生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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最悪の告白

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sideリラ


ルシアスの部屋に入った瞬間床に降ろされた。


「それで?今度は何やらかしたんだ?怒らないから言ってみろ。」


嫌だ、絶対に嫌だ。


言えば殺される。ルシアスに、私の一番愛している人に殺される。



「……」




 嫌だ、殺されたくない、死にたくない。



「お、おい、何泣いてるんだ?どうした?」


いきなり泣き出した私を見てルシアスが焦り始めた。


「ルシアス……」


きっとこのことはいつがバレる。


近いうちに私はさっきのメイドのような化け物になる。


それか心臓が破裂して死んでしまう。


もしかしたら、この意識を保てるのは後3秒かもしれない。


1分後には心臓が破裂しているかもしれない。


「答えてください…。」

「あぁ、なんでも答える。どうしたんだ?」



嫌だ…どうしよう、私はどうしたらいいの?



「黒い血が一滴でも血に混じっていたら殺すんですか?」


「あぁ、殺す。」


ルシアスの目に迷いはない。


本当に殺すんだ。


このまま黙っていれば、私の体が限界を迎えない限り生きていられる。


少なくとも危害を加えられることはない。


だけど、この事を隠していてそれについて責められたり、嫌われたりしたら私は耐えられない。



ルシアスに憎まれるくらいなら死んだほうがマシだ。



どうせ死ぬなら…いっそ…



「殺して…」



こんな事を言う日が来るとは思わなかった。


「…何言ってるんだ。」


私は死ぬのだと、そう思えば思うほど足は震え涙が止まらない。



言いようもない恐怖が私の全てを犯している。


「私を殺して…殺してください…」


どうかルシアスの手で。


私がこの世で1番愛した人の手で。



*********************

sideルシアス

何を言われているのか正直わからなかった。



「………なんだよ、それ。」



殺してって…


「訳の分からん事を言うな、いきなりどうしたんだ?」


嫌な考えが脳裏をよぎった。



まさか、そんなはずはないと心では否定し続け、頭の中ではある仮説が浮かび上がる。


この動揺の仕方、言動からしてリラの中にもきっと…



いや、違う。



そんな訳ないだろ。



だけど……俺の仮説が当たっていたら?


「黙っててごめんなさいっ…!!私の中にあの女の血が入ってる…!!お願い、ルシアス…嫌いにならないで…
いっそ殺してください!!」



リラは泣き崩れて、俺の足元に這いつくばる。



嫌な汗が流れた。



理解ができない。



リラの中にあの女の血?



嘘だろ、なぁ…


「嘘、なんだよな?」




そんな事…



「リラ…、リラ!趣味の悪い悪戯ならやめろ、怒らないし許してやるから、そんな嘘つくな!」



リラの細い肩を掴み顔を上げさせた。


リラはぐちゃぐちゃになる程泣いている。



こんなに泣いているところは見たことがない。



「本当……なのか?」


俺の消え入りそうな質問に、リラが力無く頷いた。


「……そんな…嘘だろ……どうしてもっと早く言わなかった!!」



「ごめんなさいっ…殺されたくなかったんです…っ!!」


「俺がお前を殺すわけないだろ!!いい加減理解しろよ!お前が何よりも1番大事だ!」




つい数時間前のことが頭をよぎる。


頭のおかしくなったメイドと心臓が破裂したメイドだ。


心臓が破裂した瞬間を俺は忘れられそうにない。



うちに籠った臓器がパチンと弾ける音。


その後に、夥しい程の血を吐き窒息して絶命する。


死顔は苦痛に歪み目も当てられなかった。



リラがまさか…そんな風になるのか?


死ぬのか?



また俺の前から消えるのか?




「……嫌だ……また、お前に死なれるなんて、耐えられない。」



気が付けばリラを担ぎ上げ廊下を走っていた。



どんな手を使っても何としてでもリラをこの世に繋ぎ止めたい。



死なせてたまるか。



**********************

sideリラ


ルシアスに全て打ち明けた。


軽蔑されると思っていたけど反応は全然違う。


ルシアスは、軽蔑するどころか恐ろしく怯えていた。


ルシアスのこんな顔を見たことがない。


何かに恐れを成すなんて本来ならありえないのに。


「クロウ!!!」


ルシアスはノックもせずにクロウ先生の部屋に乗り込んだ。



「っ!!お前な、ドアが粉砕、ん?どうしたんだ?血相変えて。」



クロウ先生もルシアスの様子を見てこの状況を察したら。



「このままじゃ…リラが死ぬ。」

「詳しく、順を追って話せ。」



ルシアスがクロウ先生のところへ駆け込んだことによって、私のこの状態は一瞬で仲間たちへ知れ渡った。
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