生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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対価

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sideライアス


僕らの元を離れて少し人を疑うようになったね。


賢くなってくれて僕は嬉しいよ。  


「ほら、とりあえず中に入って。」   

  
リラが戸惑っているように僕を見上げる。


「っ///////」


可愛いからそのまま抱き上げて家の中へ入った。


「どうしたの?の家に入るのは怖い?」


僕が記憶を取り戻していることを悟られたくない。


その方が僕たちは動きやすいからね。


少し寂しいけど。

  
「怖くはない、です。」


床に下ろしてあげたらリラはソワソワしていた。


「やっぱり、行くのやめようかな。」


「え!!?」


リラは可愛い声を上げる。


「僕はリラを助けたし、ルシアスだって間抜けじゃないんだからきっと今頃終わってるよ。」


僕らは連絡を取り合っていたから今回のことを知っている。  


今向こうがどんな状況かも僕は把握している、それでも僕は自分の欲しいものを手放したくない。


目の前のこの子を諦めたくはない。


「そ、そんなのダメ!!ライアス様!助けてください!!私の友達もいるんです!!」


リラが僕に縋ることなんて滅多にないことだった。


「ご褒美をくれるなら行こうかな。ねぇ、リラは僕に何をくれる?」


僕の欲しいものが分かるかな?


鈍感だからきっとわからないだろうね。


「な…何でも!何でもします!」


その言葉を言ったら最後だよ。


「何でも…?なら、僕と結婚してよ。」


僕はルシアスとは違って手段は選ばないし平気で卑怯な事をするよ。


それを悪いとも思わない。


欲しい、欲しいと言っているだけで行動に移さない方がどうかしていると思うからね。


「え…??結婚??」


思ってもみなかった、そんな顔をしているね。


「いきなり結婚が嫌なら恋人か間男でもいいよ。この間リラに間男の才能があるって言われたから、僕個人としてはその期待に応えたいけどね。」


何だっていいよ、きっかけさえあれば。


リラの心に食い込む一瞬の隙が欲しい。


その隙を使って僕はリラを必ず手に入れる。


「わ、分かりました!!もう間男でも何でもいいですからみんな助けに行ってください!」


ただの口約束にはさせないからね、リラ。



「わかった。ここで待ってて。」



*******************

sideリラ

ライアスは待っててと言って、一瞬で私の目の前から消えてしまった。


それより、ライアスは本当にどうしたんだろう。


前まであんな事言う人じゃなかったのに。


一部記憶喪失になると人が変わるのかな?



そんなことより、今はライアスの約束を破らせてもらおう。



ルディの側に行ってあげないと。


動けないほどの大怪我をしているんだから。














「ルディ!!」


私が走ってルディの元へ行った時は、ルディは既に起き上がっていた。


「リラ…」


体中から血が出てる。



「大丈夫!?」



ルディの目の前に滑り込んで私は必死に聞いた。



「うん!大丈夫!やっぱりヴァンパイア強いな!」



そんなにも笑って、痛い思いをたくさんしてるはずなのに。


「ルディもすごく強いよ。」


あんな怖くて気持ち悪い敵から絶対に逃げなかったんだから。


「そうか?俺結構ポンコツだったよ?」


「ポンコツじゃない!!!」



ルディは何があっても仲間を見捨てない。


どんな窮地に追いやられても、



「ルディは本当に強くて格好いい、私の自慢の友達よ。」


ルディはキョトンとして、また太陽のような笑顔を見せる。


「友達か…ヘヘッ…悪くないね!」



少し照れているようにも見えた。


「悪いどころか最高だよ!」


ルディが動けるようになったら一緒にどうするか考えよう。


怪我が回復するまでは絶対安静にしないとね。


*******************

sideダリア


「っ…はぁ……ゲホッ…はぁ…はぁ…」 

 
ヤバい、全員スピード、体力ともに落ちてきた。


「ダリア、立てるか。」


クロウさんも珍しく余裕がない。


いつもの薄ら笑いが消えてる。


「……っはい!」


私たちがバテて囮を徹底しないと、ルシアス様達の攻撃がまともに入らなくなる。



もう少しで、倒せそうなのに!!



それだけ敵も追い詰められている。


敵も殺されまいと反撃をしてきた。


大きな手が振り上げられて思い切り私たちの方にその手が降りてくる。


この体じゃもう避けられない!!


「おい、お前ら!」



キーン!!


金属にヒビが入る音がした。


「……ルシアス様!」



今の一瞬で、怪物と私たちの目の前に滑り込んで攻撃を防いでくれた。


「離れてろ、後は引き受ける。」



「でも…」


私がルシアス様に言おうとした言葉は、ラルフによってかき消される。


ラルフは一瞬で私とクロウ先生を運び去った。


「ラルフ!戻って!!」


いくらルシアス様が強くても、キジャさんと2人であの化け物の相手は無謀すぎる。


「ダリア、そんなに心配しなくても大丈夫だ。俺たちよりも適任が現れたからな。」


私たちよりも適任?


「……この、気配は。」


少し先から感じる、神々しい気配。


この気配には覚えがあった。


「リラとルディが正しい判断をした。後は任せよう、もう1人のお坊ちゃんに。」
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