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sideリラ
上の空で街を歩く私。
ダリアちゃんのことが気になって仕方がない。
まさか、帰り道で誘拐されたとかないよね?
バチェラーに行く途中、そんなことばかり考えていた。
もう一度あのお店の人に聞いてみる?
けど、あの人はただ裏口から出ていいって言っただけなんだよね?
あ、そうだ…。
私も裏口から帰らせてもらう?
何か手がかりがあるかもしれない。
そうしよう!
************************
「いらっしゃいませ。」
私がバチェラーの扉を開けると中にはいつもの紳士がいる。
「あの…ペンを受け取りに来ました。」
私がそう言うと、男の人はニコリと笑う。
「お待ちしておりました。」
ダリアちゃんのことを聞こうとしているだけなのに、もうしてこんなに緊張するんだろう。
「あ…あの「つい先ほど完成いたしました。こちらで確認をお願いします。」
男の人はカウンターの中に来るように私に言った。
なんかタイミングを逃してしまった。
いいや、向こうで隙を見て聞けばいい。
私が歩いて行くと、ガチャッとお店の鍵が閉まる音がした。
なんでお店の鍵が勝手に?
私がお店のドアの方を見ていたら男の人が微笑んだ。
「大丈夫ですよ、今から大切なご説明がありますので一時的に閉店にしているんです。」
この人が魔法か何かでドアを閉めたんだ。
「………はい。」
ただのペンの説明でここまでする?
なんか怪しい…。
カウンターの中に入るとすぐ後ろにドアがある。
「こちらへどうぞ。」
案内されるまま入っていけば…
「んーっ!!ん!!!」
「え!!?」
鎖に縛られ口を布で塞がれたダリアちゃんがいた。
「ダリアちゃん!!!」
私は何も考えずにダリアちゃんに駆け寄った。
「何??これ!大丈夫!?」
私はもう混乱してしまって、とりあえずダリアちゃんの口の布を解いた。
「早く逃げて!!!」
私が布を解いた瞬間そんなことを言うから余計に戸惑った。
「きゃっ!!!」
「ちょっとあんた!!リラちゃんに触らないで!!」
ダリアちゃんに気を取られてすっかり忘れていた。
さっきの店の男が私の髪の毛を引っ張り上げた。
頭が痛くて、男の手退けようと自然と自分の手が出る。
その隙に手錠をかけられていた。
「今回は2人揃って上玉だ!貴族のお偉いさんはお前らにいくら出すだろうな?」
お店に立っていた時とは想像もつかないような笑い声が響いた。
私は自分の置かれている状況をようやく理解して震えることしかできなかった。
この誘拐と貴族のお偉いさんにお金の話。
私とダリアちゃんは売られるんだ。
それより、髪を引っ張られているから頭が痛い!
「ちょっと!!痛がってるじゃない!!やめなさいよ!!下衆!!」
「さっきからうるせぇんだよ!!これで満足か!ほら!!」
ダリアちゃんに怒鳴りつけた男は、私をダリアちゃんの方に放り投げた。
「痛っ!!!」
物凄い力でダリアちゃんの隣に投げつけられた私。
ただ怯えている私とは違って、ダリアちゃんは男を睨みつけた。
「あんた、絶対私が殺すから。」
美人が睨むと迫力がある…。
「やってみろよ、どうせお前は金持ちの変態に買われて一生鎖に繋がれたまま暮らす、俺を殺す暇があればいいな!」
男は高笑いして私たちを見下した。
「下に連れて行ってオークションの準備をしろ。そっちの変な目してる方は人間だからな、うっかり殺すなよ?」
男が誰に話しているのか不思議だったけど、誰かはすぐにわかった。
「来い!」
「さっさと立て!」
私とダリアちゃんの後ろにガラの悪い男が2人いて、今その男たちに無理矢理立たされたところだ。
いつの間に湧いてきたの??
「離してよ!!!この×××野郎!!!」
ダリアちゃん、そんなに言ったら殴られるよ?大丈夫??
