生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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手繋ぎ

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sideライアス


朝が来てすぐに身支度をした。


綺麗な川で顔を洗って、気持ちいい朝だったけど……… 


「何あれ。」


ルシアスの様子がおかしい。


いつもおかしいけどね。


「あぁ、あれか。聞きたいか?聞けばお前もあんな風になるぞ。」



間違ってもあんな病的で猟奇的な目にはならないと思うけどね。


「一応聞いておこうか。」


僕が答えるとクロウはため息をついた。


「頼むからルディを生かしておいてやれよ。」


ルディ?

「どうしてルディ?」


彼、また何かしたの?


やらかしてるのはいつものことのように思えるけど。


「リラと寝たんだよ。」












「は?」



リラと寝た?


あの狼の子供と?


僕よりも先に?



「おい、王子様の顔じゃなくなってるぞ。」


いいよ、こんな訳の分からない島まで来て王子様面なんて。


「リラと寝たって本当?どっちが誘ったの?」


まさかリラが彼を誘惑したの?


この僕を差し置いて?


「誘ったと言うより流れでそうなった感じだな。リラは近くの音に怖がってまともに眠れていなかったから、それを見かねたルディが押し倒してそのまま」

「押し倒してそのまま?」


クロウの言葉に耳を疑った。

そんな軽い流れで事に及んだの?


僕のリラはそんなに貞操観念が緩いはずないんだけど...。


「そりゃ押し倒さないと寝れないだろ。リラだって嫌がっていたわけじゃない。ただの子供のお遊びだ、何をそんなにも深刻そうな顔をしているんだ。」


子供のお遊び???

クロウの神経はどうなってるの?


それよりも気になるのは...


「嫌がってなかった……だって?」


「あぁ、まぁその後は二人とも我に返って真っ赤になってたけどな。」


ダメだ...


眩暈がしてきた。


ちょっと…いや、かなり、ルシアスに同情するよ。



********************  

sideリラ


眠れない夜は過ぎ、眩しい朝がやってくる。


私とルディは結局朝までいろいろ話をしていた。



そしてその後、近くの川で顔を洗ったり、着替えたりいろいろして大体の準備が終わっていた。



「ハックション!!!」


ルディがいきなり大きめのくしゃみをする。


やっぱり寒かったんだ!


風邪ひいたの!?


「ルディ、大丈夫?」

私のせいだ…



「ちょっと!!くしゃみしないでくれる!?」


「仕方ないだろう!生理現象だよ!」


「だから何よ!」


「お前言ってることヤバいからな!!」



ダリアちゃんと言い合いしているところを見ると元気そうだけど……。


「おはよう。アイツらまたやってんのか?」


「あ、ラルフ。おはよう。」



ラルフ、2人を止めないのかな?


「元気が有り余ってて羨ましい限りだ。」


それは分かるかも。



「ラルフも寝不足?」



やっぱり昨日の音気になったよね。



「あぁ、必死に己の下半身と戦ってた。」


んんん?



「か…はん…しん??」


今そう言ったよね。



「あぁ、ダリアとあんなに接近してたんだ。キツかった。」



なんかあれだな……


昨日の今日で私がラルフの相談役みたいになっちゃったなぁ…



いいのかな、これで。


「それはそれは、お疲れ様でした。」



私よりも苦労したに違いない。



「それよりいいのか?昨日のアレは。」


昨日のアレ?


「私何かした??」


全然ピンとこないけど。


「ルディと一緒に寝ただろ?ルシアスは怒らないのか?」



あぁ、そのことね。


「怒らないと思うよ?寒かったから一緒に転がってただけだし。」


そもそも、一睡もできなかったしね。


「俺がルシアスの立場ならルディを生きては返さないけど。」



生きて返さない??


「そんな大袈裟な。」


ラルフが冗談を言うなんて珍しいと思っていたけど、ラルフの表情は本気そのもの。



「そうか?俺なら殺すけどな。」


ついには殺す!?


「……もしそうなったら、ルディを守ってあげて…。」


私にルシアスを止める力はないよ。



「無理なことは引き受けないようにしている。ルディには死んでもらう事にしよう。」



ラルフ最近ますますダリアちゃんに似てきた気がする。


気のせいかな。













「じゃあ何かあったらすぐ背中合わせになる事。このおかしなブレスレットを付けてるから、突っ走ったり、突然離れたりしないこと。いいな?」


ラルフはリーダーと言うより先生って感じがする。



ルディとダリアちゃんの喧嘩も終わり、狩りの為に私たちは移動する事になった。


「でもさ、いきなり変な動物が現れたら誰でもびっくりするし体が反応して逃げちゃうだろ。それはちょっと難しくない?」


今はおふざけルディじゃない。


ちゃんとしている…珍しく。


「だからさ………ペアで手繋いで歩こう!」



ルディは少し照れたように提案した。



そして、ルディは2人に気づかれないように隣にいた私の腕を肘でつつく。



なるほど!


ルディも気をつかえたんだね!


見直したよ!



「それいいね!手を繋いでいたら怖くないし、バラバラになって飛ばされることもない!」



この勢いに乗って2人が付き合えば万事解決だよね。



「さすがリラ!!俺ら以心伝心じゃん!」


「だって友達だもーん。」



そう言うとルディが私に手を差し出す。


私はそれを取り、少し恥ずかしい思いを隠してルディと笑いあった。



さてさて、目の前の2人はどうするのかな?



私とルディはニヤニヤしながら、ダリアちゃんとラルフを見ていた。
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