生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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sideリラ


「ちょっと…そんなに強く掴まなくてもどこにも行かないって。」  

「ん?強く掴んでない。」


先頭を歩く2人を見て私とルディのニヤニヤが止まらない。



「いい感じだな。」
「だね。」



ルディが小声で言ってきたから私もそれを小声で返す。 



ガサガサガサッ!!!



この音、さっきからずっとしているんだよね。


気のせいかもしれないけど、視線も感じる。


「ねぇ、ルディ。」


「うん、尾けられてるね。」


尾けてくるなんてどんな賢い動物なんだろう。


「匂いとかで分からない?」


どんな動物なのか。


「なんかよく分かんないんだよね。匂いが薄い。」


匂いが薄い動物なんているの?


「でも、それより怖いのは俺らをつける知能があるってとこだよ。普通の動物ならとっくに襲ってきてる。」



言われてみればそうだ。


私たちが最初に出会った熊だって襲ってきたのに。


「私たちがバラバラになるのを狙ってるとか?」


私がその動物なら、バラバラになるのを待つ気がする。


「多分そうだよ、相当賢い。」


これはダリアちゃんとラルフにも相談するべきだね。



「ねぇ、ダリアちゃん、ラルフ。」


私が2人に声をかけると、2人は振り返った。



「さっきから俺らをつけ回している奴のことか?」


さすが、ラルフは話が早い。


「そう、どうする?」


ラルフは少し考えていた。



「戦うべきではないと思ってる、きっと俺らを四六時中監視していたんだろう。昨日の変な音の正体も今俺たちをつけているそいつだ。」



昨日の夜から…


「私たちは昨日無防備だったのに、どうして襲って来なかったんだろう。」



昨日の夜が最大のチャンスだったはず。



「ラルフとルディが狼の姿になってたからとか?」



ダリアちゃんがかなり正解に近そうな答えを出した。



「じゃあ敵は肉食獣で間違いないな、人間の姿をしていた俺らを食おうと尾けてきたけど、途中で俺らが狼になったから警戒してるってことか。」



ルディもダリアちゃんの意見を聞いて仮説を立てる。



「そして今も警戒していて襲って来ない。群れでは動いてない、おそらく1匹だ。」


ラルフが導き出した答えは、1匹の肉食獣だと言う事。



熊やワニとはわけが違う。



獲物を観察したり、尾けたりするところを見ると狩の達人ね。


狩の達人だとしたらなんだろう。


「狼かな?」


狩が上手だろうから。


「狼は基本群れで動くから多分違う。それに、もしも狼なら俺らが分かる。」

「あぁ、ルディの言う通りだ。」


ラルフもルディも狼のことはかなり詳しい。


それもそのはず。

自分たちが狼なんだから。


「じゃあライオンとか、ヒョウとか?」


ダリアちゃんはもっと恐ろしい動物をあげた。


「ライオンも群れで動く。ヒョウは知らん。と言うより、そっち系の動物はいないだろ。島だから。」

ラルフの一言で一気に安心した。



ライオンとかだったらどうしようかと思ったよ。



「じゃあ…何が私たちを狙ってるんだろう。」


私の疑問にみんなが黙り込んでしまった。


「いっそ、確かめちゃう?」


そんな時にルディはとんでもない提案をした。


「怪我したいのか?」


ラルフは少し驚いてる。


「したくないよ。でも、敵が何かも確認せずに逃げ回るのも危険じゃね?敵が現時点で襲ってこないって事は、後で必ず俺らを仕留める何かがあるわけだからさ。」


奥の手は取ってある、ルディはそう言いたいんだ。



「それも一理あるわね……ルディとラルフが狼だったとは言え、完全に無防備だった私達を襲わなかったのは腑に落ちない。」



珍しく、ダリアちゃんとルディの意見が合致した。



「…………よし、決めた。」


ラルフは少し考え込んで何かを決めた。


「決めたって何?」


そんなラルフに疑問を投げかけたダリアちゃん。



ラルフはなんて答えるんだろう。


「全員で見に行こう。信号銃の安全装置を外してからな。」



ラルフが決断したのはみんなで動く事だった。



「それいいな!!全員で行けば怖くないし、何かあっても誰かしら信号銃撃てるだろ!」



ルディがにっこり笑って信号銃を取り出した。



「でも撃つ奴は決めておかないとな。いざって時に全員パニクって全員が撃つなんて無駄打ちしたくない。」


ラルフも銃を片手に取る。


「じゃあ私撃ちたい!」


ダリアちゃんも銃を取り出して撃つ気満々だ。


「じゃあ一番手はダリアだ。ダリアが撃てない状況ならリラが撃つ。」



え?


ダリアちゃんの補欠!?


私も慌てて銃を取った。


「は、はい!!」


ルシアスが使い方を教えてくれたのを思い出す。


【少しでも危ないと感じたら撃て。ヤバいのが現れたら戦わなくていい、逃げ回れ。】



ルシアスの言葉が脳裏をよぎる。


頭を撫でてくれた大きな手も思い出した。


すごく心配していたのを覚えている。


いい加減、心配ばかりかけていたらいけないね。


ちゃんと強くなって帰らないと。


ガサガサガサッ!!!


「あそこの林にいるな…。」


ラルフが少し離れた林を指す。


「どうする?俺とラルフで囲むか?」


「いや、全員で囲む。獲物がどこを向いているか分からない。全員、1メートル間隔の円で囲めば大丈夫だろう。」



この2人怖くないの??


同い年の男には思えない。


肝が据わってる。



「オッケー。じゃ、何かあったらぶっ放すわ。」



ダリアちゃんもやる気満々。


私ばかり怖気付いてどうする。


頑張りなさい!!!
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