「黙って歩け!!」
ダリアちゃんはひたすら抵抗しているけど、私は違った。
私は大人しく、男に引っ張られる所へ着いて行く。
ダリアちゃんの命と私の命の重みは違う。
ダリアちゃんはヴァンパイアだから殺されないだけ。
私の命の重みはダリアちゃんより軽い。
「さっさと歩け、のろま。」
冷静に詰られて私は言われた通り歩き出す。
こんな人間じゃない男に殴られたら多分死ぬ。
私は大人しく言うことを聞いておこう。
私はきっと変なんだ。
今更、本当に今更だけど、ダリアちゃんが生きていたことに安堵している。
どこか遠くへ行ってしまったんじゃないか、誰かに殺されたのかもしれない、最悪のケースをわざと考えないようにするのは難しかった。
今はただ場違いな安堵に浸り、震える足を無理矢理動かした。
感情が壊れてしまいそうだ。
絶望が私を手招いているから。
ライアス様の元へはきっと一生帰れない。
…ライアス様、ごめんなさい。
この命はあなたのものなのに。
本当に、ごめんなさい。
*************************
sideルシアス
もうこんな時間か。
「家の片付けは結構時間かかるな。」
もうやりたくない。
「片付け?片付けって、言いました?何言ってるんですか?あれ破壊ですから。」
キジャは破壊だと言い張るがそんなことをした覚えがない。
「あれは片付けだ。破壊は大破するときだろ。」
俺が炎をぶち当てた訳でも暴れたわけでもない。
「いやー、団長。あれは紛う事ない破壊ですね。」
キジャは大げさだ。
「待てー!!」
「誰が待つか!」
ガキが2人、こっちに走ってくる。
俺の腰くらいの背の高さだ。
こんな夜に鬼ごっこか?
「いでっ!!!」
前を走っていたガキは後ろばかり気にして俺らが目に入っていなかったらしい。
俺に思い切りぶつかってきた。
ガキが跳ね返らないように肩をガッチリ掴む。
「おい、ガキども。」
後ろを走っていたガキはピタリと止まり、俺にぶつかったガキは俺の顔を見て震え出した。
まだ何も言ってないだろうが、そんなにビビるなよ。
「今何時だと思ってんだ。さっさと家帰って寝ろ。ちなみに、それは金にならないからやめとけ。」
今ガキが俺のポケットから盗んだのは、森で不審死したあの男の似顔絵だ。
キジャは俺を見てため息をついた。
「盗みは相手を選べ、命を落とすことになるぞ。」
このガキどもはスリだ。
俺が支えているガキはガクガクと震えながら泣き出した。
後ろにいたガキも俺が誰か分かったらしく、膝をつく。
「いやー、団長。そこは普通、盗みをするなでしょ?そんなこと言ったらコイツら団長みたいなヤバい大人になりますよ?」
俺がヤバい?
「安心しろ、コイツはお前らの生皮を剥いで部屋に飾るが俺は違う。代わりに仕事を紹介してやる。今すった紙広げてみろ。」
ガキは手が震えて紙を広げるどころじゃない。
「ったく、貸せ。男ならもっとしっかりしろ。」
俺が紙を広げたら、ガキは俺に膝をついた。
「ルシアス様っ…!!お許しください!!お許しください!!!」
地面に額を何度も擦り付けたガキは泣きながら俺に謝った。
「別に怒ってねぇよ、それよりこれみて見ろ。そこの後ろのガキもこっち来い。お前もさっさと立て。」
2人は俺の言う通りに目の前に来て、震えながら紙を見た。
「コイツ、見たことあるか?」
今の手口、要領からしてコイツらは相当慣れてる。
土地勘もあるだろう。
普通の生活をしている奴に聞くより早い。
「は…はい…よく、バチェラーの裏口から出てくる男です…!!」
バチェラー?
「いつもバチェラーから大金を持って…でてきます。」
なるほどな。
俺とキジャは顔を見合わせた。
「そうか、じゃあその情報の代わりにこれやるから帰って寝ろ。仲良く分けろよ?」
俺は自分の財布の有り金を全部ガキの手に乗せた。
「あ、ありがとうございます!!!ルシアス様!!このご恩は一生忘れません!!」
「ありがとうございます!!」
そんなに礼を言うな。
そもそも、俺の父親である統治不足でお前らは飢えている。
「そっちの兄ちゃんにも礼を言っとけよ。」
まさか、俺だけが無一文はなしだよな?
それに、俺はヤバい大人だからな。
「はぁ……ほら、手出して。」
キジャはもう1人のガキに手を出させて、その上で財布をひっくり返した。
「ありがとうございます!!」
「気をつけて帰れよ。」
俺がそう言うと2人は喜びながら礼を言って帰って行った。
2人の姿が見えなくなって、キジャがボソッと一言俺に言う。
「…団長、大嫌いですよ。」
「初めて気が合ったな。」
とにかく情報が手に入った。
金はなくなったが、かなりついてる。
「それより、今からバチェラー踏み込みます?」
それもいいが…
「先にやることがある、カトレアに行くぞ。」
確認することがあるからな。
上の空で街を歩く私。
ダリアちゃんのことが気になって仕方がない。
まさか、帰り道で誘拐されたとかないよね?
