるってことで。なんか見つかったら教えてくれ。」

「「「はい!!」」




俺たちはこの時知らなかった。



ひっくり返すって表現がどれほど可愛いものだったのか。



夕方になれば家が一軒なくなり、更地になるだなんてここにいる誰が予想しただろうか。




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sideリラ


二度寝から起きると、ライアス様はもういなくなっていた。



代わりに私に毛布がかけられている。



本当に、優しい人。



ライアス様、大丈夫かな?


まぁ、私に心配されるような人じゃないよね。



まだ仕事まで時間があるから先にライアス様のペンをあのお店に持って行こうかな!



それで帰りに取りに行けば完璧じゃない!?



私天才かも!



そうと決まれば早速準備開始!



~1時間後~



「いらっしゃいませ。」


バチェラーに着いた。


相変わらず緊張するお店ね。


「こんにちは。…あの…」
「ペンにお名前を入れるお約束でしたね。お待ちしておりました。」



さすが、よく分かってらっしゃる。



「はい、お願いします!」


話が早く進んでよかった。


私は男の人にペンを渡した。



「はい、確かに。ところで、お名前はなんとお入れしたよろしいですか?」



呼び捨てをするのは初めてかも///////


「ライアス、です。」


きゃ~/////呼び捨て~//////



「ライアス…?まさか、あのライアス様ですか?」


あのって言われてもなぁ…。


ライアス様が有名人なのは確かだけど他の人との勘違いだったら面倒くさいし…


「いえ、多分ただのライアス様ですよ!」


ただのライアス様ってなんだろう…


自分で言っておきながらおかしいわ。



「さようでございますか。ご指示通りにお名前を入れさせていただきます。…ところで」



なんだろう?



「はい。」



なんか空気が変わったような、変わってないような。



「この後は何かご予定はございますか?」



なんだろう?



「はい……仕事にすぐに行かなくちゃいけなくて。」



すぐ、は嘘だけど仕事に行くのは本当。


なんでこんな嘘をついたんだろう。


私は本能で何かを感じ取った。

ここには居たくないって本能だ。


「では、お仕事が終わる頃には完成させておきますので本日中にお越し下さい。」



あぁ、なんだ。


そう言うことか。


私ったら変に警戒して馬鹿みたい。


でも気をつけないと。


この人は人間じゃないもの。


2人きりで密室でいるのは客と従業員でも結構危ないことが多い。



「はい、よろしくお願いします。」



私はそれだけ言うと、足早にこのお店を出た。


とにかく今日完成したものを取りに来ればそれでいい。


明日はライアス様のお誕生日だから何もかも完璧にしないと!



私は呑気な方だからお店を出るとさっき感じた危機感をすっかりと忘れていた。



数時間後、このお店でとんでもない事件に巻き込まれる事になるとは知りもしないで。



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sideリラ

「おはようございます。」


おかしいな…。


ダリアちゃんの姿が見えない。


今日は来る日なのに。


「おはよう。」


ライさんに聞いてみよう。


「ライさん。」


何気に仲良いしダリアちゃんのこと知ってるかも。


「ん?」


「ダリアちゃんは今日来てますか?」


ダリアちゃん、昨日あのお店から直接帰ったって言ってたけどまさか何かあったんじゃ…


「そういえば見てない。」


やっぱり、ライさんもダリアちゃんを見かけてない。


「ですよね…。」


私の考えすぎ?



「どうしたの?何かあった?」



ライさんは本当に人の表情によく気がつく。



「あの…昨日急にいなくなっちゃって、何か急用があったみたいなんですけどちょっと不自然で…。」



これで説明になってるのかな??



「不自然って?」


ライさんなら何かわかるかも。



「それが、バチェラーってお店の裏口から1人で帰ったらしいんですよ。…今日何があったのか聞きたかったのでダリアちゃんを探したんですけど…。」


「ここに来てないってことだよね。」



そう、そうなんですよ、ライさん。


話が早い。


「いつもこの時間ならダリアちゃん踊りの確認してるんですけど…。」


なぜかこのお店のどこの部屋にもいない。



「そんなに心配しなくてもくると思うよ。俺が後でマリア様に聞いとくから。」



本当にさすがとしか言いようがない。


ライさんは本当にできる男だ。



「ありがとうございます。」



仕事前にこんな会話をして、私は仕事中ずっとダリアちゃんのことが心配だった。


だって結局、ダリアちゃんは何時間経っても姿を表さなかった。


仕事が終わり私がソワソワしていたら、ライさんが話しかけてきた。


「リラ、マリア様に聞いたけどやっぱり来てないって。」


やっぱりそうか。


「分かりました…。何かあったんですかね。」


私があの日、もっと確認してたら…



「大丈夫、ダリアの事だからうっかり忘れてたんじゃない?一応俺から連絡取ってみるから心配しないで。」


ライさんがそう言うなら…


「はい……」


ダリアちゃん大丈夫かな?


「もう上がりなよ。今日どっか行くとか言ってなかった?」


ライアス様のお誕生日プレゼントを受け取りに行かないと。



「はい…バチェラーに行ってきます。」



遅れたらいけないから早く行かなくちゃ。



「気をつけてね。」

「はい、お疲れ様でした。」





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