生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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sideライアス



「私が味わった痛み、苦しみ、悲しみ……全てを味合わせてやる。必ずお前が愛した女の墓を暴き私の人形にしてやる!!!そして最後は四肢をバラバラに引き裂き魔物の群れに…って言ってたな。」


リラが帰ってしまったのも、地下室のドアが大破されていることもいいとして…


「それは本当?」


僕はルシアスの言葉を疑った。


「あぁ、この目で見てこの耳で聞いた。」

「俺もです。」


ルシアスとキジャ曰く、この大きな怪物はタランテラ・ガルシアに憑依されて喋った上にそもそも死体だったと。


「でもそれは、本当に例の魔女なの?」


向こうは姿を隠しているから名乗るわけはないと思うけど。

「俺を見て穢れた一族とも言ってたな。タランテラ・ガルシアで間違いない。」



確かに、僕たちにそんな口の聞き方をするのは恨みを持った者のする事。


王族ぼくたちとあの魔女は古くからの因縁があるからね。


「とうとう近くまで来たね。」


そしてその魔女が言っていたことを紐解くと結局の所、リラが必要だと言う事。


禁断の果実の使い方を僕は一つしか知らない。


でも、魔女の意味深な言葉を聞く限りリラをとんでもないことに使うと言う事。


殺すだけでは飽き足らず、人形にする?


訳がわからないけど、ありえない話ではない。


「あの……」


ルルドは未だに僕らの話について来れてない。


記憶が無いのだから当たり前だよね。


いつも完璧なルルドがこうも困っていると可愛くも見えてくる。


「ルルド、後で全て話すから今は聞いててくれるかな?」


ルルドはいつになく、申し訳なさそうな顔をする。


「申し訳ございません、ライアス様。」


謝らなくてもいいのに。

「うん、気にしなくていいよ。」

キジャは僕らの話を理解しているから、ルシアスからいろいろ聞いたんだね。



「とにかく早く切り刻むぞ。この死体はあの魔女が憑依したものだ。絶対に痕跡はある。」


憑依はどんなに魔力の高い魔女や魔法使いがやっても必ず跡が残る。


ルシアスと僕は今からそれを探さないといけない。


問題はその跡が体の中か外にあるかどうか。


体の内側に印を隠すのはかなりの魔力と技術がいる。


けど、相手がタランテラ・ガルシアならそんなことは朝飯前の話。


もう体の中を覗くのは決定事項かな。



「そうだね……体が大きいから上半身と下半身に切って探そうか。てことで、下半身は頼むね。」


僕が上半身を取ろうと死体の腕を掴んだらルシアスがもう片方の死体の腕を取った。


「冗談はその性格だけにしてくれないか?」


僕は冗談なんて微塵も言っていないし、下半身なんてそれこそ冗談じゃない。


「そっくりそのまま返すよ。」


僕たちは普通の会話ができない。


互いに主張が強すぎるんだろうね。


分かっていて、自分の意見を曲げない僕も僕だけど。



「こっちが俺だ。」


「僕は欲しい物は譲らない主義なんだ。」



物でも、人でもね。



*******************

sideキジャ


ダメだ、この2人。


1日に何回喧嘩したら気が済むんだ?



「お話中すみません。」



俺は埒があかないこの状況を変えたくて2人に声をかけた。


「俺とルルドが下半身やるんで、お二人で上半身をやったらどうですか?」


正直俺はなんでもいい。


早く始めないと死体が腐ってしまう。


腐った肉に埋もれた印を探すよりマシだ。


「だったらお前とこの化け物の下半身やった方がマシだ。」


団長はそう言ってパッと化け物の腕を離した。


「ほら、持っとくから切ってくれ。」


ルシアス様とライアス様は上半身と下半身を持ち上げた。

それを引っ張って真っ直ぐにする。


「腰骨の少し上を切ったら1発でいけるよ。」

「勢いでやれ。皮膚が硬いから斧とかの方がいいかもな。」



これが本当に王族の言うことだろか。


そもそもこれは王族にさせていいことなのか?


この2人は本当に王族とはかけ離れた行動をする。


「えっと……ルルド、斧貸してくれる?」


俺が戸惑いながらルルドに聞くと、ルルドも少し狼狽えているようにも見えた。


「あ…あぁ、持ってくる。」


ルルドは一瞬で斧を持ってきてくれた。


「あ、あぁ、ありがとう。」


いいのか?切っても。


お二方バッチリスタンバイしてるもんね。



あんまりとろい事してると団長怒りそうだしな。



うん……もう切るか。


「えっと…じゃあ、いきまーす。」


なんてグダグダなんだ。



とにかく切断だけは失敗しないようにしないとね。



俺は思い切り斧を振り上げて、渾身の力で斧を振り切った。


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