バチェラーに行く途中、そんなことばかり考えていた。
もう一度あのお店の人に聞いてみる?
けど、あの人はただ裏口から出ていいって言っただけなんだよね?
あ、そうだ…。
私も裏口から帰らせてもらう?
何か手がかりがあるかもしれない。
そうしよう!
************************
「いらっしゃいませ。」
私がバチェラーの扉を開けると中にはいつもの紳士がいる。
「あの…ペンを受け取りに来ました。」
私がそう言うと、男の人はニコリと笑う。
「お待ちしておりました。」
ダリアちゃんのことを聞こうとしているだけなのに、もうしてこんなに緊張するんだろう。
「あ…あの「つい先ほど完成いたしました。こちらで確認をお願いします。」
男の人はカウンターの中に来るように私に言った。
なんかタイミングを逃してしまった。
いいや、向こうで隙を見て聞けばいい。
私が歩いて行くと、ガチャッとお店の鍵が閉まる音がした。
なんでお店の鍵が勝手に?
私がお店のドアの方を見ていたら男の人が微笑んだ。
「大丈夫ですよ、今から大切なご説明がありますので一時的に閉店にしているんです。」
この人が魔法か何かでドアを閉めたんだ。
「………はい。」
ただのペンの説明でここまでする?
なんか怪しい…。
カウンターの中に入るとすぐ後ろにドアがある。
「こちらへどうぞ。」
案内されるまま入っていけば…
「んーっ!!ん!!!」
「え!!?」
鎖に縛られ口を布で塞がれたダリアちゃんがいた。
「ダリアちゃん!!!」
私は何も考えずにダリアちゃんに駆け寄った。
「何??これ!大丈夫!?」
私はもう混乱してしまって、とりあえずダリアちゃんの口の布を解いた。
「早く逃げて!!!」
私が布を解いた瞬間そんなことを言うから余計に戸惑った。
「きゃっ!!!」
「ちょっとあんた!!リラちゃんに触らないで!!」
ダリアちゃんに気を取られてすっかり忘れていた。
さっきの店の男が私の髪の毛を引っ張り上げた。
頭が痛くて、男の手退けようと自然と自分の手が出る。
その隙に手錠をかけられていた。
「今回は2人揃って上玉だ!貴族のお偉いさんはお前らにいくら出すだろうな?」
お店に立っていた時とは想像もつかないような笑い声が響いた。
私は自分の置かれている状況をようやく理解して震えることしかできなかった。
この誘拐と貴族のお偉いさんにお金の話。
私とダリアちゃんは売られるんだ。
それより、髪を引っ張られているから頭が痛い!
「ちょっと!!痛がってるじゃない!!やめなさいよ!!下衆!!」
「さっきからうるせぇんだよ!!これで満足か!ほら!!」
ダリアちゃんに怒鳴りつけた男は、私をダリアちゃんの方に放り投げた。
「痛っ!!!」
物凄い力でダリアちゃんの隣に投げつけられた私。
ただ怯えている私とは違って、ダリアちゃんは男を睨みつけた。
「あんた、絶対私が殺すから。」
美人が睨むと迫力がある…。
「やってみろよ、どうせお前は金持ちの変態に買われて一生鎖に繋がれたまま暮らす、俺を殺す暇があればいいな!」
男は高笑いして私たちを見下した。
「下に連れて行ってオークションの準備をしろ。そっちの変な目してる方は人間だからな、うっかり殺すなよ?」
男が誰に話しているのか不思議だったけど、誰かはすぐにわかった。
「来い!」
「さっさと立て!」
私とダリアちゃんの後ろにガラの悪い男が2人いて、今その男たちに無理矢理立たされたところだ。
いつの間に湧いてきたの??
「離してよ!!!この×××野郎!!!」
ダリアちゃん、そんなに言ったら殴られるよ?大丈夫??
