生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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クロウ先生

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sideリラ


「お目覚めか。」


暗闇の中からクロウ先生の声がした。


「はい。クロウ先生。」


どうやって入ったんだろう。


ここはルシアス様の寝室。


簡単に入れる場所ではないのに。


「お久しぶりです。」


クロウ先生はどうやってここへ来たんだろう。


「あぁ、久しぶり。昨日は森で酷い扱いをして悪かったな。」


クロウ先生はベッドの真隣に来て私の頭を撫でる。


昨日森で会った先生とはまるで別者だ。


「いいんです。むしろそうしてもらってよかった……それより、ルシアス様は?」


クロウ先生が私の真後ろを指さす。


ルシアス様は私の隣で寝ていた。


「眠りの魔法をかけてある。かなり手こずったが、俺が指を鳴らすまでそこのお坊ちゃんは赤子同然だ。」


ルシアス様にそんな事をするなんて。


「クロウ先生は肝が据わってますね。昔よりパワーアップしてませんか?」


私が聞くとクロウ先生は笑った。


「昔から何も変わらない。それよりリラ、答えを聞きに来た。


クロウ先生はきっと私の答えを分かっていて聞いている。


自分で答えて決心を決めろってことね。


「もちろん…禁断の果実を完全にこの世から消すつもりです。手段は問いません。」


魔法でも、呪いでも…………死でも。


「そうか。なら、死んでもらうしかないな。」


やっぱりそうか。


それ以外の方法はないみたい。


「はい、お願いします。」


記憶がない時は死んだり怪我したりするのが本当に怖かった。


もちろん今だって怖い。

けど、必ず成し遂げないといけない事だから変に冷静だった。


私の記憶が正しければ、禁断の果実の力を持つのはもう私だけ。


私は子供を産んでないからこの血を受け継ぐ者もいない。


事が簡単でよかった。


「3日やる。身辺整理やら最後の別れをしておくように。…特に隣で寝てるお坊ちゃんにはな。」


私はルシアス様の大きな手を握った。


「はい。……3日後、よろしくお願いします。」


私がそう言うと、クロウ先生は頷いて夜の闇に溶ける。


パチン!と指が鳴ったら…


「……ん?」


ルシアス様の目が覚めた。


「お前…何やってんだ?」


ルシアス様は繋がれた手を見て不思議そうにしている。


「大きな手だと思って…もう少しこうしていていいですか?」


こうしていたら、死ぬのが怖くないんです。


ルシアス様の体温が私を落ち着かせてくれるから。


「この手が大好きなんです。」


私をすごく乱すけど、優しく撫でてくれるのも励ましてくれるのもこの手だから。


「手か?他にもあるだろ。」


そうだよ。


本当はあなたの事が大好き。


きっと、死ぬ瞬間まで愛してる。


後3日か……


短いなぁ。


「ルシアス。」


この名前を呼べなくなる。


もちろん、この手も握れなくなる。


なんて寂しくて悲しい事だろう。


「なんだ?」


嬉しそうに笑うその顔も見れなくなってしまう。


「ルシアス…」


私の1番好きな名前だ。

「だからなんだ?」



「ルシアス様。」

呼び方を変えるとルシアス様はムッとする。


その仏頂面ですら愛おしいのだから私は病気だ。


「ったく、寝ろ。」


ルシアス様はかなりご機嫌斜めで、私を腕の中に引き寄せてベッドに横になった。


腕枕してくれてる…。

いつもだけど。


「おやすみなさい。ルシアス様。」

「へいへい、おやすみ。」



あぁ、明日なんか来なければいいのに。


ずっとずっと、この腕の中にいられたらいいのに。


涙を必死に堪えて私は苦しい眠りに堕ちていった。


*******************

sideルシアス


「おはようございます…。」


リラが2階から降りてきた。


「おはよう。座ってろ、もう少しでできる。」


俺は今、朝食を作ってる。


いつもなら素直に返事をしてテーブルに向かうリラだったが…


「…………。」


今日は少し違う、いや、かなり違う。


「どうした?まだ具合悪いのか?」


昨日の発狂する程の頭痛といい、といい。

本当に頭のネジでも飛んだのか?

いつもならこんな事死んでもしないだろ。


俺に後ろから抱きついてくるなんて。


「ルシアス様………いつも、朝ごはん作ってくれてありがとうございます。」


「はーーーーーーーー。」←壮大なため息


もう無理だ。


朝飯なんざ作っている場合じゃねぇ。


「腹減ってるか?」


「あんまりです。」


そうか、今すぐ何か腹に入れたいわけじゃないんだな。


「じゃあ後でいいな。」


「???」


起きてきたところ悪いがまたベッドに逆戻りだ。











「あっ/////あっ…ルシアス様ぁ…///」


朝っぱらから俺らは何してんだろうな。


「っ…は…っ…やめろ…その呼び方。」


でもいいか、こんなに気持ちいいなら。


それに、明るい時にするのも悪くない。


より鮮明にリラの全てが見れる。


「やっ/////ダメ…/////んあっ/////」


完全に俺の形を覚えてるな。


「本当に可愛いな…っ…リラは。」



俺の言葉に誘発されるように、リラの体が絶頂を迎える。


「あっ…あぁあっ!!!」


俺の背には爪が食い込み、聞いたこともないような悲鳴に近い喘ぎ声を上げた。


ビクビクと締め上げて、本当に煽るのが上手い。



煽られた以上は応えてやらないとな。



期待しとけよ、何が何だか分からなくなるくらいにまでは愛してやるから。
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