「黙って歩け!!」
ダリアちゃんはひたすら抵抗しているけど、私は違った。
私は大人しく、男に引っ張られる所へ着いて行く。
ダリアちゃんの命と私の命の重みは違う。
ダリアちゃんはヴァンパイアだから殺されないだけ。
私の命の重みはダリアちゃんより軽い。
「さっさと歩け、のろま。」
冷静に詰られて私は言われた通り歩き出す。
こんな人間じゃない男に殴られたら多分死ぬ。
私は大人しく言うことを聞いておこう。
私はきっと変なんだ。
今更、本当に今更だけど、ダリアちゃんが生きていたことに安堵している。
どこか遠くへ行ってしまったんじゃないか、誰かに殺されたのかもしれない、最悪のケースをわざと考えないようにするのは難しかった。
今はただ場違いな安堵に浸り、震える足を無理矢理動かした。
感情が壊れてしまいそうだ。
絶望が私を手招いているから。
ライアス様の元へはきっと一生帰れない。
…ライアス様、ごめんなさい。
この命はあなたのものなのに。
本当に、ごめんなさい。
*************************
sideルシアス
もうこんな時間か。
「家の片付けは結構時間かかるな。」
もうやりたくない。
「片付け?片付けって、言いました?何言ってるんですか?あれ破壊ですから。」
キジャは破壊だと言い張るがそんなことをした覚えがない。
「あれは片付けだ。破壊は大破するときだろ。」
俺が炎をぶち当てた訳でも暴れたわけでもない。
「いやー、団長。あれは紛う事ない破壊ですね。」
キジャは大げさだ。
「待てー!!」
「誰が待つか!」
ガキが2人、こっちに走ってくる。
俺の腰くらいの背の高さだ。
こんな夜に鬼ごっこか?
「いでっ!!!」
前を走っていたガキは後ろばかり気にして俺らが目に入っていなかったらしい。
俺に思い切りぶつかってきた。
ガキが跳ね返らないように肩をガッチリ掴む。
「おい、ガキども。」
後ろを走っていたガキはピタリと止まり、俺にぶつかったガキは俺の顔を見て震え出した。
まだ何も言ってないだろうが、そんなにビビるなよ。
「今何時だと思ってんだ。さっさと家帰って寝ろ。ちなみに、それは金にならないからやめとけ。」
今ガキが俺のポケットから盗んだのは、森で不審死したあの男の似顔絵だ。
キジャは俺を見てため息をついた。
「盗みは相手を選べ、命を落とすことになるぞ。」
このガキどもはスリだ。
俺が支えているガキはガクガクと震えながら泣き出した。
後ろにいたガキも俺が誰か分かったらしく、膝をつく。
「いやー、団長。そこは普通、盗みをするなでしょ?そんなこと言ったらコイツら団長みたいなヤバい大人になりますよ?」
俺がヤバい?
「安心しろ、コイツはお前らの生皮を剥いで部屋に飾るが俺は違う。代わりに仕事を紹介してやる。今すった紙広げてみろ。」
ガキは手が震えて紙を広げるどころじゃない。
「ったく、貸せ。男ならもっとしっかりしろ。」
俺が紙を広げたら、ガキは俺に膝をついた。
「ルシアス様っ…!!お許しください!!お許しください!!!」
地面に額を何度も擦り付けたガキは泣きながら俺に謝った。
「別に怒ってねぇよ、それよりこれみて見ろ。そこの後ろのガキもこっち来い。お前もさっさと立て。」
2人は俺の言う通りに目の前に来て、震えながら紙を見た。
「コイツ、見たことあるか?」
今の手口、要領からしてコイツらは相当慣れてる。
土地勘もあるだろう。
普通の生活をしている奴に聞くより早い。
「は…はい…よく、バチェラーの裏口から出てくる男です…!!」
バチェラー?
「いつもバチェラーから大金を持って…でてきます。」
なるほどな。
俺とキジャは顔を見合わせた。
「そうか、じゃあその情報の代わりにこれやるから帰って寝ろ。仲良く分けろよ?」
俺は自分の財布の有り金を全部ガキの手に乗せた。
「あ、ありがとうございます!!!ルシアス様!!このご恩は一生忘れません!!」
「ありがとうございます!!」
そんなに礼を言うな。
そもそも、俺の父親である統治不足でお前らは飢えている。
「そっちの兄ちゃんにも礼を言っとけよ。」
まさか、俺だけが無一文はなしだよな?
それに、俺はヤバい大人だからな。
「はぁ……ほら、手出して。」
キジャはもう1人のガキに手を出させて、その上で財布をひっくり返した。
「ありがとうございます!!」
「気をつけて帰れよ。」
俺がそう言うと2人は喜びながら礼を言って帰って行った。
2人の姿が見えなくなって、キジャがボソッと一言俺に言う。
「…団長、大嫌いですよ。」
「初めて気が合ったな。」
とにかく情報が手に入った。
金はなくなったが、かなりついてる。
「それより、今からバチェラー踏み込みます?」
それもいいが…
「先にやることがある、カトレアに行くぞ。」
確認することがあるからな。
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